アフレコは完成映像で
──本日の取材の数日前に、徳島の「マチ★アソビ vol.21」で行われたステージで、おふたりの出演が解禁されたばかりです(参照:TVアニメ「鬼滅の刃」主人公・炭治郎役は花江夏樹、妹の禰豆子役に鬼頭明里)。花江さんは現地で登壇されたんですよね。
花江 お客さんの熱がとにかくすごかったですね。東京のイベントで普段あんまり感じないくらいの勢いがありました。
──生アフレコも披露されたとか。
花江 そうなんです、無謀にも(笑)。イベント限定で2分くらいのアニメ映像のトレーラーを流したんですけど、そこに声をあてて、ワーッと盛り上がってくださいました。鬼頭ちゃんのビデオメッセージもめちゃくちゃ歓声が上がってたよ。
鬼頭 えー、見たかったです。
花江 突拍子もないことは何もしてない、普通のメッセージビデオなんですけど、いちいち「おーっ」って歓声が起こってましたね。鬼頭ちゃんの目線がずっと上だったのが気になったけど。
鬼頭 あはは(笑)。上のほうにカンペがあったんですよね……(笑)。
花江 Twitterで出演を告知しても「大好きな作品なのでうれしいです!」ってリプライをすごくたくさんいただいて。反響の大きさに作品の人気を改めて感じました。
──放送は2019年4月からですが、10月現在でもうアフレコが始まっているとか。アフレコも完成映像に合わせて声を入れているとお聞きしました。
花江 そうなんです。これまた異例ですよね。でもそれは3話までで、4話目からは通常通りコンテに合わせてやっています。スタッフさんは本当はコンテでやってほしいらしくて。「絵をつけようと思えばそれもできるけど、本当はお芝居に合わせて後から絵をつけたいから、(アフレコは)あえて絵コンテでやります」っておっしゃっていたので、「すごいなー」と思いました(笑)。
──絵コンテと完成映像とでは、声を入れるにあたってどんな違いがありますか?
花江 絵がちゃんとついていると、口の動きにぴったり合わせなきゃいけない難しさはありますね。ある程度直せるとは言ってもらえますけど、自分のタイミングではできないから、そこは難しい。でも絵がついているほうが表情とか動きがちゃんとわかるので、シーンを想像しやすいのはすごくうれしかったです。
「原作を読んでおいてもらえたら大丈夫」
──役の声をどのように作っていったかもお伺いできればと思います。先ほど「声のイメージが人によって違う」と花江さんがおっしゃっていたように、優しさと強さ、幼さと頼もしさを内包している炭治郎は、いろんなアプローチができる役どころかなと思うのですが。
花江 役作りに関しては、炭治郎が物語の中で歳をとることを念頭に置いて、序盤はできるだけ幼くというか、高めのトーンで演じてくださいというディレクションを受けまして。落差をつけるために、幼さを意識してしゃべりました。
──では年をとってからは、少し低めのトーンになる?
花江 そこまでめちゃくちゃわかりやすい低さではないですけど、無理のない範囲でナチュラルに印象を変えたかなっていう感じはありますね。炭治郎は物語の流れの中で相当な経験値を積んでいくことになるので、精神的にもだいぶ大人になってるんじゃないかなと思うんです。
──なるほど。鬼頭さんはどんなふうに禰豆子の声を作っていきましたか?
鬼頭 そうですね。さっきも言ったんですけど、禰豆子はほとんどしゃべらないので……。
──人間のセリフがある1話は貴重ですよね。
鬼頭 そうなんです。1話のアフレコのとき、スタッフさんに「1話が一番しゃべります」って言われたくらいでした(笑)。なのでそこは大事に、いろいろ気持ちを込めて人間の言葉をしゃべりました。でも鬼になってからも禰豆子は感情を失ったわけではないので、同じうなるにしても「ここの禰豆子は何を思ってこうなったのかな?」ってちゃんと考えながらできたらと思って、毎回取り組んでいます。
花江 1話のアフレコはずっとうなってたよね。
鬼頭 めちゃくちゃうなってましたね。家で練習してたんですけど、あんまりしすぎると明日声が出なくなっちゃうな、と思って、あんまりできなくて。
花江 うんうん、わかる。
鬼頭 あんなに緊張して1話のアフレコに行ったのは、久しぶりだった気がします。
花江 しかもほぼ全部別録りだもんね。ほかのキャラクターが会話してる裏でずっと10分くらいうなりっぱなし。なのでうなりのバリエーションが必要で大変そうだなって、見ていて思いました。
鬼頭 現場で「もう少しバリエーションが欲しい」って言われて、どうしようどうしよう……って、必死で自分の中から絞り出しましたね。でもうなったり戦ったりしてないときの禰豆子の声も難しくて。
──そういうときも声を入れているんですか?
鬼頭 間ができちゃうので、ちょっと息を入れたりとか、リアクションのようなものを入れてます。まだうなってるほうがやりやすくて、悩みますね。禰豆子は竹筒を咥えてるじゃないですか。それもいろいろ考えちゃって。
──実際に何かを咥えて演じたりも?
鬼頭 指を咥えてやってみたりはしてます。アフレコ終わった後に、噛みすぎて歯型がついたりしてます。
花江 そうなんだ(笑)。
──アフレコを重ねて、アニメはどんな作品に仕上がっていると感じますか?
花江 「鬼滅」のアニメって、めちゃくちゃ丁寧に作ってるんですよ! 1話のアフレコのときにufotableの近藤(光)さんに言われたのが、「細かなセリフなど原作の内容をしっかり描くので、読んでおいてもらえたら大丈夫です」って。「いや、そんなアニメないよ!?」ってめちゃくちゃうれしかったんですよね。だいたい尺の都合とかで、カットされちゃう作品が多いじゃないですか。それは仕方ないことだと思うんですけど、原作を読んでる身としてはこのセリフもあのセリフも全部聞きたいなって思うので。もう、それを近藤さんに言われた瞬間……好きになっちゃいましたね。
一同 (笑)。
──シリアスなパートもコメディタッチなパートも、原作の細かいセリフまでがアニメでも見られるのかと思うと、原作ファンとしてはこれ以上うれしいことはないですね。
花江 唐突にギャグみたいなセリフとかがぽんと入ってきたり、急にかわいくデフォルメされたりするので、それをどこまでデフォルメすればいいのか、さじ加減が難しいところですね。ギャグシーンに関しては「思い切りやっちゃってください、キャラからブレても大丈夫なのでギャグを優先してください」って言われたんですけど、禰豆子に関してはそういうところもリアクションでやらなきゃいけないから大変そうだなって思います。
鬼頭 難しいです……(笑)。
花江 でも担当編集さんのお話を聞くと、吾峠先生はギャグのつもりで描いてはないそうなんですよ。真面目に描いてるからあの独特の面白さがあるのかもって思いました。
──え、そうなんですか! 善逸の「イィヤアァアアーッ!!!」という一連の雄叫びなど、ギャグっぽいパートも「鬼滅」の魅力のひとつですが、アニメではキャラクターデザインがほんの少し大人びているので、それがアニメでどう表現されるのかはとても楽しみです。
花江 ギャグパートはけっこう作画が変わりますね。善逸、伊之助が出てくると途端にうるさくなりそうなので、楽しみです(笑)。
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本当の兄のように思ってます
- アニメ「鬼滅の刃」
- 2019年4月放送開始予定
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血風剣戟冒険譚、開幕。舞台は、大正日本。炭を売る心優しき少年・炭治郎の日常は、家族を鬼に皆殺しにされたことで一変した。唯一生き残ったが凶暴な鬼に変異した妹・禰豆子を元に戻すため、また家族を殺した鬼を討つため、2人は旅立つ。
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原作:吾峠呼世晴(集英社「週刊少年ジャンプ」連載)
アニメーション制作:ufotable
- キャスト
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竈門炭治郎:花江夏樹
竈門禰豆子:鬼頭明里
ほか
- 吾峠呼世晴「鬼滅の刃⑬」
- 発売中 / 集英社
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©吾峠呼世晴/集英社
- 花江夏樹(ハナエナツキ)
- 1991年6月26日、神奈川県出身。主な出演作に「東京喰種トーキョーグール」(金木研役)、「四月は君の嘘」(有馬公生役)、「双星の陰陽師」(焔魔堂ろくろ役)、「スタミュ」(星谷悠太役)、「機動戦士ガンダム 鉄血のオルフェンズ」(ビスケット・グリフォン役)など。
- 鬼頭明里(キトウアカリ)
- 10月16日、愛知県出身。主な出演作に「グランクレスト戦記」(シルーカ・メレテス役)、「ウマ娘 プリティーダービー」(セイウンスカイ役)、「ブレンド・S」(日向夏帆役)、「ラーメン大好き小泉さん」(中村美沙役)など。