コミックナタリー PowerPush - マーガレットコミックス特集 あの頃も、これからも!一生少女マンガ宣言 第1回 河原和音「俺物語!!」「青空エール」「先生!」
原作者としても活動する意義
私も「原作をもらったつもり」でがんばって絵を描きます!
──若手の方と組むことで、「育てる」というようなお気持ちもありましたか?
原作を描き始めたころというのは、アシスタントの新人マンガ家さんたちが「絵は描けるんだけれどネームができない」とよく言っていて。じゃあネームがあったら描けるのかなあ、と思っていたんです。私、ネームはすぐ作れるんですよ。それが面白いかどうかは別ですよ?(笑) 「マンガ」っていう形のものを作るのには慣れているので。
──周りでネームづくりに行き詰まる方を見て思うところがあったのですね。
そんなに細かいところから作らなくていいんじゃないかな、とか、途中で止まっちゃったらそこは飛ばしてその後から描いちゃえばいいんじゃないかな、とか思ったりしていました。もちろん順番に描くのが悪いわけじゃなくて、そのほうがいいものが生まれることもいっぱいあるんですけどね。
──こういうやり方があるんだな、と見せてもらえるのは若手の方にはすごくいいことですよね。
私、ネームが好きなんです。担当さんに見ていただいて、もうちょっとこうしたほうが、って言われたりなんだりしてブラッシュアップしていくのがすごく楽しいんですよね。最近は若い人たちのほうが素敵なネームを作ってくるので、私もがんばらなきゃって思うんですけど。先輩だからできること、なんてもう言っていられないわ、って(笑)。
──青年マンガの世界ではご自身の作品と並行して原作を手掛ける方もいらっしゃいますが、少女マンガではほとんどいらっしゃいませんよね。河原先生は先駆者だと思います。
やっている人があまりいないからやってみたい、というのもあったかもしれませんね。それと、絵って古くなっていっちゃうもののような気がしていて。そうならない方ももちろん大勢いますが、手に持つ小物とか、ぱっと見えるところに時代が出やすい。でもお話は古くならないと思うので、原作だったらずっとマンガを描いていられるかも、と思った時期があったような気がします。今はもうそういう小賢しいことは考えてないですけどね(笑)。
──お二方と組んでみて、ご自身に変化はありましたか。
私も絵を一生懸命描こうと思いました。自分のマンガは自分が描かないと誰も絵を描いてくれないわけで……私も、原作をもらったつもりで描く、くらいの気持ちでがんばって描こうと思います!
がんばってる人を見ると、涙が出ちゃうんです
──「俺物語!!」で原作を手がけつつ、同時にご自分の作品「青空エール」を連載するというスタイルはいかがですか。
描いているものが全然違うというのもあって、すごく楽しくて。時間がないことだけが悲しいです。
──「青空エール」はタイトルの通り、吹奏楽部で全国大会を目指すつばさと、野球部で甲子園を目指す大介が「がんばれ」とエールを送り合うお話です。ここ10年くらいでしょうか、「がんばれ」という言葉はあまり言ってはならぬ、というような風潮もありますよね。でも「青空エール」の2人のように、ギリギリまでがんばっている人がもう一歩踏み出すには、やっぱり「がんばれ」という言葉がぴったりくるよなあ、と読んでいて思います。
そうですよね。なんか……つらそうだなというのは見ていてもわかるんだけど、そこをがんばったら絶対いいから、って思うことはありますよね。自分でもここががんばりどきだなって思うことはあったし……がんばってる人を見ると、歳だからか涙が出てきちゃうんですよ。いま大変なんだよね、でもがんばるって決めたんだ、えらい!って。
──「青空エール」を読んで大人も涙が出るのは、河原先生のそういった気持ちが表れているからなのかもしれません。
大人もがんばっていますからね。「がんばれ」という言葉がネガティブに捉えられることが多いというのもわかってはいたんです。反感を買わないかなあと心配になったりもするんですが、それでも「がんばれ」になっちゃうんですよね。私もファンレターをいただいたりして「がんばってください」って書いてあるとすごくうれしくて。がんばってって言われるから、がんばれる。でも最近は、風潮もまたちょっと変わってきているのかなとも思いますけどね。以前ほどは言っちゃダメだという感じでもない。そういうのも不思議ですよね。みんな気をつかって「がんばれ」って言わなくなってるからなんですかね……言い始めたらまたそういう風潮になるのかなあ。
──時代を読んで描くわけではなくて、描きたいものを描いているうちに時代が移っていく。
そうですね。その時々でやりたいことを描いているので。次に描くものは全然違うものをやりたいなといつも思っていて。面白いことでまだ私がやっていないことは何があるかなあとか考えていると楽しいです。
──デビューされてもうすぐ25年ですが、変わらず新しいことをやりたいと思っていらっしゃるのですね。
私、すごくいっぱいマンガを読むので、好きなものがいっぱいあるんですよ。だからやりたいこともいろいろ出てくるんだと思う。こういうのを私がやってみたらどんなになるかな……って思ってやってみたり。で、あれ全然できないなって思うんですけど(笑)。
初めて読んだ時の記憶もセットで蘇る
──ではマンガをたくさんお読みになる河原先生に、ほかのマンガのことを伺っていいですか? 今回「ブックパス」のキャンペーンでマーガレット作品がたくさん読み放題になるので、お好きな作品についてお聞かせください。
(作品リストを見ながら)わあ、すごい、すごーい!
──特に気になる作品はありますか?
私は世代的には紡木たく先生といくえみ綾先生で育ったので……。いくえみ先生で特に好きなのは「オススメボーイフレンド」「ハニバニ!」「バラ色の明日」とかですかねえ……いくえみ先生はやることなすことかっこいいんですよね。セリフのテンポとか、影響受けてると思います。岩舘真理子先生の「遠い星をかぞえて」はタイトルが素敵だと思って単行本を買ってもらった思い出があります。あ、きらさんは同期なんですよ。「まっすぐにいこう。」を描いている時に一緒に北海道を旅行したんですけど、きらさん、その後で牧場の話を描いていらして。「あ、これ私と一緒に行った旅行が元になってるんじゃない!?」と思えてうれしかったです。関わることができた!みたいな(笑)。きらさんも作風が幅広いですよねえ。どこに行くの!?って、背中の見えない感じが好きです。やまもり三香さんも好きですね。「シュガーズ」、すっごくいいですよ。ひとつずつの話もいいし、絵もすごく上手でかわいくて。「この人はなんだろう!?」と思いました。高梨みつばちゃんの「悪魔で候」とかも、凄みがあっていいし、咲坂伊緒さんの「BLUE」の女の子もかわいかったなあ。椎名軽穂さんは……「CRAZY FOR YOU」もいいですよね! 椎名さんらしい作品ですよねえ。……こうやってみると才能あふれる人ばっかりですね。
──はい。そして河原先生が本当にたくさんマンガを読んでいらっしゃることもよくわかりました。
(笑)。……あ、紡木先生の作品、いっぱいありますね! 全部読んだらいいですよね。なんかこう……紡木先生の作品はいま読むと切ないんです。初めて読んだ中学、高校時代の記憶もセットで蘇ってくるので。マンガって、そういうところがありますよね。私のマンガもそうやって読んでもらえたらうれしいなと思います。
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- 番外編 マーガレット&別冊マーガレット編集長インタビュー
マーガレットコミックスが読み放題!
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河原和音(カワハラカズネ)
1972年3月11日北海道滝川市生まれ。1991年別冊マーガレット(集英社)にて「彼の一番好きなひと。」でデビュー、以後同誌を中心に執筆活動を行う。1996年に「先生!」を連載、教師と生徒の恋愛を描きヒット作に。2003年には「高校デビュー」、2008年に「青空エール」を連載開始。「高校デビュー」は2011年に実写映画化を果たした。山川あいじ作画「友だちの話」、アルコ作画「俺物語!!」では原作を担当。「俺物語!!」は2013年「このマンガがすごい!」オンナ編1位、2013年に講談社漫画賞少女部門を受賞。2015年4月よりTVアニメが放送されているほか、実写映画化も決定している。
2016年1月22日更新