コミックナタリー Power Push - 「クダンノゴトシ」渡辺潤
コミックナタリー Power Push - 「ちこたん、こわれる」今井ユウ
マンガ家師弟に直撃!“引き継いだもの”と“引き継がなかったもの”
三億円事件をテーマにした「三億円事件奇譚 モンタージュ」のドラマ化を控える渡辺潤。ヤングマガジン(講談社)にて彼が連載中の「クダンノゴトシ」1巻が、12月4日に発売された。同作は作品ごとに違うジャンルにチャレンジをするという渡辺が「描いてみたかった」と語るホラー。予言をする妖怪・件(くだん)によって、死すべき運命になってしまった大学生7人の生き様を描く。
コミックナタリーでは1巻の刊行を記念し、渡辺の元アシスタントで同じくヤンマガにて「ちこたん、こわれる」を連載している今井ユウの対談をセッティング。マンガ家にとっての師弟関係や、お互いの作品についてたっぷり語ってもらった。
取材・文・撮影 / 三木美波
- 卒業旅行帰りの大学生7人が事故で轢いてしまった、奇妙な“何か”。人面牛身の妖怪・件に死を予言された若者たちは、刻々と迫る死に抗うべく行動するが……。
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辻元光
本作の主人公。城栄大学4年。就職活動をしたが内定をもらえず、やや自暴自棄気味。千鶴と付き合っている。
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櫻井千鶴
光の彼女。印刷会社に内定が決まった城栄大学の4年生。なんらかの秘密を抱えている。
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白石辰巳
実家のコンビニを継ぐ予定の大学4年生。件から最初に予言を受けた。あゆみのことが好き。
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馬場あゆみ / 藤澤伸司 / 河合舞 / 小野寺洋太
光と仲がいい城栄大学の4年生たち。卒業旅行帰りに、ともに件を轢いてしまう。
- 声フェチの男子高校生・桜坂亮平はある日、誰とも喋らないクラスメイト・宮原チコの声を偶然聞き、ひと声で惚れてしまう。だがその翌日、彼女が登校中に護岸に転落。どう考えても死は免れない状況だったが……。亮平、猫屋敷、チコの3人による青春ラブコメディ。
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桜坂亮平
高校1年生。チコの声を「ちょっと変わってるけどよく澄んでいて湿り気もある冬の地中海の風のような」と絶賛する声フェチ。
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宮原チコ
ぼっちで無口な女子高生。週3で死にかける、とんでもないドジ。
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猫屋敷彩
桜坂と中学からの友達。チコのことを宇宙人だと思い込む、隠れオタク女子。
渡辺潤×今井ユウ対談
うちの仕事場はデビュー率高いんです(渡辺)
──渡辺先生がヤングマガジン(講談社)で今年2月まで連載されていた「モンタージュ」のTVドラマ、主演が福士蒼汰くん(参照:「モンタージュ」ドラマ版主人公は福士蒼汰、軍艦島でもロケ敢行し来年放送)だと発表されましたね(取材は11月上旬に行われた)。
今井ユウ えっ、そうなんですか? あの飛ぶ鳥を落とす勢いの福士さん?
渡辺潤 そうそう(笑)。最初にドラマ化が発表されてから2年くらい経ったけど、ドラマ化の話をもらったときはまだ「モンタージュ」が完結してなくて。「オチを伝えなきゃいけないのかな」と思ってたんだけど、もうなんの心配もなく普通に楽しみです。
今井 僕がアシスタントをしていた「RRR(ロックンロールリッキー)」と比べて、「モンタージュ」はすごく若い感じですよね。
渡辺 主人公の大和が高校生だからでしょ? 「RRR」の主人公は27歳だし。でもそうだね、僕はデビューから10年以上ずっと木内(一雅)さん原作の「代紋TAKE2」っていうヤクザのおっさんばっかり描いてきたから、高校生のキャラなんて動かせる気がしなかった。10歳くらい下のアシスタントの子たちの若い感覚がなかったら、大和は描けなかったかもしれないな。
──渡辺先生の元アシスタントさんでマンガ家デビューしてらっしゃる方、多いですよね。
今井 柴田ヨクサルさんもそうですよね。
渡辺 うん、あと「CUFFS」の東條仁とか、「おとなりボイスチャット」のこじまなおなりとか、「匿名の彼女たち」の五十嵐健三とか。
今井 そうですね。特にこじまなおなりくんとはほぼ同期で、福岡出身だから明太子とか地元土産買ってきてくれて、本当にうまかったなあ……。
渡辺 (笑)。自分がダレちゃったりするとき、アシスタントだった人の新刊がドーンって書店に並んでたりするとうれしいし、刺激になるよね。ユウちゃんがいた頃は、「RRR」っていうボクシングマンガを連載してたから、僕は人間を描かなきゃいけないけど背景はリングの線とかがメインで。アシスタントは同じような歳の子たちばっかりだから、みんなTV見てたり、ゲームやってたり(笑)。
今井 「魔界村」「大魔界村」「超魔界村」「極魔界村」……全シリーズ、アシスタントたちで制覇しましたね。
渡辺 それを横目に僕は原稿を描くっていう……。
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渡辺潤(ワタナベジュン)
1968年東京都生まれ。1989年のマンガ家デビュー以降、1990年から2004年まで「代紋TAKE2」、2007年から2009年まで「RRR」、2010年から2015年まで「三億円事件奇譚 モンタージュ」を連載。26年以上にわたりヤングマガジン(講談社)で活躍している。現在、同誌で「クダンノゴトシ」を連載中。
今井ユウ(イマイユウ)
1984年東京都生まれ。大学在学中より持ち込みを開始し、ちばてつや賞ヤング部門佳作を受賞後、渡辺潤のアシスタントとして「RRR」の執筆を手伝う。22歳のとき、別冊ヤングマガジン(講談社)に読み切りが掲載されデビュー。2010年よりヤングマガジン(講談社)で「イモリ201」が集中連載され、その後、月刊ヤングマガジン(講談社)で連載を開始。現在はヤングマガジンで「ちこたん、こわれる」を連載中。