コミックナタリー Power Push - 「劇場版 黒子のバスケ LAST GAME」
“映画化するならこういう話“と描いた後日譚
読んだら「カッコいい」と思ってもらいたい
──「黒子のバスケ」はテレビアニメから小説、舞台まで、あらゆる媒体でのメディアミックス展開が行われていますよね。そうした作品をご覧になったときに、影響を受けることはありますか?
やはり、やる気をもらえますよね。「負けないようにがんばるぞ」と思います。テレビアニメは僕も毎週観ていましたけど、本当にカッコよかった。「これを観て原作を読み始めてくださった方をがっかりさせないようにするぞ」というモチベーションが生まれましたね。
──藤巻先生は2007年、赤マルジャンプに「黒子のバスケ」のプロトタイプ版が掲載されたことで、マンガ家としてのキャリアをスタートされています。10年近くプロとしてマンガを描かれているなかで、マンガとの向き合い方に変化はありましたか?
確かに読み切りが載ったのは10年近く前かもしれないですけど、連載が始まったのはそのもっと後ですし、自分の感覚的ではやっとマンガ家として5、6年やってこられたなというイメージです。周りを見るとまだペーペーだなと思いますね。なにせジャンプの作家さんには10年選手がごろごろいらっしゃいますから……。ほかの雑誌を見ても、上には上がいますし。
──なるほど……。ではむしろ「ここが変わらない」ということはありますか?
デビューしたときから一貫してるのは「カッコいいマンガを描きたい」ということです。バスケマンガを描いたら、読者の方に「バスケってカッコいいな」と思ってもらいたいですし、今度の新連載はゴルフマンガなんですけど、「ゴルフってカッコいいな」と思ってもらえたらうれしいですよね。
──読者の方からの「やってみたい」という声が届くと、励みになりますか?
そうですね。「『黒バス』を読んでバスケ部入りました」と言われるのはうれしいです。
──周りでは「バスケの試合を観に行くようになった」という人もすごく多いです。
ありがたいですよね。以前ファンの方とお話する機会があったのですが、「『黒バス』を好きになってからNBA5回も見に行っちゃいました!」と言われたことがあって。「オレより行っちゃってるよ!」とツッコミそうになりました(笑)。
──藤巻先生もほかのマンガに触発されることはありますか?
もちろんです。僕、本屋のマンガコーナーに行ったら、タイトルや作者を知ってるもの・知らないもの問わず、ジャケ買いをするんですけど、それで面白いマンガを見つけたときは、毎回新鮮にショックを受けますね。「自分もがんばらないといけないなあ」と思わされます。
少年マンガを描けるうちにやりたかったゴルフもの
──以前のインタビューで「週刊連載を離れている間にインプットの時間をとりたい」とおっしゃっていましたが、何か新しく始めたことはありますか?
マンガに直結しないんですけど……マザー牧場でバンジージャンプしてきました。
──ええ、なぜですか!?
落っこちてみたかったんですよね。前からスカイダイビングに興味があって、いつかやってみたいんですけど、その手始めとしてバンジージャンプにチャレンジしたんです。初心者向けの一番やさしいものにしたんですが……死ぬほど怖かったです。ジャンプ台のてっぺんに登った段階で膝がガクガクしてましたけど、案内の人に急かされたので飛びました(笑)。
──バンジージャンプをしたことで、世界観とか……変わったりしました?
いや、世界観はどうかな……。怖さは実感しました(笑)。
──いつか直結しないまでもマンガのほうに活かされる日が来るかもしれませんね。新連載の「ROBOT×LASERBEAM」はゴルフものということですが、このテーマはどういう経緯で決まったのでしょうか。
大学からゴルフを始めて、下手ながらゴルフが趣味で、もう一度ジャンプで連載するならゴルフのマンガを描きたいと思ったんです。少年マンガって、もちろん長く活躍されている方もたくさんいらっしゃいますが、自分が年齢を重ねるとちょっと描きづらくなる部分もあると思うんですね。大声で必殺技を叫ばせたりするのが恥ずかしくなってしまう日が来るかもしれない。自分がいつ少年マンガを描けなくなるかわからないので、まだやれると思ううちにゴルフマンガを描きたかった。ゴルフって「ダサい」とか「おっさんくさい」と言われがちなので、そのイメージを払拭したいですね。
──予告で使われていた主人公のカットを拝見しましたが、黒子とはかなり違う雰囲気の男の子ですよね。
ただ黒子と同じように単純な熱血系ではないかもしれません。
──確かに、黒子とは違いつつも、クールな眼差しではありますね(笑)。新連載がスタートしたときに、彼の目がどんなふうに輝くのか楽しみにしています。
輝くのかな? そこは連載が始まってからのお楽しみということで……。
──週刊連載はかなりハードな仕事だと思うのですが、改めて気を引き締めている部分はありますか?
まあ、ありますね。1作描ききったことで自信はついたんですけれど、基本的に、週刊連載って人間のやることじゃないんですよ。くそきつい。やめたらやりたくなるんですけど、やり始めるとやめたくなる。
──結構、つらいことが好きというところはあるんですか?
そういうふうに言われると、僕がMみたいですけれど(笑)。原稿をしている間は本当にしんどくて嫌です。でも、つらいからこそ、それを読者の皆さんに認めていただけたときのうれしさが倍増するんですよね。……あれ、やっぱり、Mなのかな?
──(笑)。最後に、読者の皆さんへメッセージをお願いします。
映画と新連載の始まるタイミングがちょうど一緒なのですが、ぜひどっちも楽しみにしていただきたいですね。特に言っておきたいのが、新連載が始まるからといって、黒子たちのことを忘れるわけではないということです。映画のタイトルは「LAST GAME」とついていますが、僕のなかではこれきり最後のつもりはまったくありません。新連載はもちろん、「黒バス」は「黒バス」で将来的には何かあるかもしれませんから。気長に待ってもらえるとうれしいです。
──「LAST GAME」も楽しみですし、また何かしらの機会に黒子たちに会えるのも待っています。ありがとうございました!
- 「劇場版 黒子のバスケ LAST GAME」2017年3月18日(土)ロードショー
- 誠凛高校バスケ部に入部した黒子テツヤと火神大我。抜群のセンスを持つ火神に対し、黒子は誰もが驚くほど影が薄い存在だった。だが、黒子は強豪・帝光中学で「キセキの世代」と呼ばれた5人の天才と共に戦う“幻の6人目(シックスマン)”として活躍していた。“影”と“光”の名コンビとなった2人が主戦力となり、誠凛バスケ部はウインターカップ出場を果たす。そして「キセキの世代」との激戦の末、ついに全国制覇を成し遂げた。 黒子たちは2年生となり、夏が終わるころ、アメリカから注目のストリートバスケットボールチーム「Jabberwock(ジャバウォック)」が来日した。しかし親善試合で彼らが見せたのは、圧倒的な実力で日本チームをねじ伏せ、日本のバスケを嘲笑う姿だった。その態度に激怒したリコの父・景虎は黒子と火神、そして「キセキの世代」を集め、Jabberwockにリベンジマッチを宣言する! 今回限りの最強ドリームチーム「VORPAL SWORDS(ヴォーパル・ソーズ)」、ここに集結!!
スタッフ
- 原作:藤巻忠俊(集英社 ジャンプ コミックス刊)
- 監督:多田俊介
- 脚本:高木登
- キャラクターデザイン:菊地洋子
- 総作画監督:後藤隆幸、菊地洋子
- 美術監督:鈴木路恵
- 色彩設計:竹田由香
- 撮影監督:荒井栄児
- CGIディレクター:磯部兼士
- 編集:植松淳一
- 音響監督:三間雅文
- 音楽:池頼広
- 主題歌「Glorious days」GRANRODEO
- アニメーション制作:プロダクションI.G
- 黒子テツヤ:小野賢章
- 火神大我:小野友樹
- 赤司征十郎:神谷浩史
- 青峰大輝:諏訪部順一
- 緑間真太郎:小野大輔
- 黄瀬涼太:木村良平
- 紫原敦:鈴村健一
- ナッシュ・ゴールド・Jr.:緑川光
- ジェイソン・シルバー:稲田徹
キャスト
- ©藤巻忠俊/集英社・劇場版「黒子のバスケ」製作委員会
- ©藤巻忠俊/集英社・黒子のバスケ製作委員会
藤巻忠俊(フジマキタダトシ)
東京都出身。2006年に投稿作「黒子のバスケ」が第36回ジャンプ十二傑新人漫画賞を受賞し、2007年に同作が赤マルジャンプ 2007SPRING(集英社)に掲載されデビュー。「黒子のバスケ」はその後、2009年から2014年まで週刊少年ジャンプ(集英社)にて連載され、テレビアニメ化や小説化、舞台化、ゲーム化などさまざまなメディアミックス展開が行われるヒット作となる。2014年から2016年にかけて、「黒子のバスケ」の後日譚にあたる「黒子のバスケ EXTRA GAME」を少年ジャンプNEXT!!(集英社)にて連載。「黒子のバスケ EXTRA GAME」を原作とした「劇場版 黒子のバスケ LAST GAME」が3月18日より公開されるとともに、同日発売の週刊少年ジャンプ16号より新連載「ROBOT×LASERBEAM」をスタートさせる。