コミックナタリー Power Push - 「アイドリッシュセブン」
キャラクターデザイン原案 種村有菜が語る初めての挑戦
スマートフォン向けアイドル育成アプリ「アイドリッシュセブン」が8月下旬にリリースされる。プレイヤーが7人のアイドルとともにアイドル界の頂点を目指す、フルボイスの本格リズムアクションゲームだ。キャラクターデザインの原案は、少女マンガ家として活躍する種村有菜が担当している。
コミックナタリーではリリースに先駆け、種村へのインタビューを敢行。初めての挑戦に対する心境や、そこから得たもの、また自身が手がけた「アイドリッシュセブン」のキャラクターたちへの思いを聞いた。
取材・文/熊瀬哲子 撮影/笹森健一
不安しかなかった
──「アイドリッシュセブン」のリリースと、キャラクターデザインの原案を種村さんが務めているという情報が発表された日はかなり話題になりましたね(参照:キャラ原案は種村有菜!男性アイドル育成&リズムゲーム「アイドリッシュセブン」)。
私が想像していた以上の反響があって、ちょっとびっくりしました。
──オファーをもらったときはどんな心境だったんでしょうか。
とにかく「やってみたい!」って興味がわきました。私が絵を描いて、アニメーターさんがそれをゲーム用の絵に落としこんでくださって、音楽がついて、シナリオができて……こういったいろんな人の力が合わさってひとつのコンテンツを作り上げていくっていうお仕事は初体験だったので、新鮮ですごく楽しかったです。勉強にもなりましたし、純粋に絵描きとしてだけの力を求められて、醍醐味のようなものも感じました。……でも正直お仕事の依頼をいただいてからはずっと不安で。不安しかなかったです。
──えっ。それはなぜでしょうか?
まず私でいいのかなって。期待されているものに見合ったものが提出できるのか、画力が足りてるのか。そういう危惧がまずあって。
──種村さんがそんなことを言ったら……。
いやいやいや、本当に。今まで私が培ってきた画力と経験を毎日試されてるなって感じました。もちろんバンナム(バンダイナムコオンライン)さんは「大丈夫です」っておっしゃってくれるんですけど、提出したあとも「ああ……」って落ち込むぐらいで。これが発表されたら私はもう生きていけないって、ずっとそんなふうに思ってたんです。でもメインテーマの「MONSTER GENERATiON」の完成した音源をいただいて。それを初めて聴いたときに本当に心から安心したというか。この曲のおかげで私は許された、もう大丈夫だって思って、聴きながら思わず号泣しちゃいました(笑)。
──そんな気持ちでいらしたなんて意外です。
担当さんだったり、アシスタントさんもいてくださるんですけど、マンガは1人で描いてるものなので。物語やキャラを1人で作って“種村有菜”という名前で発表してるから、仮にコケたとしても自分の責任にすれば済むんですよ。でもゲームはたくさんの人が関わっていて、それを私1人の失敗で足を引っ張るわけにはいかない。だから迷惑をかけてしまうんじゃないかと、ずっと思ってました。
発表の日はずっとソワソワしてました
──それでは発表の日もさぞかし緊張されたかと思うのですが……。
私その日寝付けなくて、夜中の0時半に起きたんですよ。お昼の12時に発表って聞いて、早起きしなきゃと思って、前日は21時くらいに寝たんです。でも0時半に起きちゃって。「お前どんだけ楽しみなんだよ」って(笑)。そのあともずっとソワソワソワソワしてました。
──12時間近く(笑)。
「ああもうどうしよう、どうしよう」って、お昼の12時になったら私どうなっちゃうんだろうって、気が気じゃなかったですね。
──ファンの方からの反応の中には「種村さんがデザインに関わっているゲームならやってみたい」というものも多く見受けられました。
本当ですか! そう言ってもらえてうれしいです。まだまだ捨てたもんじゃないですね。
メガネをかけて踊るって大丈夫なのかなって
──今回種村さんはキャラクターデザインの原案を務めていらっしゃいますが、制作についてどのあたりから関わっているのでしょうか。
それぞれのキャラクターの名前や性格、イメージカラーみたいなものまで細かく設定された資料をいただいて、そこからデザインを進めていきました。なので私が携わったのはほとんどキャラクターの見た目、外見の部分だけですね。違う人が考えたキャラクターを絵にするっていう作業はすごく新鮮でした。
──ちなみにIDOLiSH7のメンバーには1から7まで、TRIGGERのメンバーには8から10までの数字が名前に入っていますよね。デザインを考えた順番はこの数字順というわけでは……。
ないですね。一番最初にデザインしたのは二階堂大和くんです。大和くんは設定に“メガネ”とあって。ある程度縛りがあったほうが作りやすいので、一番イメージしやすかった彼から始めていきました。でもこの子たちアイドルグループじゃないですか。なのにメガネをかけて踊るって大丈夫なのかなって。
──確かに(笑)。
だからちょっと軽めというか、プラスチック素材のフレームで、でもしっかりした太さのものがいいかなとか。やたら機能的なことを考えちゃいました(笑)。
──ライブ中に怪我でもしたら危ないですからね。
あとはメガネってどうしても真面目で固いイメージがつきやすいかなと思うんですけど、大和くんはどちらかというと軽いノリの子なので、肩をノースリーブにしてハッチャケた感じを出しました。性格によって肌の露出の度合いも変わってきますね。例えば和泉一織くんはクールな性格の子なので、グループの中でも露出を控えたほうです。
──一織くんは和泉三月くんと兄弟という設定なんですよね。
そうなんです。なので最初にこの2人をデザインしたときは、髪の毛の色とかも全部似せて作ってたんですが、バンナムさんに「似せなくて大丈夫です」って言われて。結果三月くんはスポーティな感じに、一織くんはクールな感じになりました。
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アイドル育成アプリ「アイドリッシュセブン」
8月20日に配信が開始されたスマートフォン向けアイドル育成アプリ。プレイヤーが7人のアイドルとともにアイドル界の頂点を目指す、フルボイスの本格リズムアクションゲームだ。製作はバンダイナムコオンラインが、楽曲制作はランティスが務める。スマートフォンゲームを起点とし、コミカライズ、音楽CD、アニメ映像など各種メディアでの展開が予定されている。
種村有菜(タネムラアリナ)
1996年、りぼんオリジナル6月号(集英社)に掲載された「2番目の恋のかたち」でデビュー。1997年にはりぼんにて「イ・オ・ン」を初連載し、その後「神風怪盗ジャンヌ」が大ヒットを記録する。同作や「満月をさがして」はTVアニメ化もされた。詩的かつ印象的なセリフまわしや、こだわりのある美しい絵は、日本のみならず海外でも人気が高い。2011年にりぼんとの専属契約を終了し、フリーに。2013年にはマーガレット(集英社)で「猫と私の金曜日」を、メロディ(白泉社)では「31☆アイドリーム」をスタートさせた。
2015年8月20日更新