「人類を滅亡させてはいけません」諫山創×高畑弓×蒲夕二 師弟鼎談|“諫山組”でマンガのノウハウを学んだ2人がタッグを組む!アシスタント時代に「進撃の巨人」の現場で得たものとは?

諫山お気に入りキャラ「大家さん」、モデルの正体は

──諫山先生は「人類を滅亡させてはいけません」の中で、特に好きなキャラクターはいますか?

諫山 オサムの住むアパートの大家さんが、いいキャラですよね。現実とつなぐキャラというか、バックボーンが見えてくるような人ですよね。

「人類を滅亡させてはいけません」1巻より。

高畑 あの大家さんには、実は2人モデルがいまして。1人は、打首獄門同好会というバンドのベーシスト、junkoさん。もう1人は、僕が小学生のときに通っていた「チャッピー」っていうおもちゃ屋さんのおばちゃんです。そのおばちゃんは、タバコを吸いながら接客するから、そこで買うプラモデルは全部タバコ臭いんですよね(笑)。そんなイメージです。

──そうだったんですね。輪郭がはっきりしていて、「この人のことをもっと知りたい」と思わせる人物です。

諫山 大家さんは、リリンたちとは一緒には住んでないけど準家族的な立ち位置で、ホッとします。失われた共同体というか、周りに頼れる人たちがいない孤独な主人公にとっては心細い状況だと思うので、外部から見守る視点の人物がいてくれるのがいいですよね。

──オサムが住んでいるのはアパートですが、大家さんがちょくちょく登場することで、長屋のような雰囲気も感じられます。

諫山 人間って、群れで生きる生き物としてスタートしたのに、ここ何百年かで急に個人で生きる生き物みたいになっちゃったので、無理が出てきますよね。人間は本来1人では子育てができない動物らしいですし、かつては集団で面倒を見るシステムだったから、今みんな「個人で育てるのは大変」ってなるのは当然だと思うんです。そういう背景もあるから、やっぱり面倒見のいいおばちゃんみたいな人がいてくれたら心強いですよね。

宇宙人・リリンは小学校に上がれるのか!?

──子育てのあれこれはもちろん、オサムはなんだかんだ女子にモテており、高校の同級生で、リリンの通う幼稚園に務める持田さんや、リリンの家来であるマッチョな宇宙人・メイヒューなど、ハーレムものとしても読めるのも魅力です。諫山先生はどの女子キャラに惹かれますか?

諫山 メイヒューがいいですよね。人間じゃないので、なんというか、未知との遭遇というか。血がつながってない同士もそうですけど、かけ離れた存在が通じ合ったり、理解し合う瞬間が描かれていて、そこが一番グッと来るところだと思います。

──確かに、筋肉女子のメイヒューの、オサムに対する急転直下のデレ具合は衝撃でした。では、諫山先生が今後作品で楽しみにしているポイントを教えてください。

諫山 オサムとリリンの行く末というか、一緒に生活する以上はいろんな障害やケンカを経て、どんどん仲が深まっていくところが見られるのが楽しみですね。あと、現実的にリリンの戸籍はどうするのかとか、そういうところを考えても面白いのかなと。

高畑 リリンは来年小学校に上がるので、そのあたりは「どうしようかな……」とずっと悩んでいて。

諫山 ですよね。

 さすがに住民票とか戸籍が必要になってくる(笑)。

諫山 その辺、興味あります。市町村の戸籍課みたいなところと、どういう話をするのか。場合によっちゃ警察と話さなきゃいけなかったりとか。

高畑 戸籍のない子供……! 事件になっちゃう(笑)。

「人類を滅亡させてはいけません」2巻より。

諫山 作品で描かれている人情の部分と対比になるような、お役所仕事的なものとオサムたちが相対したときにどうなるか、興味がありますね。たとえばドラえもんやオバケのQ太郎がこの世界に来たときに、現実にどう落としどころをつけるのか、どんな世界観になるのか、突き詰めていくと面白いですよね。

高畑 諫山さんに相談に乗ってほしいくらいです(笑)。

 監修を……(笑)。

諫山 なんでもいつでも。今無職なので。

高畑 何言ってるんですか!(笑)