「ソードアート・オンライン アリシゼーション」×「とある魔術の禁書目録Ⅲ」|「SAO」と「とある」が交差する炎の5番勝負!

アニメに適した小説の描写もある(鎌池)

──「とある魔術の禁書目録」「ソードアート・オンライン」はともにこれまで多数のアニメが作られてきましたが、小説に影響していることはありますか?

鎌池 アニメはキャラクター同士の距離感や背景がしっかりと描写されるから、すぐさまフィードバックされますね(笑)。学園都市にある風力発電のプロペラの大きさとか、序盤とアニメ放送後ではスケール感が少し変わっているかもしれません。

「ソードアート・オンライン アリシゼーション」第1話より。

川原 僕はもともと原稿を書いているときにキャラクターの声が聞こえない人間でしたが、アニメ化してからはキャラクターがアニメの声でしゃべるようになったんです。だから文字ではなく、音になったときを考えてセリフを書くようになって、会話の間や呼吸感が少し変わったと感じています。あと「アニメ化前提でラノベを書く」ことはあまりいい創作姿勢じゃないと思われがちですけど、僕は逆にアニメ化を狙うなら最初からその前提で書いたほうがいいと思います。だってラノベを脚本にするとき、原作の説明シーンがとにかくつらいんですよ。なんの動きもなく、同じ場所でひたすら会話をしているシーンなんて脚本にしようがない。

上条当麻

鎌池 やっぱりアニメに適した小説の描写というのもありますよね。ジャンプしながらいろいろ叫ぶとか時間的に無理だし、2メートルの刀なんて出したって画面に入らないんだから……猛省します(笑)。

一同 (笑)。

──「アリシゼーション」第1話の後半では、喫茶店でキリトが新たな仮想世界《アンダーワールド》について説明しているシーンがあります。あの場面は画面が単調にならないよう工夫が凝らされていました。

「ソードアート・オンライン アリシゼーション」第1話より。キリトが《アンダーワールド》について語る様子が、さまざまなカットを挟みながら描かれる。

川原 あそこ、絵コンテを切られた小野監督もすごい苦労されたと思います。なんの動きもない説明ばかりのパートをいかに面白く読ませるかが小説の面白さだったり腕の見せどころだったりするんでしょうけど、アニメ化を狙うならやめておけとこの機会に言っておきたい。脚本になったときに苦労するのは自分ですから。

鎌池 射撃演習場で会話をしたり、ご飯を食べながら会話したり何かしら動きを持たせるべきですよね。単なる立ち話が一番大変でしょうし(笑)。

──動きを付けるという話とは真逆の話になるかもしれませんが、小説のよさのひとつに心理描写や細かな設定の描写があると思います。でもそういった部分がアニメでオミットされるのがもったいないと感じることが個人的にはあります。もちろんアニメ制作側が最大限の努力をされているのは重々承知しているのですが、著書で「ラノベはメディアミックスの1次コンテンツとして非常にすぐれている」とおっしゃっている三木さんは、その辺りどう感じますか?

三木 媒体によって得意とする描写が変わるし、それぞれ違った楽しみ方があっていいと思いますよ。例えば「オデッセイ」というSF映画があって、原作はアンディ・ウィアーの「火星の人」というSF小説です。この作品は映画を観ただけだとわからないところがたくさんあって、原作を端折ったところも山ほどある。だから小説のほうは「なるほど、ここはこういうことだったのか」と興味深く読めました。ですがその一方で、小説から読むとまったく興味を持てなかっただろうなとも思えます。だって、「火星に取り残されている」とか言われても火星なんて想像できないし、宇宙船○○号がここにあると言われても形も何もわからない。だからビジュアルに特化し、音楽も音声も完備された、でも本編小説のダイジェスト版である映画「オデッセイ」から入れてよかった。……そんな感じで、アニメと小説はそれぞれの得意な描写に特化している方が、結果的には多くの人がその世界をより楽しめると思います。

──月並みですが、アニメを観て気に入ったら小説を読んでみようということですね。それでは10月から始まっている「とある魔術の禁書目録Ⅲ」と「ソードアート・オンライン アリシゼーション」について伺います。それぞれ注目ポイントを教えてください。

「とある魔術の禁書目録Ⅲ」より。

鎌池 久しぶりに上条の「その幻想をぶち壊す」が聞けるのと、これまで以上にスケールが大きくなるからそこが楽しみですね(笑)。

三木 「とある魔術の禁書目録Ⅲ」では人気のキャラクターがいろいろと出てきますが、鎌池さん的に注目のキャラクターとかいれば。

鎌池が注目キャラクターとして挙げた「とある魔術の禁書目録」後方のアックア。

鎌池 アックアでしょうか。あの世界の中では正統派のキャラクターなので、本格的に戦うとどんなふうに見えるかちょっと気になる(笑)。

三木 神の右席に注目と。

──「ソードアート・オンライン アリシゼーション」はいかがでしょう?

川原 PVや第1話を観て感じてくださった人もいると思うんですけど、劇場版から同じスタッフにやってもらっているおかげもあって音響や撮影処理にすごく力が入っています。グラデーションの感じやフィルターとかにも注目してほしいです。それと今までのレギュラーキャラクターがあまり出てこないけど、その分、新キャラクターを応援してほしいです。

  • ユージオ
  • アリス

──Webで連載されていたとき、キリト以外のメインキャラクターを刷新するということに迷いなどはありましたか?

川原 当時は好き勝手に書きたいものをひたすら書いていたので、特に迷いはありませんでした。それが今になってアニメ化するということで、「ああしておけばよかった」という部分もありますけど(笑)。今となってはしょうがないことですから。

──「とある魔術の禁書目録Ⅲ」もかなり前に書かれた原作がアニメ化されるわけですが、「ああしておけば」ということはありますか?

鎌池 少し話は違いますが、科学技術が追いつかないかすごく怖いです。AIスピーカーとか、あのときはまるで想像していませんでしたし。しゃべったら部屋の電気が点いて音楽が流れるとか意味がわかんなかったのに。

三木 SFの世界の話でしたよね。

新作では2人の格だからこそのアプローチを(三木)

──最後に今後の作家活動への意気込みをお聞かせください。

川原 これまでインタビューで目標を聞かれたら常に「10年生き残ること」と言っていたんですけど、来年で10年なんですよ。「10年までは新人」「新人なんでまだよくわからないです」みたいなこと言ってたのに。

三木 それも図々しい(笑)。学割を30歳ぐらいまで受けるみたいな。

川原 いやいや、この業界では10年なんてまだペーペーでしょう。

三木 10年は長いですよ! 中堅にはなっている。

「ソードアート・オンライン」小説第20巻

鎌池 少なくとも「期待の新人」はもう使えない(笑)。

川原 何にせよいよいよ10年が来てしまうので、目標は単純に20周年まで生き残ること。あと、僕はデビューした頃は編集部に行くときにすごく緊張していたんですよ。それが最近はもうなくなって。

三木 いいことじゃないですか。

川原 よくないですよ。いろんな偉い人と挨拶するようになって、たぶん自分では気付かないところで慣れてしまっているんですよ、悪い意味で。尊大になっている。だから改めて気を引き締めていきたいです。

──続いて鎌池さんお願いします。

「新約 とある魔術の禁書目録」小説第21巻

鎌池 今っていろいろと発表の場が増えているじゃないですか。例えばTwitter小説とか。でも自分は、自分がそれなりに作ってきた紙の本を足場にしてあっちこっちで挑戦したいなという思いがあるので、自分の根っこにあるそれがなくならないようにがんばりたいです。

三木 ちなみに来年は「とある魔術の禁書目録」の原作小説が15周年なので、盛り上げていきたいですね。

川原 紙のライトノベルに関して言うと、まったく新しいシリーズを始める難しさは増しているでしょうね。僕もいつかは「アクセル・ワールド」も「ソードアート・オンライン」も終わって新作を立ち上げなきゃいけないんでしょうけど、今から「つらいだろうな」と思っています。

三木 確かに「大丈夫、つらくないです」とは言えなくて。ライトノベルの新刊って増え続けていて、2018年6月は200冊以上あったそうです。つまり大ヒット作が1冊あっても全体の0.5パーセント。しかもそれは紙で出ているものだけで、同じタイミングでアマチュアの人が書いて発表した新作だってたくさんあるから、小説だけでも時間の奪い合いはこれまで以上に熾烈になっていくでしょう。そんな状況で、過去にヒット作を書いたからといって大きなアドバンテージができるかというと難しい。

──何か打開策などはありますか?

三木 これはあくまで僕がおぼろげに考えているだけで、おふたりにやってほしいというわけではないですけど、ヒット作を書いたことがある人だからこそできることってあるんですよ。例えばオリジナルの劇場アニメを監督できる人とできない人って、物理的な意味ではなく「期待されているそのステージに立っているかどうか」という雰囲気ってあって、いわば「この人の劇場アニメ作品を観てみたい!」と思わせる格がある。そうやって成功を重ねた人は、例えば細田守さんみたいにビッグになっていきます。僕は鎌池さんと川原さんは、小説の業界の中でそういう「格」があると思っています。ですので、新作を電撃文庫でガッツリと発売するということもできるけども、それ以外のアプローチを考えることもできる。たとえば媒体の宣伝チャンネルを増やすとか、お金をもっと投入するとか、もしくは媒体を変えて小説ではなくリッチコンテンツにするか……いろいろと考えられますが、この2人ならそういったバッターボックスに立つチャンスが少なくとも1回はあると考えていますので、ただ濫造されてしまう出版業界の中で、次はそういった挑戦をしてみるのもいいかもしれません。

TVアニメ「ソードアート・オンライン アリシゼーション」

パッケージ情報
Blu-ray / DVD
「ソードアート・オンライン アリシゼーション Vol.1」
2019年1月30日発売 / アニプレックス

完全生産限定版 [Blu-ray]
9504円 / ANZX-14241

Amazon.co.jp

完全生産限定版 [DVD]
8424円 / ANZB-14241

Amazon.co.jp

完全生産限定版特典
  • 原作者・川原礫書き下ろし新作短編小説
  • キャラクターデザイン / 総作画監督・鈴木豪描き下ろしジャケット仕様
  • 特製ブックレット(12P)
  • 特典CD(キャラクターソング収録)
  • 映像特典:PV・CM集
  • 音声特典:オーディオコメンタリー
オープニングテーマ
LiSA 「赤い罠(who loves it?) / ADAMAS」
2018年12月12日発売 / SACRA MUSIC

初回限定盤 [CD+DVD]
1728円 / VVCL-1370~1

Amazon.co.jp

通常盤 [CD]
1296円 / VVCL-1372

Amazon.co.jp

期間生産限定盤 [CD+DVD]
1728円 / VVCL-1373

Amazon.co.jp

エンディングテーマ
藍井エイル「アイリス」
2018年10月24日発売 / SACRA MUSIC

初回限定盤 [CD+DVD+フォトブック]
1944円 / VVCL-1350~2

Amazon.co.jp

通常盤 [CD]
1296円 / VVCL-1353

Amazon.co.jp

期間生産限定盤 [CD+グッズ]
1404円 / VVCL-1354

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TVアニメ「とある魔術の禁書目録Ⅲ」

イベント情報
「とある魔術と科学の大博覧会<エキスポ>」

会期:2018年11月3日(土)~11月25日(日)
営業時間:10:00~20:00
会場:西武渋谷店 Movida(モヴィーダ)館6階

「振返り上映会&キャストトークイベント」

日時:2018年11月3日(土)開場13:30、開演13:45
会場:東京・立川 シネマ・ツー
出演:阿部敦、井口裕香

パッケージ情報
Blu-ray / DVD
「とある魔術の禁書目録Ⅲ Vol.1」
2018年12月26日発売
NBCユニバーサル・エンターテイメントジャパン

初回限定盤 [Blu-ray+CD]
8424円 / GNXA-7381

Amazon.co.jp

初回限定盤 [DVD+CD]
7344円 / GNBA-7841

Amazon.co.jp

初回限定版特典
  • 原作者・鎌池和馬書き下ろし小説「とある科学の超電磁砲SS(3)」
  • キャラクター原案・はいむらきよたか描き下ろしデジパック仕様
  • 解説マニュアル(12P)
  • 特典CD「オリジナルサウンドトラック1」
  • 映像特典:特典アニメ、ノンテロップOP&ED
  • 音声特典:オーディオコメンタリー1話分
オープニングテーマ
黒崎真音「Gravitation」
2018年11月21日発売
NBCユニバーサル・エンターテイメントジャパン

初回限定盤 [CD+DVD]
1944円 / GNCA-0545

Amazon.co.jp

初回限定アニメ盤 [CD+DVD]
1728円 / GNCA-0546

Amazon.co.jp

通常盤 [CD]
1296円 / GNCA-0547

Amazon.co.jp

エンディングテーマ
井口裕香「革命前夜」
2018年11月21日発売
ワーナー・ブラザース ホームエンターテイメント

アーティスト盤 [CD+DVD]
1944円 / 1000735132

Amazon.co.jp

アニメ盤 [CD+DVD]
1944円 / 1000735133

Amazon.co.jp

通常盤 [CD]
1296円 / 1000735134

Amazon.co.jp

「ソードアート・オンライン アリシゼーション」
放送情報

TOKYO MX:毎週土曜24:00~

とちぎテレビ:毎週土曜24:00~

群馬テレビ:毎週土曜24:00~

BS11:毎週土曜24:00~

MBS:毎週土曜27:08~

テレビ愛知:毎週月曜26:05~

AT-X:毎週月曜22:30~ ※リピート放送あり

※放送日時は変更となる場合あり。

ストーリー

原作小説9巻から18巻にわたる、「SAO」シリーズ最長の《アリシゼーション》編を全4クールで描くTVアニメ第3期。
気がつくと、見覚えがないファンタジーテイストの仮想世界にログインしていたキリト。ログイン直前の記憶があやふやなまま手がかりを求めて辺りをさまよう中で、彼はNPC(ノンプレイヤーキャラクター)のユージオと出会う。仮想世界の存在であるにも関わらず人間と同じ感情の豊かさを持つ、その不思議な少年と一緒にゲームからのログアウト方法を模索するキリト。そんな中で彼の脳裏には、本来あるはずのない幼少期のキリトとユージオ、そして金色の髪を持つ少女・アリスの記憶が蘇る……。

スタッフ

原作:川原礫(電撃文庫刊)

原作イラスト・キャラクターデザイン原案:abec

監督:小野学

キャラクターデザイン:足立慎吾、鈴木豪、西口智也

助監督:佐久間貴史

総作画監督:鈴木豪、西口智也

プロップデザイン:早川麻美、伊藤公規

モンスターデザイン:河野敏弥

アクション作画監督:菅野芳弘、竹内哲也

美術監督:小川友佳子、渡辺佳人

美術設定:森岡賢一、谷内優穂

色彩設計:中野尚美

撮影監督:脇顯太朗、林賢太

モーショングラフィックス:大城丈宗

CG監督:雲藤隆太

編集:近藤勇二

音響監督:岩浪美和

効果:小山恭正

音響制作:ソニルード

音楽:梶浦由記

プロデュース:EGG FIRM、ストレートエッジ

制作:A-1 Pictures

キャスト

キリト(桐ヶ谷和人):松岡禎丞

アスナ(結城明日奈):戸松遥

アリス:茅野愛衣

ユージオ:島﨑信長

「とある魔術の禁書目録Ⅲ」
放送情報

AT-X:毎週金曜22:00~ ※リピート放送あり

TOKYO MX:毎週金曜24:30~

BS11:毎週金曜24:30~

MBS:毎週土曜27:38~

※放送日時は変更となる場合あり。

ストーリー

TVアニメ2期より、8年ぶりの放送となる第3期。原作小説がひとつの区切りを迎える、“神の右席”との激しい戦いが描かれていく。
上条当麻は超能力開発が行われている巨大な学園都市に住む高校生。自分の右手に宿る、異能の力ならなんでも打ち消す「幻想殺し(イマジンブレイカー)」のせいで、不幸まっしぐらの人生を送っていた。そんな上条は、インデックスという少女に出会ったことから、学園都市を統べる「科学」サイド、インデックスに連なる「魔術」サイド双方の事件に巻き込まれていく。そして、ついには魔術サイドの十字教最大宗派のローマ正教が、上条の存在に目を向けることに……。

スタッフ

原作:鎌池和馬(電撃文庫刊)

キャラクター原案:はいむらきよたか

監督:錦織博

シリーズ構成:吉野弘幸

キャラクターデザイン:田中雄一

美術監督:黒田友範

色彩設計:中村真衣、安藤知美

撮影監督:福世晋吾

編集:西山茂(REAL-T)

音響監督:山口貴之

音楽:井内舞子

制作:J.C.STAFF

キャスト

上条当麻:阿部敦

インデックス:井口裕香

御坂美琴:佐藤利奈

アクセラレータ:岡本信彦

浜面仕上:日野聡

川原礫(カワハラレキ)
第15回電撃小説大賞《大賞》受賞。2009年2月、受賞作「アクセル・ワールド」にて電撃文庫デビュー。別名義にてオンライン小説も自身のホームページにて発表しており、その作品「ソードアート・オンライン」を2009年4月より電撃文庫から刊行開始。2012年には、両作品がアスキー・メディアワークス創立20周年記念作品としてTVアニメ化された。2018年10月からは、「SAO」アニメ第3期が放送されている。
鎌池和馬(カマチカズマ)
2004年4月に「とある魔術の禁書目録」を上梓してデビュー。同シリーズはコミカライズ、アニメ化、ゲーム化、劇場映画化と数々のメディアミックスを果たし、名実ともに電撃文庫を代表する作家となる。「とある」シリーズ以外にも多くのシリーズを持ち、驚異的な刊行ペースで作品を生み出し続けている。2018年10月からは「とある魔術の禁書目録」アニメ第3期が放送されている。
三木一馬(ミキカズマ)
2016年4月にKADOKAWA アスキー・メディアワークス電撃文庫編集長を退職し、株式会社ストレートエッジを設立。鎌池和馬、川原礫の担当編集とアニメプロデューサーを務める。他担当作として、「灼眼のシャナ」「魔法科高校の劣等生」「俺の妹がこんなに可愛いわけがない」など。著作として「面白ければなんでもあり 発行累計6000万部──とある編集の仕事目録」がある。