6月27日にリリースされる橋本裕太の3rdシングル「君は容疑者」と、桜田雛がCheese!(小学館)にて連載した「金魚の糞」がコラボレート。このシングルの表題曲は、もともと橋本がデビュー前から歌っていた楽曲の歌詞が、「金魚の糞」のストーリーに合わせて書き直されたもの。桜田は初回盤のジャケットを描き下ろし、さらにMVのストーリー監修も担当。この企画の始まりは、両作が「大切な人が罪を犯しても守り抜く」という“究極の愛”をテーマにしている点で共通することからだった。
CDの発売に先がけ、桜田の最新作「執事たちの沈黙」6巻の購入者を対象に「君は容疑者」のMVが先行公開されている。コミックナタリーでは桜田にインタビューを実施し、コラボの経緯、描き下ろしジャケットに込められた思い、MVの見どころを語ってもらった。またデビュー1年目の橋本に送った切実なアドバイスの内容とは? 最後には橋本からのメッセージも掲載しているのでお楽しみに。
取材・文 / 西村萌
作品紹介
「金魚の糞」
母を事故で失った少年・菊吉と、彼を養子として迎えた浅川家の娘・金魚、浅川家の隣に住む金魚の幼なじみ・悟郎らを中心に描かれる群像劇。高校生になった菊吉と金魚は、互いに姉弟の関係を超える特別な存在になっていた。そんなある日、家族崩壊の危機を避けようと金魚は重大な罪を犯してしまい……。菊吉の出生の秘密、父親の正体など、ヘビーな展開が次から次へと繰り広げられる。本作は2012年から2013年にかけてCheese!(小学館)にて連載され、単行本は全4巻が発売中だ。
桜田雛インタビュー
顔は地蔵でしたけど
──「金魚の糞」の完結から5年が経ちました。当時の記憶は残っていらっしゃいますか?
日々脳内細胞がはじけ散ってるせいか、ほとんど何も思い出せないんですけど……(笑)。過去最も苦労した作品、ってことだけは確かです。
──本作はヒロインが大切なものを守るため罪を犯すという、かなりシリアスなストーリーです。
「怖い」って声は読者から結構いただいたかも。フィクションとはいえ、家族の裏事情を知る祖父を金魚が踏切で殺めるシーンは描いてて手が震えました。その選択をしてしまった金魚の気持ちを思うと今でも寂しくなりますね……そんなふうに描いたのは自分なんですけど。
──母を事故で亡くした菊吉と、彼を養子として迎えた浅川家の娘・金魚、浅川家の隣に住む金魚の幼なじみ・悟郎。3人それぞれ影を持っているキャラクターですが、連載開始時から相当作り込んだのでは?
何を意識してキャラクターを作ったかとかも忘れちゃったんですが、ポロって生まれ落ちた感覚は覚えてます。その中でもやっぱり、金魚には一番思い入れがありますね。菊吉や父との実の関係を幼いうちに知ってしまったり、罪を1人で抱え込んだり、この子が一番苦労してるんですよ。もうかわいそうで……まあ、それを描いたのも自分なんですけど。「俺がいつかお前を幸せにする! できるかわかんないけど!!」って意気込んでるうちに連載が終わりましたね。
──そして完結から5年を経て、橋本裕太さんにより楽曲化が決定しました。
驚きました。「え、めっちゃイケてるメンズやん。少女マンガ読むんだ」って。その後に「やばいめっちゃうれしい……めっちゃうれしいわ」って感情がじわじわ沸いてきて。お話を持ってきてくれた担当さんの前では地蔵のように無表情でしたけど、内心はずっとテンション上がりっぱなしだったんです。
懐の深い曲です……
──そもそも、どういう経緯でコラボが実現したんですか?
橋本さんが「金魚の糞」を読んで気に入ってくださったことを担当さんづてに聞いて、金魚をイメージして書いてくださったという歌詞の楽曲を聞かせてもらったんです。そこからご一緒させていただくことが決まって、ジャケットの執筆と、MVのストーリー監修でご協力させてもらうことになりました。5年も前の作品をこうして呼び覚ましてもらえて、音楽という新しい形で愛してもらえたことに、大きな驚きと、作者として感謝の気持ちでいっぱいです。
──これがきっかけで「金魚の糞」を読み返すファンはもちろん、新たに読者になる人もいると思います。
ひとえに橋本さんありがとう、ですね。
──実際に曲を聴いてみていかがでした?
ちょっと切なくて懐かしい、というのが第一印象でした。夏祭りの花火が終わった後みたいなノスタルジックさというか……後ろ髪引かれて、泣きたくなるような感じ。寂しさの中に、暖かさがあるんです。「ああ、きれいな感性だな」って思いました。しかも歌いやすいメロディなのでつい口ずさんじゃうんです。洗濯してるときとか、無意識のときにふと。それってすごくいい曲ってことですよね。
──橋本さんの歌声についてはどう思われますか。
水のような透明感があるなと。声もご本人も、すごくクリアで美しい。とても魅力的なアーティストさんだと思います。
──ファンの間ではとろけるような声ということで、“メルティーボイス”と呼ばれているそうです。
うんうん、優しくて甘くて聴いてて耳が気持ちいい。
──ちなみに、印象的な歌詞はありましたか?
「逃げよう 逃げよう 僕がいるから 君の居場所ならもう ここにあるから」という、金魚と菊吉の関係性がよく表れているフレーズがとても好きです。シンプルだけどすごく刺さる。
──世間から追われる対象になっても、自分はそばにいるから安心して、と。
女子はありのままの私を受け入れてほしい生き物なので。金魚以外にも響く、懐の深い曲です……。
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ジャケットの女の子は、お客様と目が合うように
- 橋本裕太「君は容疑者」
- 2018年6月27日 発売 / SME Records
-
初回生産限定盤
[CD+フォトブック]
1944円 / SECL-2301 -
通常盤
[CD]
1080円 / SECL-2303
- 収録曲
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- 君は容疑者
- KAKERU
- おかえり
- 春服
- 桜田雛「金魚の糞①」
- 発売中 / 小学館
- 桜田雛「執事たちの沈黙⑥」
- 発売中 / 小学館
- 橋本裕太(ハシモトユウタ)
- 仙台出身のソロボーカリスト。とろけるような歌声は、ファンの間で“メルティーボイス”と呼ばれる。SNSにアップしたカバー動画は現在約5000万回再生を突破し、女子中高生を中心に話題に。デビューシングル「NEW WORLD」はテレビアニメ「DIVE!!」のEDテーマに採用され、iTunesチャート初登場5位を記録した。
- 桜田雛(サクラダヒナ)
- 静岡県出身のマンガ家。2004年、Cheese! 3月号増刊(小学館)に掲載された「犯罪♥恋愛」で高校生のときにデビュー。以降、「王子達は依存する」「花はナイフを身にまとう」「金魚の糞」「太郎くんは歪んでる」などを発表。累計70万部を超える「執事たちの沈黙」は、最新6巻が発売中だ。
2018年6月2日更新