鉄鍋のジャン!!2nd|熱い!ひどい!美味い! 伝説のド外道料理人・ジャンの中華を再現

3品目:火災樹ホウツァイスー(ハクビシンの地獄鍋)

「鉄鍋のジャン!」に登場する火災樹を再現。
材料
  • アナグマ、白菜、きのこ色々、長ネギ

白いスープ

  • 豆乳、オイスターソース、塩、紹興酒

赤いスープ

  • 鶏がら、豆板醤、麻辣醤、にんにく、生姜、醤油、紹興酒、オイスターソース、唐辛子、ラー油
作り方

1今回はハクビシンの代わりにアナグマを使用。アナグマは食べやすく切る。

2それぞれの材料を火にかけて2色のスープを作る。

3アナグマ肉は赤、野菜は白いスープに煮れて火を通す。

──3品目は、ジャンとの五番勝負で伍行壊が作った火災樹です。

「鉄鍋のジャン!」より。“裏食医”という暗殺者の末裔である伍行壊は、卑劣な手も使ってジャンを追い詰める。

今井 伍行壊はもう……。ジャンに劣らず外道で、ライバルにふさわしいキャラクターでしたよね。「2nd」の監修をすることになって「鉄鍋のジャン!」をあらためて読みましたけど、お気に入りのキャラクターです。

──今日はハクビシンではなく、アナグマの肉を使っているとか。

今回は赤いスープに、1品目で作った飲めるラー油を使用。

今井 今回の肉は、猟師も兼ねている長野の肉屋さんで調達しています。ただハクビシンは秋から冬にかけて捕れるそうなので、同じジビエ系のアナグマを代わりに使うことにしました。山に住んでいる小動物同士だし、味も似ていると思います。

──その肉を赤く辛いスープで、野菜を白いスープで煮込みました。

今井 野菜は白菜と大黒本しめじ、白舞茸、黒舞茸などです。白いスープは原作だと羊の乳やヨーグルトを使っていましたが、今回は豆乳鍋にしました。

──では、いただきます……思ったより肉が柔らかいです。脂身もありますね。

今井 羊より癖がなくて食べやすいですね。個体が小さい分、味がしっかりしていて柔らかいんでしょう。

「鉄鍋のジャン!」より。伍行壊は解体したハクビシンの肉をわざわざ丁寧に盛り付けてみせた。
今回の鍋に使用したアナグマ。

──さばいてみていかがでしょうか?

今井 以前に鹿をさばいたことがあるのですが、少し匂いがあって、そのときと同じ感じでしたね。それとアナグマは元の見た目がかわいいから、かわいそうで……。肉屋さんから「(原作と同じように)頭もいります?」と言われたのですが、さすがにこの特集に掲載できなそうなので今回は遠慮しました(笑)。

──それは確かに……。さらに原作では、ハクビシンの鍋に審査員の飼い犬の肉を混ぜて食べさせるというくだりがあって強烈でした。

今井 あんな展開、今ではできないでしょう。さすがに怒られます(笑)。でも、ああいった常識はずれのことをジャンだけでなく対戦相手もするところが「鉄鍋のジャン!」らしいですよね。

 時代が変わったので、表現の面では気を付けるようにしています。例えば「鉄鍋のジャン!」初期に小此木と一緒に山で野鳥を捕まえて食べるエピソードがありましたけど、あれは今だと確実にダメですね(笑)。

今井 ほかにインパクトの強い料理としてマジックマッシュルームを使うスープというのもありましたが、あれも今だとNGですよね。時代のせいか「2nd」は今のところ大人しいですが、今後は徐々に「鉄鍋のジャン!」らしく、激しくなるのでしょうか。

 そうですね。1巻より先の話なので詳しくは言えませんが、今後あるかわいい動物がかわいそうな目に遭うシーンが……。

──それは見たいような、見たくないような……(笑)。

 1巻では以前からの読者へのサービスも込めて、「鉄鍋のジャン!」に登場した餃子や刀削麺をオマージュ的に扱ってきましたが、これからはどんどん過激な料理が増えていきますよ。

4品目:日本式香醋猪肉排骨リーベンシーシャンツォズゥロゥバイグゥ(日本の黒酢酢豚)

「鉄鍋のジャン!!2nd」第3話に登場する日本式香醋猪肉排骨を再現。
材料
  • 豚スペアリブ、塩こしょう、日本酒、米粉

蒸す用のスープ

  • 醤油、日本酒、八角、花椒、砂糖

黒酢餡

  • 黒酢、黒みりん、黒糖、たまり醤油、米酢
作り方

1スペアリブに塩こしょうと日本酒で下味を付け、フライパンで焼き付ける。

21をバットで蒸す用のスープと合わせ、2時間蒸す。

3蒸したものに米粉をまぶして、さらに米粉を水で溶いたものをまとわせ、カリッと揚げる。

4黒酢餡にとろみをつけて、肉にかける。

豚肉の断面。中は豚の角煮そのもの。

──最後は「2nd」に登場する日本式香醋猪肉排骨です。早速いただきます。

今井 この料理のポイントは2つあって、まず食感です。最初に豚肉を蒸して角煮を作るんですよ。それを揚げることで外はカリカリ、中はトロトロにしました。

──サクッとしているのに肉自体はフワフワですね。普段食べている酢豚とまったく違う食感です。

黒酢餡に使用した調味料の一部。ポイントは黒みりん。

今井 そのサクッとした感じを出すためと、今回は日本式の酢豚ということで片栗粉ではなく米粉を衣として使いました。あとは餡に、黒酢と黒みりんを使っています。この黒みりんが目玉で、みりんを熟成することで甘く、黒くなっているんです。1本3000円ほどします。

──値段を聞いたからではないですが、甘さに深みを感じます。ごちそうさまでした。酢豚と言えばこの黒酢酢豚でジャンが大谷千年との勝負のあと、さらに4種類の酢豚が登場していましたね。

「鉄鍋のジャン!!2nd」に登場した、色とりどりの酢豚。

今井 あれはボツ案を活かしていただいたんです。自分やムラヨシさんは、例えば西条先生から「次は酢豚でいきたい」というアイデアをもらうと、2、3案メニューを考えて送るんですよ。その中から最終的に登場させることになったメニューのレシピを具体的に考えていきます。「2nd」の3話で出てきた酢豚は、提案したものの採用されなかったメニューがあらためて使用されました。

──なるほど。担当編集の張さんは西条さんとどんな打ち合わせをされていますか?

 前作の誰々は今どうしてるか、その子供はどういう人物か……といったキャラに関することや、料理に関することが中心ですね。最近、西条先生との打ち合わせでは、3Dプリンタを使った料理というアイデアが出ました。「洋菓子だったらできるんじゃないか」とか言って。

──それは面白そうですね。レシピと3Dプリンタさえあれば実際に読者も食べられますし。「2nd」の物語についても少し伺いたいのですが、今作の主人公は秋山醤とキリコの息子で、なぜか名前が父親と同じ秋山醤。そして父のほうのジャンはまだ出てきていません。やはり前作からのファンは父・ジャンの行方が気になるのではないかと。

 確かに彼が今、何をしているかというのは「2nd」の1つのポイントですね。

今井 あとは、少しだけ姿を見せたキリコの変貌ぶりも。

 西条さんの中で、キリコは「男を尻に敷くスパルタ」というイメージらしいんですよ。子供の頃はまだ無邪気さがあったのでかわいかったけど、成長したことでその怖い一面が目立ってきたという。

──父・ジャンはわかりやすいヒールですが、冷静に考えるとキリコもストイック過ぎる怖さがありますよね。

「鉄鍋のジャン!!2nd」より。キリコは息子を厳しく教育する。

 「2nd」のジャンは、キリコの息子ということもあって「料理は心」を謳っています。でもキリコが言い続けていた「料理は心」も作中ではいいふうに捉えられてはいたけど、キリコ自身、それを押し付けるエゴイスティックな部分もありましたよね。そういった側面も見せていければと思います。

──今後、物語の盛り上がりも期待ですね。最後に今井さん、今回「鉄鍋のジャン!」の料理を作ってみていかがだったでしょうか?

今井 楽しかったですし、珍しい食材ばかりで勉強にもなりました。やっぱり「鉄鍋のジャン!」は調理法がぶっ飛んでるだけで、作中で作られている料理は美味しいんですよ。そのことがあらためてわかりました。「2nd」の単行本では巻末に簡単なレシピも掲載しますので、皆さんもぜひ挑戦してみてください!

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「神の舌」大谷日堂の店にクレーマー現る!そのクレーマーこそ、中華の覇王「秋山醤」と「五番町キリコ」の息子にして、訳あって「ジャン」を名乗る少年であった!新たな世代による、ド級の料理バトルが開幕する!

西条真二(サイジョウシンジ)
11月25日生まれ。1992年に「怪奇同盟」で週刊少年チャンピオン(秋田書店)にてデビュー。代表作は「鉄鍋のジャン!」など。2017年5月現在、月刊ドラゴンエイジ(KADOKAWA)にて「鉄鍋のジャン!!2nd」を、近代麻雀(竹書房)にて「鉄牌のジャン!」を連載中。