コミックナタリー Power Push - 奥浩哉「いぬやしき」

ANIMAREALが愛を持って実写化! リアル犬屋敷&獅子神の誕生秘話

モデル選びに鼻は重要

──イケメン獅子神くんとは対照的なおじいちゃん、犬屋敷さんのモデルはどう選んだんでしょうか?

おじいちゃんは、全国の劇団員とかシニアモデルのリストから、写真を1枚1枚見て見つけましたね。それから出演交渉して。決め手は鼻と髪の毛でした。もともと薄くなってて、まさに同じ髪型だったんです。あと目や口は特殊メイクとかCGで結構いじれるんですけど、鼻ってあんまりいじれないんですよ。

──なるほど。

あとこの方、合気道をやってらっしゃるんです。だからやっぱり立ち姿に芯があるんですよね。

「いぬやしき」カラーイラスト

──確かに、しゃんとしてらっしゃいます。

そうなんです。それがある意味、計算外だったんですけど。犬屋敷さんって弱そうじゃないですか。でもこのモデルの方はどう立っても強そうに見えてしまう(笑)。ただ今回はカッコいい犬屋敷さんというのがテーマだったので、強そうなのもアリだな、という話になりまして。ヒーローがテーマの犬屋敷さんになりました。

──衣装なんかは、スタイリストが入っているんでしょうか?

いや、今回はいないですね。犬屋敷さんのスラックスも、モデルさんの私物です。ただ靴は買いました。最近のおじいちゃんって、おしゃれなんですよ(笑)。でも犬屋敷さんって絶対にそうではないので。おじいちゃんっぽい靴を探して買ってきましたね。まあ、写ってないんですけど……。

──もったいない! 獅子神くんの衣装も私物なんでしょうか?

はい、これもモデルのものです。彼の高校時代の制服なので、余計にリアリティが出ましたね。

奥先生のCGデータを使用してコラボ

──撮影をしてからはCG加工の作業に入ると思うのですが、どれくらいの時間がかかるものですか?

1週間くらいかかりますね。いや、もっとかかるかな? ゴールがないからどこまででもやれちゃうんで、ある程度はおしりを区切ってやるんですけど、最低1週間は取ります。

──奥先生からの要望などはあったんでしょうか。

「いぬやしき」2巻より。

いや、一切ないですね。完成したものを見てもらって、イエスかノーかっていう世界です。なので要望はなかったんですけど、奥先生ってCGに力を入れてらっしゃる方じゃないですか。この背中の機械とか、腕の機械も、実は奥先生からいただいたデータを使わせてもらって、こちらでさらにいじってるんです。

──そうなんですか! コラボ作品という感じですね。

ええ、地味にコラボってるんですよ。僕たちがそのまま使っている部分もありますし、改造している部分もあります。手の部分は結構そのまま使ってますね。細かい質感を変えたりはしますけど。ちょっとリアルにしたり、背景にも馴染みやすいようにしたり。この犬屋敷さんの背中の筒はもうちょっと背負ってる感を出したいなと思って、ひと回り大きくしたり、丸みをつけたりしてロケット感を出したりしました。NG出るかな、と恐る恐るでしたけど、大丈夫でしたね(笑)。

──NGが出たら1週間が無駄になるところでしたね。実際にできあがったものをご覧になられた奥先生からは、何かコメントなどあったりしたんでしょうか。

担当さんからは、奥先生がすごく喜んで褒めてくださったとお聞きしています。ありがたいことですね。

奥浩哉「いぬやしき(6)」 / 2016年4月22日発売 / 637円 / 講談社
「いぬやしき(6)」

渡辺しおんとの出会いが獅子神に人の痛みを思い出させた。だが、平穏な日々に暗い影が忍び寄る……。獅子神の脅威を前に人は武力の力を持って挑む。その行為は、果たしてどんな結果をもたらすのか。奥浩哉が圧倒的クオリティを持って贈る、衝撃作最新刊!!

奥浩哉(オクヒロヤ)
奥浩哉

1967年9月16日福岡県福岡市生まれ。山本直樹のアシスタントを経て、1988年に久遠矢広(くおんやひろ)名義で投稿した「変」が第19回青年漫画大賞に準入選、週刊ヤングジャンプ(集英社)に掲載されデビューとなった。以降、同誌にて不定期連載を行い、1992年よりタイトルを「変 ~鈴木くんと佐藤くん~」と変え連載スタート。同性愛を題材とした同作は道徳観念を問う深い内容で反響を呼び、1996年にはTVドラマ化されるヒットを記録。マンガの背景にデジタル処理を用いた草分け的存在として知られ、2000年より同誌にて連載中の「GANTZ」はスリルある展開で好評を博し、アニメ、ゲーム、実写映画化などさまざまなメディアミックスがなされた。 2014年よりイブニング(講談社)にて「いぬやしき」の連載を開始する。

(イチ)

2012年にマンガ、アニメ、ゲームといったカルチャーから、新しい文化を生み出す「ANIMAREAL」を発足。写真や3DCGのほか、手描きや特殊メイクなどさまざまな手法を用いてマンガ・アニメの「リアル化」の表現を追求する。「劇場版銀魂完結篇 万事屋よ永遠なれ」のリアル銀時ビジュアルを皮切りに、「いくさの子」「テンプリズム」「いぬやしき」などの公式作品を制作。「月刊 FAIRY TAIL」では13カ月連続でピンナップを掲載。また、ももいろクローバーZの3rdアルバム「AMARANTHUS」を始め「Zの誓い」などCDジャケットのアートワークも手がける。