「劇場版アイナナ」に都志見文太&種村有菜は何を思う? 2人が見てきたアイドルたちの始まりから劇場ライブ開催まで

2015年にスマートフォン向けリズムアクションゲームから始まり、これまでTVアニメ、CD、ライブ、コミカライズなど多岐にわたって展開されてきた「アイドリッシュセブン」。そんな一大プロジェクトと化した同作による初の“劇場ライブ”「劇場版アイドリッシュセブン LIVE 4bit BEYOND THE PERiOD」が、2DAYSという形態をとり、満を持して劇場公開される。5月20日に<DAY 1>、21日に<DAY 2>、22日以降は<DAY 1><DAY 2>の両方を上映。アプリのメインストーリー第6部で語られた、IDOLiSH7、TRIGGER、Re:vale、ŹOOĻのメンバー16人が一堂に会する夢のライブが披露される。

コミックナタリーでは、劇場版の公開を記念し、「アイナナ」の脚本を担当する都志見文太、キャラクター原案を手がける種村有菜の対談をセッティング。最初期から作品に携わってきた2人は、劇場ライブを観て何を感じ、どう受け止めたのか。その注目ポイントはもちろん、最初にオファーを受けてから現在までの印象に残っている出来事、2人にとって「アイナナ」のアイドルたちはどんな存在か、プロジェクトの魅力、インスピレーションの源など、劇場ライブ開催までの歩みを辿りながら幅広く聞いた。

取材・文 / 酒匂里奈

「劇場版アイドリッシュセブン LIVE 4bit BEYOND THE PERiOD」本予告公開中

壁に缶バッジを貼る広告には度肝を抜かれました(種村)

──まずは「アイドリッシュセブン」のシナリオ、キャラクター原案のオファーをもらった当時の心境を教えてください。

種村有菜 ずっとキャラクターデザインのお仕事をやってみたかったのでうれしい気持ちが半分、それまで世間で評価いただいていたのは女の子のキャラクターだったので、「男の子のアイドルを私が描いて大丈夫!?」という不安が半分でした。

都志見文太 仕事をしている中でバンダイナムコオンラインさんの名前をいろいろな場所で聞いていたので、二つ返事で引き受けました。当時は社会心理学に興味があったので、アイドルというテーマでヒューマンドラマが描けるのではないかと思って。私のところに話が来たときはまだ企画が走り出したタイミングで、そこまで大きいプロジェクトになる想定ではなかったと思うんですけど、種村先生の参加が決まってから変わったんじゃないかなと思います。

アプリ「アイドリッシュセブン」第1部より、深川可純による“撮り下ろし”キービジュアル。

アプリ「アイドリッシュセブン」第1部より、深川可純による“撮り下ろし”キービジュアル。

アプリ「アイドリッシュセブン」第1部より、種村有菜による“撮り下ろし”キービジュアル。

アプリ「アイドリッシュセブン」第1部より、種村有菜による“撮り下ろし”キービジュアル。

──当時は今のような多角的な展開をする一大プロジェクトになることは想定していなかったと。

種村 いただいた企画書に「いろいろなメディア展開を想定しています」「アニメ化を目指しています」と記載されていたので、アニメ化が最初の目標なのかなと思っていました。でも今や予想外の企画がどんどん立ち上がっていってるので、そのたびに「えー! そんなことやるの!」と驚いています。自分が携わっていない企画はマネージャー(「アイドリッシュセブン」ファンの呼称)さんへの発表と同時に知るので。

──これまでに行われた企画や展開の中で、特に驚いたものはなんですか?

種村 ゲームリリース当時の、壁に缶バッジを貼る広告には度肝を抜かれましたね(参照:種村有菜キャラデザ「アイドリッシュセブン」新宿で缶バッジ配布、グッズも)。思えばこのときからスタッフさんたちはサプライズ好きだったんだなと。

都志見 1つひとつの企画が思い出深いのですが、自分が一番驚いたのはアニON STATIONさんで行われたミュージックビデオを上映する企画。みんながMVを観ながらライブハウスにいるみたいにペンライトを振る光景を見て、「アイドリッシュセブン」が好きな人たちが1つの場所に集まるとこんなに熱気で満ちるんだと感動しました。

物語のためにキャラクターを動かさない(都志見)

──「アイドリッシュセブン」に携わるうえで、「ここは大切にしている」「ここはブレないようにしている」という認識や、ご自身の信条はありますか?

種村 「アイナナ」に限らず心がけていることなんですけど、表情やポーズなどの品のよさは保つようにしています。悪い面が必要なときもワイルドなニュアンスになるようにして、あまり下品にはならないように心がけていますね。

都志見 私も「アイナナ」に限った話ではないですが、「物語のためにキャラクターを動かさない」ということは大事にしています。例えば「このキャラクターは納得しないだろうけど、こういう展開にしたいから納得させちゃおう」とか、そういう無理強いはしないように。「アイナナ」は登場人数が多いので大変なんですけど、それぞれの考えていることや大事にしていることは丁寧に描いています。

「劇場版アイドリッシュセブン LIVE 4bit BEYOND THE PERiOD」より、IDOLiSH7・七瀬陸。

「劇場版アイドリッシュセブン LIVE 4bit BEYOND THE PERiOD」より、IDOLiSH7・七瀬陸。

──プロデューサーの方とディスカッションして作業を進めていくと思うのですが、話し合いの中で「ここは譲れないのでこうしたい」とご自身の意見を伝える場面はありますか?

種村 納得できないことは率直に伝えるようにしています。言葉より絵でイメージしていただいたほうが伝わりやすいので、プロデューサーを説得するときは、必ずラフなり材料を用意して説明するようにしています。

──ご自身の思っていることを絵に描き起こしてしっかりお伝えするということですね。都志見先生はいかがでしょうか?

都志見 だいたいこちら側からアイデアを提案することが多くて。プロデューサーさんが迷っているところがあれば、A、B、Cの案と、それぞれの案のメリットとデメリットを伝えることもあります。それは先ほどお話した登場人物に無理をさせないという話ではなくて、展開やちょっとしたフラグでいろいろなところに話が転がるので、ここで何を見せたいかというご相談はしますね。

──なるほど。ちなみにおふたりはプライベートで「アイナナ」について話す機会はありますか?

種村 割と「アイナナ」のことしか話してないですね。深川可純先生(アプリゲームとアニメのキャラクターデザインを担当)ともよく一緒にお話します。お泊まり会も何回もしていて。自分が知らなかったコラボ企画の感想を話しあったり、どこまで自分の作業が進んだか報告しあったり。

都志見 そのあたりはマネージャーさんと変わらないですよね。この前はみんなで一緒にうちわを作りました。

種村 ちょうど深川先生と文太先生と一緒にご飯を食べているときにミュージックビデオが完成して、3人で一緒に観たこともありますね。

「劇場版アイドリッシュセブン LIVE 4bit BEYOND THE PERiOD」より、TRIGGER。

「劇場版アイドリッシュセブン LIVE 4bit BEYOND THE PERiOD」より、TRIGGER。