10月より放送中のオリジナルアニメ「川越ボーイズ・シング」は、新設ボーイズ・クワイア部を舞台に、個性豊かな男子高校生たちが繰り広げる熱血青春コメディ。放送されたばかりの第5話で、ついに10人のボーイズ・クワイア部員が揃い、物語は全国ボーイズ・クワイア・コンクールに向けて新たな展開を見せていく。
コミックナタリーでの連載第4回では、
取材・文 / 柳川春香撮影 / 曽我美芽
「AnimeJapan 2023」内「川越ボーイズ・シング」スペシャルステージ「Gettaway」LIVE映像
アフレコでも“音楽”をやっていました(伊瀬)
──今回はついに川越学園ボーイズ・クワイア部の部員が揃ったというタイミングで、1年生メンバーを演じる皆さんにお話を聞いていきたいと思います。まず第4話で入部した双子の日向行・進について、生田さん、伊瀬さんのおふたりから紹介していただけますか。
生田鷹司 日向兄弟は一卵性双生児で、あんまりやる気のない気だるげな感じなのですが、お互いに対しては負けず嫌いで、いつもツンケン言い合ってるような2人で。
伊瀬結陸 2人でひとつ、みたいな感じだよね。お兄ちゃんにとってのアイデンティティが弟で、弟にとってのアイデンティティはお兄ちゃん、みたいな。
生田 そうそう。片方がいないと形にならない。
伊瀬 ケンカもどちらかが仕掛けるんじゃなく互いに吹っ掛け合っていて、2人にとっては日常生活の一部なんですよね。収録のときはセリフを言うときのリズム感とか音程も合わせるようにディレクションをいただいて、それが作品内の音楽面にも活きているなと思います。
──ケンカがコミュニケーションの一部なんでしょうね。双子役ですが、オーディションではどちらかの役を受けたんでしょうか?
生田 僕は兄と弟の両方を代わる代わるやって、ほかの参加者と掛け合いをしたんですよ。
伊瀬 そうそう。生田さんがずっといらっしゃったので、僕もオーディションで生田さんと掛け合いをしたんです。
──では役が決まって、2人で最初に合わせたときはしっくり来た感じですか?
生田 いや、最初は合わなかったですね。やっぱり2人とも声色を揃えるものだと思っていたんですが、音響監督の菊田浩巳さんにディレクションしていただいたら「そうじゃない」と。
伊瀬 音の波形とか、もっともっと深いところから揃えていきましたよね。
生田 声色じゃなく、ニュアンスの付け方とか、セリフの中でどこを立てるかとか、そういうところを意識してと言われて。それで現場で試したのが、アフレコブースの中って普通はマイクが画面に向かって立っているじゃないですか。それを向かい合って顔を見ながら、ニュアンスを合わせていく作業をやったんです。それでお互いがお互いにすり合わせていった。
伊瀬 なんか、“音楽”をやっていましたよね、感覚的に。お互いを見つめ合って、ブレスを合わせるから肩が上がるタイミングも一緒だし、セリフを言っていても歌っているような感じが出てきて。話数を追うごとに磨かれていき、「今日合ってるね」ってお互いに感じられたときはすごく気持ちよかったです。
──クワイアのような気持ちをひとつにする感覚を、アフレコでも体験していたんですね。そして第5話では葉山さん演じる博士、深川さん演じるマジックが加わりました。
葉山翔太 双子ではないものの(笑)、こちらもツーカーの関係ですね。2人で毎日過ごしてて、博士はシャイで臆病なところもあり、マジックのほうが物を言うことに関しては前に出てくれる。
深川和征 だね。博士がすぐテンパっちゃうから、マジックが理屈で落ち着かせてくれるという、好対照な2人かなって思います。博士はそんなに人と接するのが得意じゃないし、マジックは父がナイジェリア人、母が日本人ということで、どこかクラスになじめなかった2人が意気投合して。
葉山 人とはちょっと違うっていうところは博士もマジックも意識してるよね。あと歌がすごくうまいという設定なので、個人的にはビクビクしちゃいます(笑)。
──カラオケで100点取るキャラクターですもんね。オーディションはいかがでしたか?
葉山 最初は双子のお兄ちゃんのほうを受けまして、菊田さんから「博士をやってみて」って言われたんです。僕は普段元気な役とか、けっこうワーワー言うようなキャラクターが多かったので、博士のようなキャラは珍しくて。でも実際演じてみたら、ジメジメした感じというか(笑)、「あの言葉言えなかったな」とか「嫌なことあったな」ってときにマイクを握る、みたいなところは僕と近しい部分があったので、シンパシーは感じてました。
深川 みんな、受ける役って自分で選んだんですか?
生田・伊瀬・葉山 選びました。
深川 僕、「深川くんならこの役じゃない?」ってマネージャーが決めてくれて(笑)。それでマジックを受けたんですが、オーディションでは菊田さんに「学生なのに先生に聞こえる」って言われて、自分なりに少年に聞こえるようにやったものの、「あっ、これ落ちた。もう忘れよう」って思ってたんですよ(笑)。
葉山 ショックを受けすぎて?(笑)
深川 終わったと思って(笑)。それで記憶から消していたら、少し経ってから「受かったよ」って。
──マジックはルックスや性格も大人っぽいですもんね。
深川 とはいえ彼も高校生なので、ちょっと外側を見過ぎていたのかなと今は思います。マジックの難しいところが、人と壁を作っているから普段はちょっとキツめなんだけど、博士に対しては歳の離れた弟を見守るような優しい感じで、その演じ分けが難しかった。それで菊田さんが、「設定にはないけど、きっとマジックは兄弟がいっぱいいるんだろうね」って話をしてくれて、そういうつもりでやってみるようになりました。
葉山 僕はそういうマジックに対するディレクションを聞いて、「マジックにそう思わせるような博士ってどういうのだろう?」ってアプローチしていったと思います。あと、最初に「根暗になりすぎないで」というディレクションがあって。博士は閉じこもっているだけだと僕も思っていて、これから成長していくにつれてエネルギーの出し方が変わっていくので、そこは菊田さんと相談しながら演じました。
──日向兄弟も博士とマジックも2人だけの世界にいたのが、クワイア部に入ることで外の世界に一歩踏み出したのかなと感じました。
葉山 春男先生のおかげですよね。あのくらいの吸引力がないと……よく言いましたけど(笑)、たぶん博士は飛び出てこられなかった。
深川 そうそう。マジックはマジックで「博士を守らなきゃ」ってままだったと思う。
このオーディション勝ち抜いてくる奴らは、やべえ奴の集まり(生田)
──そもそも「クワイア」という題材や、作品の第一印象はどんなものでしたか?
葉山 すごく高いレベルの歌唱力を求められている作品だなと思いました。オーディションの課題曲が難しかったのもあるんですが、自分の魅力も出してほしいってオーダーがあって……。
深川 あった。自由にアレンジして歌ってほしい、みたいなね。
葉山 カラオケで猛特訓しましたね。博士と同じような100点を取らねばって(笑)。
生田 たぶんみんなそうだと思います。僕はバンドのボーカルもやっているので、ある程度どんな曲が課題曲でも大丈夫だろうくらいに思っていたんですけど、とあるミュージシャンのすごく難易度の高い曲が来て、ほんと目ん玉飛び出るくらい驚いて(笑)。「こんなの誰が歌えるんだよ!」って。だからこのオーディション勝ち抜いてくる奴らは、やべえ奴の集まりだなって思ってました(笑)。
伊瀬 ほんとに。ここに集まっているのは精鋭だなって思います。
生田 歌うのに覚悟がいる曲ですよね。
葉山 深川さんはどうだったんですか?
深川 僕は正直、課題曲はそらでも歌えるくらい知ってる曲で……「余裕だな」って(笑)。
一同 (笑)。
──ここまで取材させてもらった中で、あの課題曲に驚かなかったという人は深川さんが初めてです(笑)。
深川 びっくりはしましたよ(笑)。うちの事務所でも課題曲を聞いて「これは歌えません」ってギブアップした人が何人かいたので、そこを越えてくる人たちはすごい人たちだとも思いました。ただ、作品の中には“歌がうまくないキャラクター”というのもいるんじゃないかなと思っていたので、うまく歌えたからと言って受かるわけでもないだろうとは思ってました。
──劇中歌のレコーディングについても聞かせてください。第4話では日向兄弟の「背比べ」と、部員8人での「Shake it till make it」が披露されましたね。
生田 「背比べ」はまさに学校の授業で習う合唱曲という感じで、仮歌の時点で本当に完成されていて。「どうやって歌おう」という葛藤はありましたけど、曲自体はすごくすんなり入ってくるいい曲だったので、まずは“日向行がどう歌うか”を考える前にこの曲をちゃんと歌ってみようと、“歌を立てること”を最初に考えてやっていました。レコーディングでは先に進が歌ったものを聴いて、それに合うように意識しましたね。
伊瀬 アフレコよりもレコーディングが先だったので、正直レコーディングを終えたときは「進としてこれでよかったのかな」という不安が残ってたんですが、第4話でだんぼっち先輩の「でも、双子くんって声だけは似てないよね」っていうセリフがあって。声は似てないけど、ハモったときは気持ちいいのが双子なんだと描写されていたので、第4話のアフレコを終えて「あれでよかったんだ」と安心しましたし、本当にいいものができたなって思ってます。
──ちなみにクワイアが題材というところで、一般的なキャラクターソングとは違う難しさがあったりはしましたか?
葉山 歌唱方法が違いますからね。「喉を開いてください」って指導があったんですが、その時点でキャラクターボイスがどうしても出しにくくなるので。なんとか試行錯誤しながらやってましたね。
伊瀬 そうですね。キャラクターらしさを完全になくしてもいけないし。
葉山 やっぱりクワイアなので、合わせるところは合わせなきゃいけない。ソロパート以外は基本的に声が重なっているので、キャラクター感を出すよりも合わさったハーモニーとして、より自然に聞こえるような歌い方をしようと思ってました。
生田 僕は何パターンか用意していきました。皆さんがどれぐらい合唱のほうに振り切っているのか、どれくらい役を残した状態で歌ってるのかを聴いて、僕が持ってきた3つ4つの手札のうち、合うのはたぶんこっちだなっていうのを選んで。普段やることのない作業なので、そこはすごく楽しかったです。
深川 ……めっちゃ考えてるじゃないですか。
葉山 どうだった?(笑)
深川 なんにも考えてなかった(笑)。
一同 (笑)。
──それはそれですごいです(笑)。
深川 僕はラップの仕事はやったことあったんですけど、歌の仕事はこれが初めてだったんです。なんとなく思っていたのが、キャラクターのことを考えすぎると、うまく歌えなくなるというか。
葉山 どうしても声色を使う分、上限が狭まってしまいますよね。
深川 そうそう。あと、「ほかの人はこうやって歌うだろうから、自分はこういうふうにいこう」というのを考えすぎると、自分のよさが出なくなってくるという思いもあったので、あんまり何も考えてないです(笑)。
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めちゃくちゃスタジオで息……息!って思った(葉山)