コミックナタリー PowerPush - マーガレットコミックス特集 あの頃も、これからも!一生少女マンガ宣言 第1回 河原和音「俺物語!!」「青空エール」「先生!」
原作者としても活動する意義
別冊マーガレット(集英社)にて連載中の「俺物語!!」は、いかつい見た目で不器用ながらも純情で優しい男子高校生・剛田猛男を主人公としたラブコメディ。4月からはTVアニメも放映され、実写映画化も決定した注目作だ。
コミックナタリーでは「俺物語!!」の原作を手がける河原のインタビューを掲載。アニメの感想や、同じく別冊マーガレットにて連載中の「青空エール」について、さらには「先生!」など過去作についても聞きキャリアを振り返った。少女マンガ家としては珍しく、原作者としても活躍する河原。若手作家と組むことで見えてくる心境についても語っている。
取材・文/門倉紫麻
あそこで切ると、こんなに切なくなるのか!と思った
──河原先生が原作を担当された「俺物語!!」のアニメ、大好評ですね。
はい! すごくいいなあと思って観ています。話を考えて、アルコさんに渡って、もう私からは離れているので、自分のものじゃないような感じもしてるんですよね。アニメでも猛男がちゃんと「カッコいい」のがすごくうれしくて。声もぴったりですし! 声優さんが、ちゃんとキャラクターを解釈してくださって、それを声にして出せるのはすごいなと改めて思いました。
──悲しい話ではないのに、アニメでもやはり号泣してしまいました。
そうですよね、私も1話目から結構泣いていて。猛男が大和を好きになったあたりで、もう切なくなった。その先のこと知ってるんですけどね(笑)。「大丈夫なんだよ、大丈夫なんだよ」って誤解を解いてあげたい気持ちになりました。最初にアニメにしてくださるにあたって、マンガの1回目を3話くらいに分けます、とお聞きしていたんです。1回目は読み切りとして描いたものだったので、途中で切ったら間延びしちゃったりしないのかなとか、ちょっと思ったりもしたんですが、あの話をあそこで切るとこんなに切ない話になるんだ!と。
──毎回切ない終わりで、次回への引きがすごく強い構成ですよね。
そうなんです、これはこれでとっても面白いと思いました。アニメにしていただけて本当によかったです。感謝しています。
「俺物語!!」第1話はするするっとできた
──マンガのほうの「俺物語!!」第1話もとてもテンポがいいですよね。大和とすぐに両想いになるのも、読んでいてうれしかったです。
1回目を描いた時に、わりと話がするするするっとできたんですよね。なんでだろう?
──するするっと行かないときもあるのですか?
うーん、でも読み切りは大体するするっといきますかね……するするっと行かない時は途中でやめちゃうので(笑)。そんなに深追いせず別の話を考えちゃうのであんまり苦しんで描くことはないですね。
──短編を描くのはお好きだとおっしゃっていましたね。
すごく好きです。何も緊張しないというか……。ラストを描くのが好きなんでしょうかねえ。連載だと一気に最後まで描けるわけじゃないですから。
──なるほど。短編だと全体を見渡して描けるのですね。
そうですね。こんなこと言っていいのかわからないですけど、連載だと途中まで描いて「あのとき、ああ描いておけばよかった」とか結構思うことがあります(笑)。短編は読むのも大好きなんですよ。連載中の作家さんが、ちょっとした読み切りを描くのがすごく楽しみで。予告が載った時点で、どんなのだろう!?ってすごくテンションがあがるんですよねえ。
──雑誌に掲載されたものを切り抜いたりされていましたよね。
はい、しています(笑)。
自分で考えた話が誰かに読まれたら、それで幸せ
──「俺物語!!」の前に、山川あいじさんの「友だちの話」の原作も手がけていらっしゃいます。そのとき既に「青空エール」という大変熱量の高いご自身の連載もされていて、さらに原作を手がけられるのか!と驚きました。
山川さんの原作のお話をいただいた時は、なんというか、力がちょっと余っていて(笑)。自分のマンガを描いてる時にほかの話が思い浮かんだりすることはしょっちゅうあって。でもマンガ1本全部を描く余力はないから、ネームだけ描いたりしたいなあっていう話を編集長としていたんですよ。そうしたら山川さんが原作付きのものを描いてもいいとおっしゃっている、と。山川さんが大好きなので、ぜひお願いしたいと思いました。ものすごい才能のある方ですよね。崩れた顔の絵なんて、ひとつもないじゃないですか。私は10年に1回くらい「よく描けた」と思える顔の絵とかある程度なんですけど、山川さんは全部の絵がいい。だから描いていただけてすごくうれしくて。自分の刷り出し(註:チェック用の試し刷り)は捨てちゃうんですけど、山川さんのはとってあります(笑)。
──ほかの話が浮かんだとして、「いつか描けるときに描こう」とストックしておく、という選択もあると思うのですが。
もったいないなとか、これは絶対自分で描きたい!みたいなところが私には全然ないみたいで。自分で話を考えて、それが誰かに読まれたら私はそれで幸せなんだなということに最近気づきました。マンガ家さんそれぞれに「ここが幸せ」っていう部分が違うと思うんですけど。でも……やっぱりアルコさんのことも山川さんのこともすごく好きだからそう思えるのかもしれないですね。アルコさんのときも「原作やれますか?」って聞かれて「やれます、っていうかやりたい、やらせてください!」と(笑)。好きじゃない方の原作だったら嫌なんじゃないかなあ。おふたりに同じような感じでネームを出すんですけど、アルコさんはアルコさんのマンガになって、山川さんは山川さんのマンガになるんですよねえ。ネームそのままじゃないんですよね。さすがだなと。猛男のキャラクター設定も、「大きくて強そうな感じ」ぐらいしか言ってなかったんですよ。角刈りで眉毛が太いというのも、アルコさんが考えてくれました。
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河原和音(カワハラカズネ)
1972年3月11日北海道滝川市生まれ。1991年別冊マーガレット(集英社)にて「彼の一番好きなひと。」でデビュー、以後同誌を中心に執筆活動を行う。1996年に「先生!」を連載、教師と生徒の恋愛を描きヒット作に。2003年には「高校デビュー」、2008年に「青空エール」を連載開始。「高校デビュー」は2011年に実写映画化を果たした。山川あいじ作画「友だちの話」、アルコ作画「俺物語!!」では原作を担当。「俺物語!!」は2013年「このマンガがすごい!」オンナ編1位、2013年に講談社漫画賞少女部門を受賞。2015年4月よりTVアニメが放送されているほか、実写映画化も決定している。
2016年1月22日更新