「女の子が水着で尻相撲をする」というわかりやすさ

──まず「競女!!!!!!!!」という連載、そして競女という競技が生まれた経緯を教えてください。

空詠大智　最初は「カイジ」みたいなアンダーグラウンドな賭け事と、「ウォーターボーイズ」みたいな競技を合わせて何かしようという話を担当編集としていました。最初から「こんな感じでいこう」と、ビシっと決まっていたわけではないんですよ。

──ということは、女子がメインとも決まっていなかったのでしょうか。

空詠　いや、女子でやるというのは決まっていました。最初は空中にロープが張られていて、そこで女子が戦う……みたいな競技で考えていたんです。でも「押しくらまんじゅうを入れてやってみよっか」と思いついてから、プールやランドという要素が決まってきて「これは行けるぞ」という雰囲気になりました。

──なるほど。空詠さんの前作「揉み払い師」は胸にフィーチャーしていたので、今回は尻なのかと思っていました。

空詠　そういう意図は全然なかったですね（笑）。それで大枠が決まって連載を始めたものの、どうやって進めていこうか、と試行錯誤しながらのスタートでした。ルールも何も決まってなかった。最近、後出しジャンケンみたいな感じで試合中にレッドカードを出したら、読者から「今さらかよ！」とツッコまれて。

髙橋秀弥　確かにあれは衝撃でした（笑）。でもそういった緩い感じで始まった「競女!!!!!!!!」みたいですが、わかりやすさがすごいですよね。打ち合わせをしていて競女を知らない人に話すときも、「女の子が水着で尻相撲するんです」と言うだけで、どんな競技かパッと思い浮かぶ。細かいルールはさておき、勝敗もわかりやすい。だからアニメも真面目なルール説明とかはあまり考えず、ノリで突っ走ろうみたいな感じにしています。

──競技自体以外にも、たとえば養成学校が東西にあったり、競女技師がいたりと、最初からそういった周辺のことまでしっかり考えられていたのかと思いましたが……。

空詠　養成学校が関東と関西にあるというのは決めていました。3話でそんな話も出てきますし、最初から東西戦くらいまでは頭のなかでボンヤリと考えていました。でも競女技師は、担当から「男出さない？」と思いつきみたいな感じで言われて……「じゃあ競女技師で」と軽いノリで出してしまいました（笑）。

競女を楽しむためには「細かいことにツッコむな！」

──競女技師の岡崎勝なんて、のぞみの恋愛対象にもなりそうな雰囲気でしたが、フェードアウトしていきました。

空詠　そんなところにツッコんでたら、このマンガは読んでいけない！（笑）

一同　（笑）。

空詠　そもそも、最初は主人公が借金を背負って返済のために競女界に入っていくという話でした。でも、担当が「夢を持って入ってほしい、希望を持って入ってほしい」と言い出して。「アンダーグラウンドはどうしたんだろう……」と思いつつ、スポーツものにガラッと転換しましたし。

髙橋　アニメも賭け事の要素はあまり出さないようにしています。競女というスポーツが、あの世界ではものすごい流行りのスポーツ……現実世界で言う、野球やサッカーくらいのメジャースポーツみたいな感じで世界観を作っています。賭け事が入ると特殊な環境になるので、今回はなるべく複雑にならないように意識してます。

空詠　大体、自分が競馬とか競輪とか競艇とか、ああいう世界をあんまり知らないんですよ（笑）。なのでその辺りの様子は全部担当に聞いてやっていたんですが……逆に、自分が知らないから、そのへんの要素をあまり出せなかったというのもあるかもしれません。

担当編集　僕は競馬が好きです（笑）。