コミックナタリー Power Push - 「殺し愛」
半殺しにした賞金首の男を女の子にプレゼント 普通の恋愛じゃない……2人の愛は“殺し愛”
女賞金稼ぎ・シャトーと、賞金首でありながら彼女のストーカーをする殺し屋の男・リャンハを描いたラブサスペンス「殺し愛」。彼女の狙う賞金首を半殺しにして譲ってきたり、その見返りとしてデートを要求してきたり、不気味なアプローチをかけてくるリャンハに対してシャトーは心を開こうとしない。なぜリャンハはシャトーにこだわるのか、シャトーはなぜ賞金稼ぎなどというヤクザな商売をしているのか。2人の特殊な関係と、回を重ねるごとに深みが増していく物語は、一度読み出したら目が離せない。
コミックナタリーでは単行本2巻の発売に合わせて、月刊コミックジーン(KADOKAWA)にて「殺し愛」を執筆しているFeにインタビューを敢行。デビュー前にpixivで語っていた「殺し愛カップル漫画が読みてぇなぁと思ってたらなんか書き始めてた」という言葉を手がかりに、本作が生まれたきっかけを聞いた。また描き下ろしの4コマも、特集のラストにて披露する。
取材・文 / 三木美波
リッツランサポート商会の新人賞金稼ぎ。偶然リャンハと接触し、応戦するも追い詰められてしまう。万事休すかと思われたが、そこでリャンハが彼女に要求してきたのは連絡先の交換。その日からシャトーの、リャンハにストーキングされる日々が始まった。
香港マフィアの組を1人で壊滅に追い込んだ凄腕の殺し屋。20を越える組織に懸賞金をかけられている立場から「なかなか女の子とお近づきになれる機会なんてなくてさぁ」と、ついさっきまで殺し合いをしていたシャトーをナンパする。
しつこく言い寄ってくる彼のことを冷たくあしらうシャトーと、嫌がられていることは承知でグイグイと迫るリャンハ。無視されるのが嫌なリャンハは、彼女の機嫌を取るため贈り物を……一見するとほほえましい恋愛マンガのような設定だが、重要なのは彼らの職業が賞金稼ぎと殺し屋だということ。ここでは2人の特殊な関係性がわかる、第1話~第3話を無料公開。また連載開始前にpixivでFeが執筆していた、プロトタイプ版の一部もお見せする。このプロトタイプ版は全22本あり、現在もpixivで公開中。連載版の読者も、読み比べてみると新たな発見があるかもしれない。
「デストロ246」が「殺し愛」を描くきっかけ
──まずペンネームの読み方からお伺いしたいのですが、「Fe」で「エフイー」ですか? 「フェ」ではないですよね?
ええ、「エフイー」ですね。でもTwitterのアカウントには「えふい」と書いてますし、「フェ」と呼ばれたりしますので、お好きに呼んでいただければ(笑)。
──鉄の元素記号を指してます?
一応……。ただ深い意味は全然ありません。昔、SNSで名乗ってたニックネームに「鉄」の文字が入っていたので、鉄をちょっとカッコよく元素記号にしただけです……。
──pixivでも「Fe」名義で投稿されてますね。2012年10月から約3年にわたって投稿し続けた「殺し愛カップル漫画が読みたいだけの小話」(以下、「殺し愛小話」)シリーズが、「殺し愛」の元になっています。
リャンハとシャトーのビジュアルの元になる1枚絵をフッと描いて、そこからなんとなく描きはじめた感じですね。最初に「殺し愛小話」を描いたのは「デストロ246」(高橋慶太郎)がきっかけなんです。
──「デストロ246」も殺し屋やヤクザが大暴れしてますね。
読んだときに「うわ、面白い!」って、すごく久しぶりにテンションが上がったんですよね。その勢いのまま「殺し愛小話」を描きはじめた覚えが……。かなり影響されてると思います。
──「殺し愛小話」の作者コメント欄にも「殺し愛カップル漫画が読みてぇなぁと思ってたらなんか書き始めてた」「自給自足じゃなくて読みたい」と書いてらっしゃいましたね。憎からず思っている者同士が殺し合う、みたいな関係性がお好きなんですか?
うーん、そうでもない……かなあ。
──ではそういう関係性を描くのが好き?
別にそういうわけでもないんです。どちらかというとギャグテイストのマンガを投稿することが多いんですが、なんとなくいつもの自分と違うものを描いたら案外楽しかった。そもそもオリジナルマンガはこれが初めてだったんです。
──「殺し愛小話」以前には、どのようなものを描かれていたのでしょうか。
“創作企画”っていう、ひとつの決められた世界観でお互いに自分が作ったキャラクターを出しあって、マンガとかイラストとかを描いていく企画があって。それに参加して描くことが多かったです。
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殺し屋と殺し屋。歪な背徳関係の行方は……。
クールな女性殺し屋と、彼女をストーキングする最強の男性殺し屋。歪んだ関係は意外な発展を見せる。pixiv閲覧数540万突破の愛と狂気の殺し屋×殺し屋サスペンス。
Fe(エフイー)
2012年よりpixivで「殺し愛小話」シリーズを発表し、1万以上“ブックマーク”されたオリジナル作品に付くタグ「創作男女10000users」を獲得する人気を博す。同作を商業作品として仕切り直し、月刊コミックジーン2015年11月号(KADOKAWA)にてデビューを飾った。