ジャンプが手がける縦読みマンガアプリ「まずはこの作品から!」の5タイトルをおすすめポイントとともに紹介、第1話の試し読みも

ジャンプグループが縦スクロールマンガに特化したアプリを立ち上げる。そんな驚きの発表から約1年の時を経て、5月29日についにジャンプTOONがリリースされた。“新たな読書体験”を目指す同アプリでは、オリジナル作品をはじめ数多くのタイトルが配信されている。

コミックナタリーはそんなジャンプTOONの魅力の一端に迫るべく、5タイトルをピックアップし、これまでにも縦読み作品のレビューや関係者へのインタビューを多数担当してきたライターのナカニシキュウにおすすめポイントを紹介してもらった。各作品の第1話も試し読みとして掲載しているので、気になる作品をチェックしてみてほしい。

ジャンプグループが贈る“新たな読書体験”
ジャンプTOON登場!

オリジナルタイトルはもちろんあの作品の“タテカラー版”も

ジャンプTOONの創刊時ビジュアル。

ジャンプTOONの創刊時ビジュアル。

ジャンプグループが手がける縦読みマンガアプリという触れ込みで、サービス立ち上げの発表時から注目を集めていたジャンプTOON。縦読みマンガと言えば海外作品のヒットが目立つ中、国産のヒット作品を生み出していくと言わんばかりに、5月の創刊時点で28タイトルだったオリジナル連載作品は7月30日時点で35タイトルと、急速にその数を増やしている。

転生ものという縦読み作品王道の題材に真っ向から挑む「ラスボス少女アカリ~ワタシより強いやつに会いに現代に行く~」などのオリジナル作品はもちろん、「ハイキュー!! タテカラー版」「増田こうすけ劇場 ギャグマンガ日和 タテカラー版」「GANTZ:T」といった従来の作品を縦読みに組み替えた“タテカラー版”、他プラットフォームで公開されている縦読みマンガなど数多くの作品を配信中だ。

ジャンプTOON AWARDロゴ

ジャンプTOON AWARDロゴ

また新人発掘に積極的に取り組むジャンプグループらしく、タテマンガ限定のマンガ賞・ジャンプTOON AWARDを実施。タテマンガ投稿サイト・ジャンプTOON NEXT!もジャンプTOONの創刊時から展開し、“すべてのマンガ制作者のための雑談”と銘打った編集部員による音声コンテンツ「ジャンプTOONの雑談!」もPodcastとYouTubeで公開するなど、これから縦読みマンガを描いてみたいというマンガ家志望者への門戸も開かれている。縦読みマンガと言われると、ロマンスファンタジーや、悪役令嬢、転生ものなどの作品を思い浮かべる人も多いだろうが、ジャンプTOON NEXT!には既存の人気ジャンル以外にもバラエティに富んだ作品が投稿されている。タテマンガの世界で新たな才能と出会いたい人はこちらもチェックしてみてはいかがだろう。

ジャンプTOON統括編集長の浅田貴典氏は、ジャンプTOONの立ち上げに際し、「縦読みマンガは、このジャンルじゃないと受けない、と決めつけることは、しません。その発想こそが、創作の土壌を痩せさせるからです」、創刊時には「『ジャンプっぽさって何ですか?』と聞かれたら、浅田は『変わるのが、ジャンプです』と答えます」「今回、我々は『タテマンガ』に挑戦します。新たな読書体験に、ご期待ください」と宣言している。タテマンガという新たに挑戦するジャンルで既成の概念にとらわれず、変化を受け入れながら新しい作品を生み出していくジャンプTOONが贈る“新たな読書体験”に今後も注目しよう。

まずはこの作品から!
ジャンプTOONオリジナル作品5タイトルを
おすすめポイントとともに紹介

文 / ナカニシキュウ

「ラスボス少女アカリ~ワタシより強いやつに会いに現代に行く~」
岸馬きらく、酒ヶ峰ある

©岸馬きらく・酒ヶ峰ある/集英社

©岸馬きらく・酒ヶ峰ある/集英社

あらすじ

強大な力を持つ魔王・アヴァロンは、“自分を倒してくれる存在”を求めて別世界へ転生することを決意。いじめを苦に自殺した地球人の女子高生・アカリの体に入り込んだ。強い者と出会うべく、生前のアカリが所属していたハンター養成学校にアカリとして通い始めたアヴァロンだったが、学園一の実力者だという生徒会長・間島華南にさえも赤子の手をひねるように圧勝してしまう。しかし華南の類まれな向上心の強さに希望を見出したアヴァロンは、自分を倒させるために彼女を鍛え上げることに。

単なる無双譚ではない? “自分を倒す相手”を育成するため最強の魔王が現代へ

異世界からやって来た魔王がいじめられっ子女子高生の体に入り込んで無双する物語──という説明から受ける印象とは、ひと味違った読み味を提供してくれる本作。もちろん、いじめの対象であったはずの少女が強大な魔力でいじめっ子らを圧倒する痛快な展開も描かれるが、より特徴的なのは“自分を倒してくれる相手を育成する”という一風変わった目的設定にある。主人公であるアカリ本人ではなく、華南をはじめとしたサブキャラクターたちの成長物語として楽しめるところが、最もユニークなポイントだ。

また、最強のラスボスとして生み出されたがゆえの絶対的な強さと不遜な人格を備えたアカリがふいに見せる人間くさいリアクションや、華南とのコミカルな掛け合いも見どころのひとつ。そうした人間たちとの触れ合いの中でアカリが何を得てどう変化していくのか、そして彼女を倒せる存在は現れるのか、今後の展開に注目だ。

第1話を読む!

「ああ、生きているって素晴らしい」
羊太郎、えびす、おおみね、大連拓思科技

©羊太郎・えびす・おおみね・大連拓思科技/集英社

©羊太郎・えびす・おおみね・大連拓思科技/集英社

あらすじ

人生に絶望し学校の屋上から飛び降りようとしていた男子高校生・黒鉄陸斗の目の前に、突如として異様な光景が広がった。生徒たちのスマホからゴブリンやオーク、ドラゴンなどのモンスターが大量に出現し、人間たちを襲い始めたのだ。つい先ほどまで自ら命を絶とうとしていた陸斗だったが、屋上に現れたゴブリンに襲われた瞬間「死にたくない」と反射的に感じ、秘めたる高い身体能力を生かしてこれを撃退する。命からがら屋上へ逃れてきた洋弓部エース・西灯矢らとともに、陸斗はこの状況をサバイブするすべを模索し始めるのだった。

スクロールする指が止まらない! 新感覚の痛快パニックホラー

物語導入でのいじめ描写や、非現実的なまでに性根の腐った悪人キャラクターなどの要素は王道の縦スクロールマンガ的であるとも言えるが、物語構造としては極めて正統なパニックホラーで、乱暴に例えるなら「ゾンビの代わりにファンタジー系モンスターが出てくる王道ゾンビもの」のようなお話と言えばわかりやすいだろうか。必然的に対ゾンビ戦とはかなり様相の異なるバトル描写が展開されるため、新感覚のパニックアクション作品として楽しめる。

パニック作品ということもあり、次々に陸斗たちに難題が降りかかってくるのも特徴の1つ。瞬時に次の絵が目に入ってくるタテヨミというフォーマットと、次の展開が気になってしまうパニックホラーというジャンルの相性もあるのか、「このあとどうなってしまうんだ?」とスマートフォンをスクロールする指が止まらなくなってしまう。

第1話を読む!

「レンタル努力」
三河ごーすと、TOON CRACKER

©ストレートエッジ・TOON CRACKER/集英社

©ストレートエッジ・TOON CRACKER/集英社

あらすじ

「人生はすべて生まれ持ったもので決まる」。平凡な男子中学生・君塚歩夢は、努力だけでは埋まらない境遇や才能の差に絶望していた。そんな彼の前に突如として異形の悪魔が現れ、なかば強引に「レンタル努力」なるアプリを歩夢のスマホにインストール。それは、望んだ能力を瞬時に獲得できてしまうという超常的な機能を有していた。ただし、獲得した能力に応じて設定された努力項目を後で必ず“返済”しなければならず、怠った場合は死ぬのだという。歩夢はこのアプリを駆使して人生の逆転を目論むが……?

タテ読みでは比較的珍しい?少年マンガ濃度の高い逆転ストーリー

特殊効果を持つ1つのキーアイテムを軸とした、大きく括れば「猿の手」ベースの物語の一種である。その意味では伝統的な作劇フォーマットに則った作品と言え、それゆえに誰もが心おきなく没頭できる強固な物語的骨格を有している。加えて、主人公の歩夢は正統派少年マンガ主人公の系譜を踏襲した髪型と前向きマインドの持ち主。不良から嫌がらせを受けてもまったく折れない心の強さを彼が最初から備えているおかげで、描かれる状況のシビアさの割に気持ちよく心安らかに読み進めることができる。

なお、あらすじでも紹介している通り、望んだ能力を手に入れたとしても、後で努力という形で“返済”しなければならないのが「レンタル努力」の特徴。必然的に、本来その能力を手にするために必要だった分の努力をする様子が描かれるのは、縦スクロール形式のオリジナル作品としては比較的珍しい、非常に少年マンガ濃度の高い作品と言えるだろう。

第1話を読む!

「異世界コンビニのおっさん、実は最強。」
三木一馬(OOS)、Trys

©ストレートエッジ/集英社

©ストレートエッジ/集英社

あらすじ

とある異世界の町外れにある24時間営業の魔道具店(コンビニ)・ポーソン。そこで新人バイトとして働き始めた45歳のおじさん・ランドは、年下の先輩スタッフらに落ちこぼれ扱いされながらも熱心に労働に励んでいた。何かとトラブルの絶えない店舗ではあるものの、いつも運よく事なきを得ている……ように見えているが、実は大きな秘密を抱えるランドの暗躍によって店の平穏は守られているのだった。

ラノベ界の名物編集者が贈る異世界ほのぼのコメディ

「とある魔術の禁書目録」「ソードアート・オンライン」などの編集担当として知られる三木一馬が原作を手がける本作。普段は冴えないおじさんが実は伝説級の実力を持つ剣士であるという、「スーパーマン」や「スパイダーマン」のような“能ある鷹は爪を隠す”系の基本設定が魅力の一作だ。ダメダメなおじさんがトラブル発生時に問題をスパッと解決する気持ちよさは、読後に爽快な気分を味わいたい人にオススメしたい。

基本的にはほのぼのとした日常を描くコメディであるが、その背後には壮大な冒険物語が見え隠れ。ランドの過去が次第に明かされていく作りによって、読者はついつい先を読みたくなってしまう。ランドを師と仰ぐ女剣士・イスティアやバイト仲間のローザ、ミントらの存在にはラブコメ展開の気配も。また、タイトルや世界観はいかにも異世界転生もの然としているが、この作品では誰も転生していないのだ。そんなファンタジー世界を舞台にする中で、ポーソンでの接客や品出しなどの現実世界然とした妙なリアルさのギャップにもクスリとさせられる。

第1話を読む!

「きみのためのエデン」
斜線堂有紀、Whomor

©斜線堂有紀・Whomor/集英社

©斜線堂有紀・Whomor/集英社

あらすじ

幼少期に6人の少女とともに監禁された経験を持つ青年・箱崎有生。ある日1人の女性が彼の前に現れ、いきなりキスを迫ってくる。状況が飲み込めずに戸惑っていると、その女性は有生の目の前で頭部を爆発させて死んでしまった。すると、次々にキスを迫る女性が彼のもとへやって来る。彼女たちはかつてともに監禁された少女たちであることが判明し、どういうわけか「24時間ごとに有生とキスしなければ頭部が爆発して死ぬ」という不条理なルールが課されていた。有生は彼女たちの命を救うべく、5人と毎日キスをするための共同生活を始めることに。

毎日キスしないと……死と隣り合わせのデスゲーム×ハーレムラブストーリー

ミステリ作家・斜線堂有紀が原作を手がける、ハーレムラブストーリー×デスゲーム×ミステリのハイブリッド作品。一歩間違えれば死に直結するヒリヒリした緊張感が通奏低音として流れる中、タイプの異なる5人の美少女たちとの官能的な恋愛模様が繰り広げられていく。

その一方で、「“毎日キスしなければ死ぬ”というルールを誰がなんのために仕組んだのか」「最初の犠牲者はなぜタイムリミット前に爆発したのか」「5人の少女の中に殺人犯が紛れているのか」など、状況はあまりにも謎だらけ。これらに一体どんな答えが用意されているのか、ヒロインレースの行方も含めて先の展開から目が離せない。

第1話を読む!