今描いている最終章が、一番面白い
佐々木 御子柴先生にきちんと伝わってるかわかんないんですけど、実は今描いている過去編でも、クライマックスの部分で、マンガオリジナルでやろうとしているデカいことがあって……。
御子柴 オリジナル展開をやるというのは聞いています。自分としても、原作5巻は思い入れがありますし、完成度としても自信があるので、それをさらに面白くしてくれるというのは楽しみです。
佐々木 まだ詳しくは言えませんけど、このマンガで一番面白いところになるんじゃないかと思っています。さっき御子柴先生もおっしゃったように、コミカライズするうえで、小説の上にさらに“面白い”を乗せていかないと、僕の仕事としては果たせていないと思うので。毎回そういう部分を意識して入れてはきたんですけど、今回特にいいものができた。このクライマックスを読んでほしいから、そこまでの13巻を読んでくださいと言いたいくらい。だからぜひ、期待して待っていてください。
──楽しみです。ちなみにレイには“嫁候補”が複数いますけど、おふたりの推しは?
御子柴 推しかあ……難しい(笑)。うーん、意外とマリアが好きですね。レイとの相性がめっちゃいいなと思っているんです。王道のヒロイン3人はレイにメロメロな感じになっているんですが、マリアは友達としてざっくばらんな感じで話していて、自分としても書いていて楽しいキャラクターだなと。
──マリアが活躍する「大人力チェック」の回は、マガポケのコメント欄が印象的でした。マリアがレイをホテルに誘うところで終わるので、みんなそこを喜んでいるのかな?と思ったら、「ギトギト系のラーメンを食べた直後はちょっと……」というコメントばかり並んでいて。
御子柴 リアルな意見(笑)。
佐々木 あれはそう言わせるために描いたんで、狙い通りですね(笑)。この世界感に“ヤサイマシマシアブラカラメ”を出していいのか?とは悩んだんですけど。僕の推しヒロインはアリアーヌです。3章の終わりからの流れで過去編に入っちゃうのがスムーズかなと思って、このマンガではアリアーヌが活躍する原作4巻のエピソードを抜いてしまったんですけど、それでも推しヒロインです。僕は「天元突破グレンラガン」のニアみたいな、何を考えてるかわからないお嬢様系がどストライクでして……。アリアーヌは、レイに対してどうこうとは関係なく、いいキャラにしようと思っていました。
──個人的には3章終わりの、キャンプファイヤーのところのレベッカを見て、勝手に「正ヒロインが決まったな」と(笑)。
御子柴 わかります! あそこの表情マジですごかった。読んでいて「えーっ!」ってなりましたもん。
佐々木 ここはかわいく描かなきゃいけないですよ。3章は苦労した部分もありますけど、キレイにまとめられてよかったなと思っています。御子柴先生は、最終的にレイが誰を選ぶかは決めていらっしゃるんですか?
御子柴 一応決めています。
佐々木 ハーレムエンドではないんですね!(笑) よかった、僕も今考えているラストに向かって描き進められそうです。
一番は感謝を伝えたかった
──そろそろお時間ということで、最後に読者へ、ひと言ずついただけますか。
佐々木 御子柴先生も思い入れがあるとおっしゃっていた、僕も大好きな過去編。ここをピークに持ってきたいと思って、マンガの最終章とさせていただきました。面白くするためにいろんな演出を考えているんで、読んでくれたらうれしいです。あと読者の皆さんに言いたいのは、休載が多くてすみませんってことです。
御子柴 大変ですよね。最終章入ってからも、脚を骨折して、コロナにもかかって……。
佐々木 そういう事情もあって休載が多くなっちゃってるんですけど、なるべくしないようにがんばっているので、見守っていてください。
御子柴 本当にいつも応援ありがとうございます! 読者の方がいるから、創作を続けていけます。過去編、今日もお話ししましたが思い入れのある部分なので、マンガのいち読者として私も楽しみにしております。マンガ版のこれからにぜひ期待してもらいたいですし、小説とアニメでも楽しんでもらえたらうれしいです。
佐々木 御子柴先生とは今日この場で初めてちゃんとお話しさせていただきましたけど、ぜひ記録に残らない場でお酒を飲みながら、5時間くらい創作の話をしたいです。
御子柴 ぜひぜひ。私も佐々木さんと対談することになって、実はすごく緊張していたんですけど、一番は感謝を伝えたかったですね。担当さん含め、本当にいい作品を作ってもらっていて、めちゃくちゃ感謝しているんです。毎週ネームが届くたびにうれしくて、いまだにニコニコしながら読んでいるんです。本当にいつもありがとうございます。
佐々木 僕のほうこそ、御子柴先生の原作を扱わせていただいてありがとうございます。今日すごく楽しかったんですけど、何よりホッとしました(笑)。原作と違う展開にされたら嫌だという作家さんもいるでしょうし、「コミカライズを担当するのが自分で、本当によかったのかな?」と、ずっと頭の片隅で考えていたので。それを今日、ちょっと払拭できたかな。今まで僕がやってきたこと、いい方向にしようとがんばってきたところを、肯定してくださったような気がして。
御子柴 「冰剣」の魅力を120%引き出してもらえてると思ってます、本当に。
佐々木 ありがとうございます! 最後までがんばって描いていきます。
プロフィール
佐々木宣人(ササキノリヒト)
1月25日生まれ。2020年6月よりマガジンポケットにて「冰剣の魔術師が世界を統べる~世界最強の魔術師である少年は、魔術学院に入学する~」を連載中。
御子柴奈々(ミコシバナナ)
10月22日生まれ。代表作「冰剣の魔術師が世界を統べる~世界最強の魔術師である少年は、魔術学院に入学する~」はWebサイト・小説家になろうで3000万PVを突破、2023年にTVアニメ化を果たしている。そのほか著作に「史上最高の天才錬金術師はそろそろ引退したい」「追放された落ちこぼれ、辺境で生き抜いてSランク対魔師に成り上がる」「七聖剣と魔剣の姫」など。