集英社のマンガアプリ・マンガMeeにて連載されている「君が死ぬまであと100日」は、生き物の余命が見えてしまう高校生の太郎と、その彼女・うみが織りなすラブコメディ。うみの余命が見えてしまった太郎は、なんとか彼女の死を防ごうと奔走することになる。
コミックナタリーは「君が死ぬまであと100日」3巻の発売を記念し、作者の右腹と「先輩がうざい後輩の話」のしろまんたの対談をセッティング。同世代で普段から仲が良く、ともにTwitter発信のマンガがきっかけとなりデビューした2人に、連載を持つまでの経緯や商業連載とTwitterマンガの違い、互いの作品の成り立ちなどについて訊ねた。また最終ページには、2人が互いに作品を交換して描いたイラストも掲載している。
取材・文 / 小林聖 撮影 / 宮津友徳
- 生き物の余命が100日を切ると、それが数字として見えるという特殊能力を持つ男子高校生の太郎。幼なじみのうみのことが大好きな太郎は、うみに4回目の告白をしてOKをもらうも、その瞬間彼女の余命が見えるようになってしまう。焦る太郎だったが、うみのことをキュンとさせることで彼女の余命が増えることに気付き……。
まったく噛み合わないけど仲良しな2人
──おふたりはもともとお友達だそうですね。本日は普段お話ししているような感覚でいろいろとおうかがいしていければと思っています。
右腹 逆に気張らなくて大丈夫ですかね(笑)。
しろまんた 普段通りだと本当に中身のない話になっちゃいそう。
──知り合ったのはいつ頃なんでしょうか?
右腹 2年くらい前に私がコミティアでしろまんたさんの友達と仲良くなって、その方が「今度しろまんたさんも含めてご飯食べに行きませんか?」と誘ってくれて。
しろまんた そうそう。
右腹 まんたくん、当日遅れてきて「すみません、すみません」って言いながら、席についてすぐドリンク3杯を一度に頼み始めたんですよ。「なんだこの人!」って思いました(笑)。
しろまんた のどが渇いていたんです……。僕は会う前から右腹さんのことを知ってはいたんですよ。そのとき誘ってくれた友達に「面白いから読んでみて」って言われて、Twitterに投稿していたマンガ「天使の話」を読んで「わあ、面白い!」って思っていたんです。
──今の会話のように普段はしろまんたさんが右腹さんにちょっといじられている感じなんですか?
しろまんた え? いじられてたんですか!?
──(笑)。おふたりは趣味が合ったりするんでしょうか。
右腹 全然違うよね?
しろまんた 違うね! 僕はゲームがめちゃくちゃ好きで。
右腹 私はマンガが大好きなんですけど、まんたくんとはマンガの話はしませんね。
しろまんた 実はマンガは読んでたつもりだったんですが、右腹さんの読んでる量がすごくて、話があんまり合わなかったんです……。
──趣味のジャンルが違う分、自分の好きなものをオススメし合ったりしないんですか?
しろまんた お互い一方的に話すだけになってしまうことが多いですね。
右腹 オススメ作品の話をされても「ふーん」で終わっちゃったりね。
しろまんた でも、趣味が合わないのが逆にいいのかもしれないです。好きなものが思いっきり被っていると、どこが好きかでバトルになる可能性もありますから。
まんたくんは交友関係が広い
──出会った当時は、もう2人とも商業デビューしていたんでしょうか。
右腹 いや、私はまだ全然。Twitterでマンガを描いたら楽しくて、いただいた反応に喜んだりしていた時期です。ちょうどジャンプSQ.さんに声をかけていただいて、読み切りが載る直前くらいですね。
しろまんた 僕は……何してたんだろう……? 2年前……(「先輩がうざい後輩の話」の単行本を確認して)1巻が2018年の3月発売だから、商業の仕事はしていましたね。
──コミティアなどの即売会には参加していたんですか?
右腹 自分が描いて出すわけじゃなくて、友達のブースを見に行ったりはしていました。ただ、ちょうど2年前くらいに貯金が100万円貯まったのもあって「1年だけマンガ家を目指してがんばってみよう」って思って、大学を休学して東京に出てきていたんです。この1年で成果が出なかったら諦めて教員免許を取って就職しようって決めて。だけど、まだ持ち込みなんかは行ったことがなくて、Twitterで勉強がてらマンガを描いているくらいでした。
しろまんた 僕はもともとゲームジャンルの創作をやっていて、そっちで3冊くらい同人誌を作っていました。その頃に専門学校でマンガコースの先生に「マンガも描いてみたら?」って言われて、当時やっていたゲームのマンガを描いてみたら楽しくなっちゃったんです。
右腹 私もちゃんと描いたのは大学に入ってからですね。落書きとかは昔からやっていて、板タブも持っていたんですけど、マンガは描いたことがなくて。
──それで、まずTwitterにアップしはじめたんですね。
右腹 Twitterは絵をアップする前からずっとやっていたんですけど、「使う」というより「見る」という感じで。好きな作家さんの情報をチェックするって感じですかね。
しろまんた Twitterで好きな作家さんが日常をつぶやいているところを見てるだけで楽しいんですよね。あと、僕の場合はゲームでも作家さんとつながったりすることがあって。好きな作家さんが自分と同じゲームをやっているってわかると、「一緒にやりませんか?」ってすぐDM送りたくなっちゃったり……。最近だと「スマブラ(「大乱闘スマッシュブラザーズSP」)」とか。
右腹 Discord(ゲーマー向けのボイスチャットサービス)でも、いろんなグループに入っているよね。最近も誘っていただいて通話グループに入ったら、まんたくんが一番にいて笑いました。
しろまんた 作家さん以外にもいろんな方とゲームを通して仲良くなることができてうれしかったです。
──Twitter生活を満喫していますね。ほかにもマンガ投稿サイトはたくさんありますが、どうしてTwitterをメインに活動し始めたんですか?
しろまんた Twitterって気軽にマンガを載せられる雰囲気があって、最初の頃はマンガの原稿用紙に鉛筆で描いたものをアップしていました。ペン入れもしてなくて、水色のシャーペンで下書きして、黒のシャーペンで仕上げてました。
右腹 ペン入れしていない鉛筆の線が好きって人、けっこういるよね。
しろまんた 僕もあのざらっとした感じが好き!
──今は2人ともデジタルですか?
右腹 私は高校生のときくらいから板タブを使っていたのでもともとデジタルでしたが、今はもう全部iPadですね。ネームからiPad。
しろまんた 僕もデジタルで描いています。iPad大好き。
シーンから作るTwitterの投稿マンガ
──Twitterにアップしている作品って、どんなところから発想しているんでしょうか。
右腹 私はまずシーンが思い浮かびますね。
しろまんた 僕も描きたいシーンが浮かんで、そこに行き着くにはどうすればいいか考えたりしています。
右腹 あとはセリフとか。「こういうセリフを描きたいな」っていうのを急に思い付いて、それをTwitterに投稿できる4ページ分に膨らませていく感じ。
──右腹さんは「恋する天使は報われない」という短編集にTwitterで発表した作品も収録していますよね。例えばこの収録作だとどういう場面から思い付いたんですか?
右腹 最初に浮かぶのはやっぱりラストシーンが多いですね。「さびしがりやの泉の精」の話だったら、1人で何百年も過ごしていた泉の精が男の子に「お話ししようよ」って話しかけられるところとか。
しろまんた 僕は「恋する天使は報われない」の中だと、「天使の話」が好きなんです。最初に読んだからかもしれないけど、天使ちゃんがすごく好きで。同じシリーズに「君が死ぬまであと100日」のうみちゃんと太郎も出てきてそれもいいんですけど、天使ちゃんの健気さがすごく……。叶わない恋みたいなものが好きなんですよね。
右腹 報われない恋とか片思いっていいよね。
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