奥浩哉「いぬやしき」
「GANTZ」作者がイブニングで新連載 山本直樹×奥浩哉の師弟対談
一緒の雑誌で連載をするのは初
──1月からは奥先生の新作がイブニングで始まりますが、おふたりが一緒の雑誌で連載をされるのは初めてですか?
山本 初だっけ?
奥 そうですね。なんだか感慨深いものがあります……。あと、もしかしたら将来的には僕のアシスタントをやってくれてた武田(一義)くんがイブニングで描くかもしれなくて。
山本 ああ、「さよならタマちゃん」の。じゃあ3代揃い踏みだ。
奥 そうなんですよ。そうなったら、すごいですよね。
山本 連載いつから始めるんだっけ?
奥 1月28日発売の4号からですね。
山本 そっか。実は「レッド」も年明けあたりから毎号連載になるんだよね。大変だよ(笑)。
奥 なんでそんな進行になったんですか?
山本 いや、なんか知らないうちに……口車に乗せられて……(笑)。「いぬやしき」は、何話くらい描きたまってるの?
奥 いま(12月中旬)、4話くらいまで描いてあります。
山本 早っ! 進行早いなー。
奥 始まる前に5、6話まで描いてるでしょうね、間違いなく。
山本 すごいなー、早いなー。僕、全然描きたまらない(笑)。昭和のマンガ家ですから……。
奥 僕、わりとルーティーンワークが苦じゃないんですよ。
山本 締め切り守る?
奥 守ります。むしろキッチリペースを守っているほうが安心するタイプ。安定していないとすごく不安になるというか。
──ネームに詰まることもあまりないんですか?
奥 まったくないですね。1話のネームはだいたい2、3時間だし、作画中もアシスタントさんも時間通りに来て、時間通りに帰っていくって感じで。ずーっと延々描き続けてます。
山本 粛々と。
奥 粛々と。ホントにそんな感じですね。
山本 僕は描き始めるまでに時間かかっちゃうんだよなー。ああ、声が小さくなっちゃう……。エロを描くのは早いんだけどね。泉のように湧いてくるから(笑)。
奥 例えば原作をやろうとは思わないんですか?
山本 話を作るほうが得意っちゃ得意だけど……半分取られちゃうじゃん。
奥 あーそういうことか(笑)。でもすんごい売れたら……その分入るし。
山本 いや、すんごい売れるような話は描かないから。
「いぬやしき」は、いまの自分が見たいもの(奥)
──新連載のタイトルは「いぬやしき」。1話を読ませていただいたんですけども、主役がおじいちゃんという斬新な設定で。
山本 そうなの? へー。
奥 そうなんですよ。
──なぜ、おじいちゃんを主役に据えようと思ったんですか?
奥 僕はいままでずっと、「売れる作品を作ろうと思ったら主人公は美形にしないといけない」という意識がすごくあって。それに縛られていたところがあったんですね。
山本 思い込みみたいな?
奥 まさに思い込みですね。かわいい女の子とかかっこいい男の子を描かないと、読者が読んでくれないんじゃないかと。いまだに怖いんですけど。でもイブニングさんで描かせてもらえることになって、「自由に描いていいですよ」と言われたので、じゃあブサイクな高校生を主人公にしてみようと。それで主人公像を考えてみたんですけど、なんかこれじゃない感がずっと拭えなかったんです。でもあるとき、「主人公をおじいちゃんにしたらどうだろう?」って思いついたら、すごくしっくりきたんですよ。しかも、おじいちゃんを描くのがすごく楽しい。
──どのあたりが楽しいんですか?
奥 全部楽しいですけど、顔とか体とか、それこそシワとか。
山本 ああ、シワ上手くかけると楽しいよね。
奥 もともとマンガの顔って記号っぽいじゃないですか。でも、おじいちゃんを記号化せず、ちゃんと筋肉とか骨格を意識しながら描いてみたら楽しくて。記号じゃない絵を描けることがうれしいんですよね。
──かわいい女の子やかっこいい男の子は記号的、と。
奥 記号なんですよね、やっぱり。
山本 記号じゃないように気を付けるけど、つい記号になっちゃうよね。
奥 そうですね。それに、このおじいちゃんを主役にしたマンガである程度人気も取れたら、それはすごいことじゃないですか。「主人公は美形じゃなくてもいいんだ」って証明できれば、きっとマンガの地平も広がるし。ちょっと実験的にやってみたかったんですよね。まあ人気出なかったら「ああ、やっぱり駄目だったんだ」って感じで諦める(笑)。また戻すだけですね。
──1話ではおじいちゃん出ずっぱりで、女の子もほぼ出てこないですしね。
奥 もう、エロなんか一切なし(笑)。
──今後もないですか?
奥 今後もないと思います。巨乳は1人も出てこないと思います。最後まで(笑)。
山本 新境地だねえ。
奥 新境地なんですかね……?(笑) 僕の中ではあんまり新境地って感じでもなくて、単純に「GANTZ」の次に描きたかったのがこれなんですよね。いや、描きたいっていうより見たいかな。もう女の子の裸がいっぱい出てくるのは見たくないやって。もしこんな映画があったら絶対見たい!って思う作品を描いてる感じです。
山本 読むのが楽しみだね。
奥 山本先生も毎号連載がんばってくださいね(笑)。
山本 うん(笑)。
「いぬやしき」連載開始直前企画!トリビュートイラスト「わたしのいぬやしき」収録
参加作家
雨隠ギド、上条明峰、木多康昭、久保保久、鈴木央、濱田浩輔、Boichi、真島ヒロ、山本直樹、山本英夫、よしながふみ
「イブニング 2014年4号」 2014年1月28日発売 / 講談社 / 350円
奥浩哉(おくひろや)
1967年9月16日福岡県福岡市生まれ。山本直樹のアシスタントを経て、1988年に久遠矢広(くおんやひろ)名義で投稿した「変」が第19回青年漫画大賞に準入選、週刊ヤングジャンプ(集英社)に掲載されデビューとなった。以降、同誌にて不定期連載を行い、1992年よりタイトルを「変 ~鈴木くんと佐藤くん~」と変え連載スタート。同性愛を題材とした同作は道徳観念を問う深い内容で反響を呼び、1996年にはTVドラマ化されるヒットを記録。マンガの背景にデジタル処理を用いた草分け的存在として知られ、2000年より同誌にて連載中の「GANTZ」はスリルある展開で好評を博し、アニメ、ゲーム、実写映画化などさまざまなメディアミックスがなされた。 2014年よりイブニング(講談社)にて「いぬやしき」の連載を開始する。
山本直樹(やまもとなおき)
1960年2月北海道生まれ。早稲田大学教育学部国語国文学科卒。大学4年生の時に小池一夫主宰の劇画村塾に3期生として入門しマンガ家を志す。1984年に森山塔の名義で自販機本ピンクハウス(日本出版社)にて「ほらこんなに赤くなってる」でデビュー。同年、山本直樹名義でもジャストコミック(光文社)にて「私の青空」でデビューした。森山塔のほか塔山森の名義でも成人向け雑誌や青年誌などで活躍。1991年には山本直樹名義で発表した「Blue」の過激な性描写が問題となり、東京都条例で有害コミック指定され論争になった。1992年、石ノ森章太郎が発起人となり結成された「コミック表現の自由を守る会」の中核として活発な言論活動を行いマンガの表現をめぐる規制に反対。その後も作風を変えることなく「YOUNG&FINE」「ありがとう」「フラグメンツ」など数々の問題作を発表した。早くから作画にコンピュータを取り入れ、生々しさをともなわない硬質な筆致から女性ファンも多い。その他の代表作にカルト教団の心理を題材にした「ビリーバーズ」、連合赤軍の革命ドラマ「レッド」など。またマンガ・エロティクス・エフ(太田出版)のスーパーバイザーを務めている。