コミックナタリー PowerPush - 山本崇一朗「ふだつきのキョーコちゃん」

ゲッサンのルーキーが描く ひたすら可愛いツンデレ妹

こういう青春時代に憧れがあるんです

「からかい上手」の高木さんのカット。

──山本先生の最初の読み切り「からかい上手の高木さん」も、大人っぽい女子に翻弄され続ける男子を描いた作品でした。通じて見ると、未熟な男女のモヤモヤみたいなものをずっと描いてらっしゃいます。モデルや、元になった体験はあるんですか?

ないですね。

──(笑)。こんな学校生活ではなかった?

はい……僕自身が、そういう青春時代を送っていないから憧れがあって。こんなんだったらよかったなあ、という気持ちで描いています。

──男子校に通われてたとかですか?

山本崇一朗

共学ではあったんですが……そういう、男女間の出来事みたいなものが全然なくて。

──どういう青春時代を過ごされてたんでしょう。

中学生の頃から、ひたすら麻雀ばっかりしてました(笑)。他にやることがなかったんですよ。

──ある意味早熟な中学生ですね。マンガはいつごろから描き始められたんですか?

落書きマンガみたいなものは小学校くらいから描いていたんですけど……意味のわからない「ドラゴンボール」もどきみたいなやつで。ちゃんと1本仕上げたのは、大学に入ってからですね。

──最初からゲッサンの編集部に持ち込まれたんですか?

いや、かなり紆余曲折を経ました。大学3年のときに、初めて描いたマンガを他社の雑誌に持って行って。そこから3、4年くらい、ラーメン屋でバイトしながらダラダラやってたんです。担当さんからはひたすら、早く辞めてアシスタントをしろと言われ続けました(笑)。

「ふだつきのキョーコちゃん」より。

──どういった雑誌で活動してらしたんですか?

しばらく青年誌でやっていたんですが、肌に合わない部分もあって少し疲れてしまって。

──それで少年誌に。

はい。でもいわゆる週刊の少年誌はキラキラしすぎているように思えたんですよ。その中でゲッサンが1番雰囲気が合いそうだと思い、描いてみたくなって。

──その頃から、中学生男女の日常ものを?

そうですね。担当さんから、連載を目指すためにいくつかネタを考えるように言われたので、日常ものを中心にアイデアを3個ほど作りました。そのうちの2つが、「高木さん」と「キョーコちゃん」なんです。

「ふだつきのキョーコちゃん」のカット。

──へええ。あと1つが気になりますね。

それはお蔵入りになりました……。機会があれば、いつか描いてみたいとも思うんですけどね。そのほかには、一度日常もの以外を描いてほしいと言われて。バトルものに一瞬走ったりもしました。

──バトルもの。山本先生の今の作風からはあまり想像できません。

やっぱり合わなかったのか、ジャンプですぐに打ち切られそうなのしか描けなかったです(笑)。それから日常ものに回帰して、一度「高木さん」を読み切りとして載せてもらってから、中学生がラブレターを渡そうとするというだけの読み切りマンガを描いたんですが。

──ゲッサン2012年12月号に掲載された「恋文」ですね。

そうです。それが掲載されてしばらくして、担当さんから「すごい人気だ」と言われ。

担当 もう新人離れした人気を取ったんです。ゲスト作家の読み切りを入れても1番じゃないかな。それでもう、早く連載をやろうということになり。

せっつかれて次に描いた読み切りが「まちにまったおとなりさん」で。これが「キョーコちゃん」の原型になりました。

キョーコの過去とか、気にしないで

山本崇一朗

──最後に、この話は今後どのように進んでいくのかという部分を伺えたらと思うんですけど。

とりあえず、雰囲気はずっとこのままで……何も変わらないと思います。キャラクターが増えたりすることはあるかもしれないですが。

──実はキョーコちゃんが暗い過去を背負っていて、とか……。

どうでしょう、あまりやりたくないなぁ(笑)。何がしかやるにしても、暗い雰囲気には絶対したくないです。

──断言されましたね。読者も安心して読めそうです。

そうしていただきたいですね。キョーコの過去とか気にしないで(笑)。

「ふだつきのキョーコちゃん」のカット。

──でもキョーコちゃんがこういう身体になってしまったんだろうというのは、やはり気になってくるんですよね。

そうですよね……なんででしょうね。

──もしかして、まだ考えていないとか……。

ふふ、どうでしょう(笑)。とりあえずちゃんと着地できるかどうか僕も不安なんですが、楽しんでいただけるように頑張りたいと思います。ぜひこれからも読んでください!

山本崇一朗描き下ろし! キョーコちゃん&高木さんコラボイラスト

取材終了後、コミックナタリーのためにイラストを描き下ろしてくれた山本。「ふだつきのキョーコちゃん」と「からかい上手の高木さん」の2大ヒロインが、夢の共演を果たしている。これからも読者をときめかせてくれるであろう、2人の活躍に期待したい。

キョーコちゃん&高木さんコラボイラスト
山本崇一朗「ふだつきのキョーコちゃん(1)」 / 2014年1月10日発売 / 580円 / 小学館
「ふだつきのキョーコちゃん(1)」

妹に近づく男を片っ端から威圧するため、最凶の「シスコンヤンキー」と恐れられる札月ケンジ。
「俺の妹に、絶対に近づくな!!」その過保護に隠された、キョーコちゃんの秘密とは…?
クールな妹はときどき素直、表裏一体シスコンコメディー第1巻!

山本崇一朗(やまもとそういちろう)
山本崇一朗

5月30日生まれ。小豆島出身。血液型B型。2011年9月、第27回ゲッサン新人賞佳作受賞。同年12月、第69回新人コミック大賞佳作受賞。2012年6月に「からかい上手の高木さん」でプチデビュー、同年12月「恋文」で本格デビューを果たす。2014年現在、ゲッサン(小学館)本誌にて「ふだつきのキョーコちゃん」、ゲッサンminiにて「からかい上手の高木さん」を初連載にしてW連載中。