もぐす「恋と呼ぶには気持ち悪い」を原作とするTVアニメが、4月5日にスタートする。同作はオタク気質のある普通の女子高生・有馬一花と女癖の悪いハイスペックなサラリーマン・天草亮の年の差ラブコメディ。ひょんなことから一花と出会い、一方的に恋に落ちた亮は、狂信的なアプローチを試みるが、一花からはその直球すぎる愛情表現に対し「気持ち悪い」と罵倒されてしまう。原作は2016年からcomic POOLで連載されており、単行本は7巻まで発売中。発行部数は電子書籍含め累計120万部を突破し、3月25日には最終8巻が「恋と呼ぶには気持ち悪い もぐす画集 Une Fleur」と同時に刊行される。
コミックナタリーではアニメ化を記念し、一花を演じる小坂井祐莉絵と亮を演じる豊永利行との対談をお届け。アニメ「恋と呼ぶには気持ち悪い」の魅力や役作り、アフレコ現場の模様について2人に語り合ってもらった。
取材・文 / カニミソ 撮影 / 曽我美芽
この作品は“アニメ”ではなく“ドラマ”にしたい
──まずは「恋と呼ぶには気持ち悪い」の原作や台本を読んだときの率直な感想を教えてください。
小坂井祐莉絵 私はオーディションを受けるときに初めて原作を読んだんですけど、ドハマりしまして。亮さんは階段から落ちそうになるところを助けられたのがきっかけで一花と出会って、ほぼ一目惚れに近い形で一花を好きになるわけですよね。少女マンガとはいえ、「こんなことある!?」って最初は思いました。でも巻数を追うごとにどんどんイメージが変わっていったんです!
豊永利行 どう変わっていったの?
小坂井 導入部分こそ創作ならではの出会いという感じでしたけど、お互いの気持ちが変わっていく過程がすごく繊細に描かれているじゃないですか。そこがリアルで感情移入しやすいですし、個人的に魅力を感じる部分だなと思いました!!
豊永 めちゃくちゃ力強く言い切りましたね(笑)。
小坂井 つい力がこもってしまいました(笑)。
──気持ちが伝わりました(笑)。豊永さんも原作から入られたのでしょうか?
豊永 僕はオーディションを受けて、亮役に決まってから原作を読ませていただいたんですけど、読むうちにこれは直接現場でやり合ったほうがいいなと思って、途中で読むのをやめたんですね。いただいた台本のみで挑もうと決めて、そこからストーリーを知っていきました。イケメン男性と地味め女子が出会って……といった少女マンガのあるあるなシチュエーションも、キャラクターの性格が“気持ち悪い”というだけであるあるじゃなくなってくる。性格によってこうも見え方が変わるのかと、2人の組み合わせの妙を感じましたね。それと、純粋に演じる側として台本を読んだときに、コメディに寄せるのか、リアリズムに寄せるのか、演じ方によってどんなふうにも転ぶ作品だなって思いました。監督たちとディスカッションしつつ、一花さんとキャッチボールしていく中でどう方向づけられていくのか、すごく楽しみに思いながら台本を読ませていただきましたね。
──中山奈緒美監督とは、実際にどのようなディスカッションが行われたのでしょうか。
豊永 最初に作品の意向として、中山監督が「“アニメ”ではなく“ドラマ”にしたい」とおっしゃってたんですね。その言葉を聞いたとき「ああなるほど、その方向性でいくんだな」って、僕の中でストンと腑に落ちて。最初からキャストとスタッフの中で共通認識ができあがっていました。収録形態も、一般的なアニメだとコンデンサーマイクを使ってマイクの前に役者が立って録るんですけど、「恋きも」の現場に関しては、ドラマや映画の撮影現場で使用するガンマイクを上から吊るして録ってるんですよ。役者の声だけピンポイントで拾えるので、芝居の立ち位置も並べられたマイクに対して横一列になるわけではなく、互いに向き合えて、絵の状態に限りなく近いフォーメーションで録音できたりしたので、そこがほかの現場との大きな違いなんじゃないかと。
小坂井 本当にそうですよね。私は「恋きも」で初めて主演を務めることもあって、すごく緊張していましたし、OKをもらってもイメージ通りできているか不安を感じたりしていたんですね。でも中山監督が「なんでも聞いていいよ」って連絡先を交換してくれて。本番前に自分の中で整理できない部分とか、台本についても疑問点があったら、遠慮せずにすぐ聞いていたんです。そうしたら、めちゃくちゃ長文で返答してくれて。監督や皆さんのおかげで、1つひとつのセリフに時間をかけて向き合い、答えを導き出しながら演じることができました。
──監督との距離感が近くて、ディスカッションしやすい現場だったんですね。
豊永 今言ったように小坂井さんが初主演という部分もそうですし、僕の妹役で出演しているれなぽん(長谷川玲奈)もまだ声優経験が少ない状態でアフレコに臨んでいたりもしてたみたいなので、監督をはじめとした制作陣の中に、キャストの成長を見守りたい、いろんな挑戦をしてほしいという思いがあったというか。今回の現場だと、僕は演者として知っていることが多い立場だったので、自分の知っていることをいろいろ共有したりもしました。休憩中にはキャストはもちろん、制作陣も一緒になって「そこの芝居はこういう感じで……」って話し込んだりしているんですよ。そういう熱い姿からもこの現場が好きだなって思いました。
小坂井 現場の空気がすごくよかったですよね。その場でどんどん演技も変わっていって。いろんなものを吸収させていただいたことで、一花ちゃんと一緒に自分も成長していった気がします。
──豊永さんは小坂井さんの演技を見て、どのような感想を抱きましたか。
豊永 小坂井さんが一花さんの非常にキュートかつ、オタク気質なところにも果敢にチャレンジした演技をされていたんです。僕は亮さんとしてどうバランスよくかけ合おうかを考えましたね。例えばギャグテイストに寄せたときなんかは、彼の場合だいぶ攻めた演技をせざるを得ないので(笑)。実際、くどくて濃い部分があったかもしれないけど、今回初主演を務める小坂井さんのピュアさやフレッシュさが、そのあたりを柔らかく中和してくれた気がします。
気持ち悪いところはとことんファンタジックに
──それぞれ演じる一花と亮というキャラクターに対して、自分に似ているなど共感を覚えた部分があれば教えてください。
豊永 逆に聞きたいんですけど、僕って、亮さんに似てると思いますか? 読者にも聞きたいです。「僕は気持ち悪いですか?」って。
小坂井 周りのスタッフさん、誰も目を合わせなくなっちゃった(笑)。
豊永 おい! 実はそう思ってたんだな(笑)。
小坂井 豊永さんは普段、すごく優しいんですけど、亮さんを演じているときはいい意味でめちゃくちゃ気持ち悪いんですよ。なので、優しさと気持ち悪さの両方を兼ね備えているのかもしれません(笑)。
豊永 そうですね。僕もぶっちゃけ、自分で気持ち悪いなって思いながら演じていますから。裏を返すと、その気持ち悪さを知っていないとできないというか。そういう要素も多少自分の中にはあるんだろうなって思うときがあります。ムッツリスケベですし(笑)。亮さんにしたって女癖が悪くとも、ハイスペックだからこそ、どうしても女性が惹かれてしまう部分があって、そこは彼の魅力でもあるわけですよね。僕自身はそういった世界線に生きてはこなかったわけですけど(笑)。でも「あいつカッコいいな、そりゃモテるわ」って、亮さんみたいな人を想像することはできるので、共感というよりかは理解ができたかどうかが重要でしたね。
小坂井 私の場合は、言葉を選んで発するときの感情が一花ちゃんとすごく似ているって、監督に言われたんですよ。一花ちゃんとはタイプが違うと思っていたので、意外でした。例えば文化祭のエピソードで亮さんたちが遊びに来たとき、一花ちゃんは恥ずかしがって一緒に歩かなかったじゃないですか。でも私はこんなイケメンの人が来たら、自慢したいし連れ回したくなるので(笑)。自分の視点から見た自分と、第三者から見た自分とではまた違うのかなって思いました。あとは一花ちゃんという役どころに近づくために同じ行動をしてみたり、同じものを食べてシーンを再現したり、掴めるものはなんでも掴み取ろうと、日常生活から落とし込んでいきましたね。女子高生も観察してみたんですけど、そのときの彼女たちを見る目がすごいことになっていたと思います(笑)。
豊永 小坂井さんが亮さんみたいになっていたという(笑)。
──小坂井さんと一花は、ヘアスタイルも似ていますね。
小坂井 一花の真似をしました。美容師さんに一花の写真を見せて、「この子と同じようにしてください」ってお願いして。
豊永 本当だ、一緒だ(笑)。
──豊永さんは役作りをするにあたり、参考にしたことはありますか。
豊永 役作りについては、監督から「ドラマの部分はドラマとして真面目に演じてほしいんだけど、トガるところではめちゃめちゃ遊んでほしい」って言われていて。そこのギャップをどこまで出していこうかなって探りながらも、1話目からブッ飛んでいこうって決めてましたね。そもそも亮さんが27歳のサラリーマンらしからぬ人なので、設定や情報は気にせず、気持ち悪いところはとことんファンタジックに、振り幅を大きくつけようと思って演じました。
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亮さん、ごめんなさい。私多丸くん推しなんです
2021年5月28日更新