キャラが勝手に動き出してからは、描いていても面白い

──確かに、最初期は「感受性豊かな女子高生みかこのちょっとした日常」みたいな感じでしたもんね。エピソードマンガというか。

こんなに恋愛メインの話になるとは思いませんでした。やっぱりキャラクターが勝手に動き出してからは描いていても面白いです。

──それはいつ頃から手応えが。

カトーくんが出てきてからですね。カトーくんは31話かな、みかこと並んで歩いているのを緑川が遠くから見かける、というだけの、名前もないキャラクターだったんですけど。編集さんと話していて「読者はみんな緑川とみかこが付き合うと思ってるから、そこ外そう」って方針に決めたとき、「あの男子がみかこと付き合えばいいんじゃないか」と。

──いまや完全に、ナオちゃんを入れた4人の話ですからね。

今までは1冊単位での連載が多かったので、立ち上げるときに最初と最後を決めて、キャラクターのイメージも作ってから始めるんですが、「みかこさん」の場合は長く続けていられるので、思いがけず、どんどん変わっていく余地があったと思います。

──そこが週刊連載という形式の面白いところですよね。

そうですね。最近は脇役も目立ってきました。予備校の先生や、ナオちゃんの義理のお母さんなどを出せるようになってきたので、それも描いていて面白いです。

──先生、良かったです（笑）。このオチかーっていう。コマ割りとかは変わりましたか？

変わったというか、描きながら学んでいるという感じですね。重力の働きとか。

──重力？

ウェブだと下にスクロールしていくので、重力が下に下に働いているんです。すると上の方に密度の高いコマを置いて、下の方を軽くしたりする遊びもできるんですけど、週刊誌だとめくっていくので、ウェブと違って横に行く力があるので、それで構図やコマ割りを変えたりしていますね。

──面白い考え方ですね。重力。

あと「みかこさん」は毎回4ページなので、見開きを使えばズドンと来るものもできますし、そういう、重さ軽さみたいのは常に気にしています。

まずは普通のマンガを描けるようになりましょう

──ご自分の中でメソッドを再発見している感じですね。言語化して。

一度言語化できるとずっと使えるので。普通のマンガ家さんはそんなの、言語化しなくても実践されてると思うんですが……。

──いやいや今日さん、いまや押しも押されぬ立派なマンガ家さんじゃないですか。

うーん、私はマンガを描き始めたのがいわゆる大人になってけっこう経ってから、という劣等感のようなものがあるので。少しずつでも頑張って、描きながら学んでいます、という意識のほうが強いです。モーニングに持ち込みしたときのトラウマみたいなものもありますし。

──トラウマ、伺いましょうか（笑）。

いちばん最初に持ち込みしたとき、まあ私は私なりに「俳句的な世界観をマンガで表現したい」みたいなことをゴニョゴニョ言ったんですが、編集さんに一切相手にされず。「ハイ、それはそれとして、まずは普通のマンガを描けるようになりましょう」みたいな話をされたのが結構ショックで（笑）。

──それは、佐渡島（庸平・モーニングのメイン担当編集）さん？

そうです（笑）。それでマンガの模写をしてきてくださいと言われたので、次の週に楳図かずお先生のマンガを模写して持っていったら、「こういうんじゃなくて。もっと普通のマンガを」と言われました（笑）。墓石から蝶が飛び出てくるシーンを一生懸命模写していったんですけど、私にしてみれば楳図先生のマンガはスタンダードかつ名作だと思っていたので、それもショックで。

──ははは。それはいつ頃ですか。

2004年とか……だったと思います。

──あれ、ずいぶん昔じゃないですか。そんな初期からモーニングとの縁があったんですね。ではいったん休憩して、後半そのあたりを伺えたらと。