1990年代後半から2000年代初頭に週刊少年ジャンプ(集英社)で連載された、桂正和「I"s」のTVドラマ化が発表されてから約1年。12月よりBSスカパー!およびスカパー!オンデマンドにて、いよいよその放送がスタートする。
コミックナタリーは放送開始前のタイミングで、主人公の瀬戸一貴役を演じる岡山天音とヒロイン・葦月伊織役を演じる白石聖の対談を実施。「I"s」のリアルタイム世代ではない2人から見た、作品やそれぞれが演じるキャラクターの魅力、キャラクターと自身の共通点について語ってもらった。
取材・文 / 宮津友徳 撮影 / 山本哲也
ヘアメイク(岡山天音 / 白石聖) / 芹川善美
スタイリスト(岡山天音) / 入山浩章
高校生の瀬戸一貴とクラスメイトの葦月伊織を軸に、一貴の幼なじみ・秋葉いつき、後輩女子の磯崎泉、一人暮らしを始めた一貴の隣人となる麻生藍子と、それぞれ名前の頭文字に「I」がついていたり、読み方が「アイ」であったりと「I」に関連したキャラクターたちが織りなすラブストーリー。桂正和の繊細な筆致で描かれた原作は累計発行部数1000万部を突破しており、劇中のセクシーな描写は当時の少年たちを夢中にさせた。
瀬戸一貴(せといちたか)
優柔不断なところがあるごくごく普通な男子高校生。過去に恋愛で傷ついた経験から、好きな女の子の前で気持ちとは逆の言動を取ることが多く、「逆走くん」と呼ばれることも。
葦月伊織(よしづきいおり)
一貴と同じ高校に通うヒロイン。演劇部に所属しており役者になることを夢見ている。雑誌のグラビアに取り上げられるなど容姿端麗だが、控えめで大人しい性格。
「桂先生の作品で女性のお尻の魅力に目覚めた」って人が周りにたくさん
──「I"s」は1997年から2000年まで週刊少年ジャンプに連載された作品ですが、1994年生まれの岡山さん、1998年生まれの白石さんからするとあまり馴染みのない作品でしたか?
白石聖 私はジャンプが好きなんですけど、ラブストーリーやラブコメでいえば「いちご100%」や「To LOVEる -とらぶる-」の世代なので、今回のお話をいただくまで読んだことはなかったです。ただ作品の名前自体は知っていました。
岡山天音 実は僕はこのお話をいただいた時期に、たまたま「I"s」を読んでいたんです。そうしたらマネージャーから「『I"s』に出演が決まったよ」と言われて。タイミングがドンピシャ過ぎて縁を感じましたし、不思議な気持ちになりましたね。
白石 ちょうど読んでいたっていうのは、どういうきっかけだったんですか?
岡山 周りの先輩たちに「オススメのマンガを教えてください」って聞くと、よく「I"s」の名前が挙がっていて。当時リアルタイムで読んでいて「桂先生の作品で女性のお尻の魅力に目覚めた」って言われる方がけっこう多かったみたいですね。
白石 (笑)。「I"s」に出てくる女の子たちはみんなカワイイですもんね。お色気描写もあるんですけど、桂先生の絵が魅力的だから女の人でも読みやすいですし。
岡山 出演の話を聞いたとき、僕はまだ原作を序盤しか読んでいなかったんですが、たくさんの女の子が出てくる恋愛ものの主役ということで「えっ、マジで! めっちゃ楽しそうじゃん」と思っていたんです。でも最後まで原作を読んでみると一貴はいろいろな女の子との間で葛藤し続ける役だったので、これは演じるのがキツいキャラクターだなとも感じましたね。
──白石さんはどういった経緯で伊織役に決定したんですか?
白石 私はオーディションでした。最初は藍子役でという話があったんですが、結局伊織ちゃん役でオーディションを受けることになって。周りのオーディションを受けている方々が本当に原作が大好きという方々ばかりだったので、決まったときは正直なところ「私でいいのかな……」と思ってしまったりもして、プレッシャーがすごかったです。
岡山 原作はオーディションにあたって読んだの?
白石 はい。先ほど話にも出ましたけど、一貴の葛藤ぶりというか、なかなかくっつきそうでくっつかないのがもどかしかったですね。あれだけ魅力的な女の子が次々に出てきてその中で揺れ動くっていうのはわかるし面白いんですけど、女子目線で言うと「はっきりしてよ!」って思っちゃったりもしました(笑)。
弱い一貴が好き
岡山 一番好きなキャラって誰だった?
白石 えっ、それは一貴ですよ!
岡山 即答だ。僕も伊織ちゃんが好きですね。なんかすごいよそゆきの回答みたいだけど(笑)。
白石 一貴って女の子の間で揺れ動いちゃう優柔不断さはありますけど、伊織ちゃん目線だと正義感が強くて、肝心なところで守ってくれるヒーローじゃないですか。
岡山 ドラマの第1話でも伊織ちゃんがグラビア誌に出たことでからかってきた不良を一蹴しようとしたり、盗撮犯から守ったりしてるもんね。
白石 そうかと思えば伊織ちゃんのことが好きなのに、自分の気持ちとは“逆走”してつんけんした態度を取っちゃうんですよね。私は撮影中に監督から「もっと一貴のことを好きになって」とアドバイスされていたんですが、そういう一貴が逆走しちゃう部分なんかはすごく愛しいですよ。
岡山 伊織ちゃんのグラビアで盛り上がっているクラスメイトに対して、本人もそばにいるのに「どうでもいい」なんて言っちゃったり。僕は一貴ってすごく弱い人間だと思うんですよね。女性関係で傷ついたという過去があるじゃないですか。
──小学生時代に好きだった女の子に気持ちを悟られてしまい、「きもちわるい」と言われたことがトラウマになっているという描写がありますね。
岡山 そうやって傷ついてきた過去があるからこそ、どのヒロインにも優しくして何かしてあげなきゃって考えるんでしょうね。それって弱い人間だからこその発想だと思うんです。もちろんそういう部分は一貴の長所だと思いますが、短所にもなっちゃうんですよね。白石さんも言っていたように優柔不断にも見られてしまいますし、自分の埋まらない穴みたいなものを、伊織ちゃんじゃない別の女の子に寄り添ってもらって満たしてしまいそうなときもある。弱い人間だっていうのはいい意味、悪い意味で表裏一体ですけど、そういう繊細なところは一貴の魅力だと思います。
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ヒロインの中で一貴に一番似ているのは伊織