持ち込みは怖そう
──結果的に2人ともTwitter経由で商業デビューしたわけですよね?
右腹 ありがたいことに。持ち込みもしようと思っていたんですけど、その前にお声がけしてもらえて。
しろまんた 持ち込みって、怖そうだよね。
右腹 怖そう! でも友達の付き添いでコミティアとかの出張編集部に行ったんだけど、気軽だし並行していくつも回れるから「いいな」って思ったよ。
しろまんた 罵詈雑言を浴びせられたりしない?
右腹 しないしない(笑)。めっちゃ優しかったよ。
──出版社から声をかけられたときはやっぱりうれしかったですか?
右腹 「やったー!」って感じでした。
しろまんた 僕は最初詐欺だと思っちゃいました……。
右腹 それはわかる……。
しろまんた 「返信したら晒されるのかな。インターネット怖い……」って。
──ちょっとリテラシーが高すぎたかもしれませんね(笑)。
しろまんた 結果的に本物の編集者さんだったんですけど。「先輩がうざい」の担当さんは、めちゃくちゃメールが早くてびっくりしました! マンガを投稿して寝たんですけど、起きたらもう届いていたんです。
右腹 早い!(笑)
しろまんた 今の担当さんのほかにも、もう1人連絡してくださった方がいてそれにもすごく驚きました。
──一晩で2人も連絡が来たんですか?
しろまんた担当編集 さすがにまだ自分だけだろうと思っていました。
──今の担当さんを選んだ決め手は何だったんですか?
しろまんた 基本的に声をかけてくださった方々とは、必ず一度お会いさせていただくようにしていました。あと、ほんのちょっとおいしいご飯を楽しみにしていたり……。
右腹 顔合わせでご飯を楽しみにしているのは、まんたくんだけでしょ!
しろまんた でも、本当の決め手は担当作のお話でした。実は最初に担当さんと会ったとき、一番ビックリしたのは髪の毛のサラサラ具合なんです。ちょっと怖そうな人だなと思ってすごく緊張もしたんですが、お話しさせていただいたらそんなことなくて。ただそのときに「ヲタ恋(ヲタクに恋は難しい)」の担当の方だと伺ったんです。僕、自分で買った初めての作品が「ヲタ恋」というくらい思い入れがあって。だから、それを聞いて「ぜひとも!!」ってお返事させていただきました。
編集さんがいることで自信がつく
──編集さんと一緒に作品を作るようになって、やっぱりいろいろ変わりましたか?
右腹 描いているマンガに自信を持てるようになりましたね。自分だけで描いたものってすっごい不安だから……。
しろまんた 自分だけだと面白いかどうかもわからなかったりするし、「ここ、ちゃんと伝わるかな……?」とかいろいろ悩むよね。
右腹 今ではTwitterに上げる落書きとかでさえ担当さんに見てもらいたくなりますね(笑)。「これとこれ、どっちがいいと思いますか?」って。
──実際見せたことはあるんですか?
右腹 あります!(笑) そうじゃないと不安で。
しろまんた 僕も「先輩がうざい」の最初の話は、師匠のさめだ小判先生に後押ししてもらってからアップしました。恥ずかしかったんです。画面の中身としか恋愛してなかったので……。
右腹 キモ!(笑)
──(笑)。マンガとしてもTwitterと商業連載ではいろいろ手法を変えていますか?
右腹 絵でいうとTwitterは少しデフォルメ気味にするようにしています。
しろまんた そうですね。デフォルメは多めにしているかも。
──スマホの小さい画面で見る人も多いから、細かい線は見えづらいですもんね。
右腹 あと、コマ割りですかね。SNSに投稿するマンガはあまりコマの強弱を付けていないんですが、商業誌では見開きとか大ゴマとかをちゃんと描こうと意識して描いています。絵もデフォルメ気味でなく、強弱を付けて。
しろまんた担当編集 右腹先生はシーンをつくるのがうまいですよね。「先輩がうざい~」の4巻で「しろまんた先生にしては珍しいコマ割りだな」って思った場面があったんですが、聞いてみたら右腹先生に協力してもらった部分だったとのことで。
しろまんた そう! 本当に助かりました!
右腹 ファミレスで一緒に作業しているときに「ここのコマ割りどうしよう」って相談されて、「私だったらこうするかな」って描いたら「それ使うわ!」って(笑)。まんたくんのコマ割りってちょっと特殊だと思っていて、大きいコマをあまり使わないんですよね。それでも強弱があるのってすごい! Twitterで描いてるっていうのも大きいと思いますが。
不穏さがあるうえでキャラクターがわちゃわちゃしているのが好き
──おふたりとも連載という形もこれが初めてですよね?
右腹 そうです。Twitterにアップしているような短編も1話完結でスッキリ終われて楽しいですけど、連載には連載の楽しさがあります。連載してみて「あとは来週の自分に任せようってぶん投げてしまってもいいんだ」って気付きました(笑)。そういう独特のライブ感は連載ならではだなって思います。
しろまんた 連載当初は本当に緊張していて、投稿ボタンを押すのがすごく怖かったです……。でも描いていくうちにキャラにどんどん愛着が湧いていって「次はどんなことをさせようかな」と考えたりするのが楽しくなっていきました!
──ちなみに「君が死ぬまであと100日」はどんな発想で生まれたんですか?
右腹 私はジャンプSQ.の担当さんと同じくらいの確か2018年春に、今の「君が死ぬまで~」の担当さんとも出会って。最初の打ち合わせで「何日かでキャラが死んでしまうような余命ものはどうですか?」って提案していただいたんです。
しろまんた おお、先見の明がすごい。
右腹 本当に(笑)。最初はそれこそ「100日後に死ぬワニ」じゃないですけど、余命がしっかりと決まっている中でうみが死ぬ話だったんです。「100日後に死ぬワニ」のきくちゆうきさんはそういうストーリーをちゃんと成立させていてすごいなって思います。私はうまく成立させられなくて。それで悩んでいたんですが、「ときめきで余命が増えるのはどうかな!?」ってひらめいて。
──ときめきで余命が増えるヒロインを救うというのは、これまでも胸キュンな作品をTwitterで発表してきた右腹先生らしい話という印象です。
右腹 そうですね。シリアスにしすぎたくないんですけど何かしら不穏な要素はほしくて。ちょっと不穏な要素があったうえで、キャラクターがわちゃわちゃやっている話が好きなので。そういう意味でも、余命というのはいい題材でした。
次のページ »
「君が死ぬまであと100日」は好きなものの詰め合わせ