いよいよ2023年1月14日から放送・配信が始まるTVアニメ「火狩りの王」。人類最終戦争後の世界を舞台に、火を狩ることを生業とする「火狩り」と、運命に翻弄される少年少女の姿を描いたファンタジー大作だ。監督を「今日から㋮王!」「SAMURAI DEEPER KYO」の西村純二、シリーズ構成・脚本を「イノセンス」「GHOST IN THE SHELL / 攻殻機動隊」の押井守が務めることも話題である。
コミックナタリーではそんな「火狩りの王」の魅力を掘り下げるべく、主要キャストの久野美咲と石毛翔弥の対談に加え、早見沙織、細谷佳正の単独インタビューを実施。独特な世界で生きるキャラクターを演じるにあたり、どのように物語を読み解いたのだろうか……?
取材・文 / 太田祥暉(TARKUS)撮影 / 曽我美芽(久野美咲、石毛翔弥、早見沙織)、ヨシダヤスシ(細谷佳正)
キャラクター紹介
-
灯子(CV:久野美咲)
紙漉の村に暮らす11歳の少女。薬を探して禁じられた森に入り炎魔に襲われたところを、見知らぬ火狩りに助けられる。自分をかばって命を落とした火狩りの形見を家族に届けるため、首都へ向かう。
-
煌四(CV:石毛翔弥)
首都に暮らす15歳の元学生。優秀な頭脳の持ち主で、学院の特別生だった。母を工場毒で失い、火狩りである父は行方不明となり、幼い妹を抱えた煌四は、首都随一の富豪・燠火(おきび)家に身を寄せる。やがて燠火家の当主のもとで、極秘に雷火を使った兵器の研究を行う。
灯子役・久野美咲×煌四役・石毛翔弥 対談
原作の世界観を大切にしつつ、没入感を得られる役作りを
──「火狩りの王」について、第一印象はいかがでしたか?
久野美咲 原作が児童文学であるという情報を知ったうえで、読ませていただきました。そうしたら、子供向けに書かれているだけでなく、大人に向けても作られている重厚な作品だと感じましたね。一度読んだだけでは理解しきれなかった部分もあったので、繰り返し読んで世界観を掴んでいきました。その都度新しい発見もあったりして、とても想像力が駆り立てられるすばらしい作品だと思います。
石毛翔弥 僕は煌四という役を演じることが決まってから拝読したんですが、冒頭には彼自身が知らない衝撃的なシーンが描かれているんですよ。そこからすぐに作品の持つ雰囲気に飲み込まれました。客観的に読みながらどう演じるか考える、とかではなく、ひたすら身に情景が突き刺さってくると言いますか……。世界観に入り込める作品、というのが第一印象でしたね。
──おふたりとも原作を読まれているんですね。
石毛 はい。そのうえで、原作から物語のテーマや、煌四の性格、愛情、行動原理を読み解いていきました。
久野 「火狩りの王」の物語は灯子主観で描かれている部分が多くて、灯子を演じる身としては、彼女がそのとき何を感じて考えていたのかがわかりやすく、感情移入しながら読むことができました。読みながら感じたことは、この作品は感情の表現の仕方がとても独特だなということです。
──独特ですか。
久野 何か相手から言われた言葉や目の前で起きたことに対して、灯子の感情が描かれているだけでなく、その湧き起こった感情の結果、身体がどのような反応をしているのか表現されている部分がたくさんあるんです。たとえば、手が強ばるとか痺れるとか、視覚に白い光がちらちらとはぜるとか、心臓が跳ねるとか……。読んでいる私たちの五感にものすごく訴えかけてくるんです。こういった表現も、アニメーションになることで、よりこの作品の魅力になるのではないでしょうか。
──ますます放送・配信が楽しみですね。おふたりはすでに序盤のアフレコを終えられているとのことですが、久野さんは灯子、石毛さんは煌四という役を演じるうえで、どのようにキャラクターを作り込まれたのでしょうか?
久野 灯子は村で生まれ育った純朴な11歳の女の子なのですが、人見知りな性格のために、自分が考えていることや感じていることを相手に言葉で伝えることが得意ではありません。ですが何も考えていないわけではなくて、頭の中ではいろんなことを考えている、とても利口な子供なんです。なので、アニメで言葉が少なくなってしまうんですが、彼女がどんなことを考えているのかは原作にはびっしり書かれているんですね。だから発するセリフの中に、彼女が何を感じ考えているかを表現できるように、言い方や間の取り方を工夫したり、セリフとセリフの間に息のアドリブを入れたりしています。セリフとしては書かれていない、原作に描かれている灯子の抱いている感情や身体の反応、思考していることを台本に書き写してから、アフレコに臨んでいました。
石毛 「火狩りの王」は大ボリュームな原作から物語の主要な部分を描いてアニメ化した作品です。なので、煌四という役が登場するシーンがちょっとスピーディーになっていたりもします。そのときどんなことを彼が考えていたのかを探るために、久野さんと同じですけど、丁寧に心理描写が重ねられている原作を参考にして。そのうえで音響監督の若林(和弘)さんにその都度意見を伺うようにしていました。原作だとこうやって成長しているけれど、アニメの場合はまだ成長しきれていないほうがいいのか、みたいなやり取りを何回もして、役作りを深めていきましたね。
──音響監督の若林さんとのやり取りは、いかがでしたか?
石毛 若林さんは、そのシーンの行動によって、相手にどう影響を与えるのか、どう影響を受けるのかを丁寧に描くようにディレクションをしてくださるんです。なので、やり取りをしながら「そうやるのか!」と驚くこともかなりありましたね。
久野 とても丁寧にディレクションしてくださるんですよね。
──おふたりは一緒に収録される機会がけっこう多かったりしたんですか?
久野 そうですね。同じシーンのときは、一緒にかけ合いながら録らせていただきました。
──そのうえで、お互いのキャラクターや演技に対して、どういった印象を持たれているのでしょうか?
石毛 一緒に収録をするより前に、久野さん演じる灯子の後に煌四が出てくるシーンのアフレコをするときがあって。そのときに、久野さんのセリフから流してもらったんですが、セリフのニュアンスや息遣いがとてもリアルで、11歳の女の子が本当にそこにいると思うほどでした。先ほど久野さんがおっしゃられていたように、灯子は考えが纏まらず言葉で伝えるのが苦手なんですが、なんとか思いを伝えようとするんです。その機微みたいなものが繊細に伝わってくるように感じました。久野さんとは以前、「ゴジラ S.P <シンギュラポイント>」という作品でもご一緒しているんですが、そのときの演技とはまた異なっているのも新鮮でした。
久野 私は逆に、一緒のシーンを録るまで翔弥さんの演じる煌四の声を聞いたことがなくて。初めてマイクの前で演技を聞いたときに、「煌四だ!」と感動してしまいました! 翔弥さんとは「ゴジラ S.P <シンギュラポイント>」で初めてご一緒したのですが、そのときから役やお芝居に対する向き合い方が素敵な役者さんだなと思っていて。煌四はまだ15歳ですが、一緒に会話する大人が子供扱いしないような、そんな大人びた一面もある役で、その難しいバランスをしっかりと表現なさっていて、改めてすごいなって思いました。
──そんな演技もポイントだと思いますが、これから放送・配信が始まる「火狩りの王」の見どころをお教えいただけますか?
石毛 あたかも自分がこの世界にいるかのように、物語へ没入できる作品になっていると思います。文字で読んだときと同じ感覚を、アニメーションでも味わっていただけるはずです。ただファンタジーが楽しい、この先どうなっていくんだろうと煌四たちの活躍を追っているだけでも面白いと思います。
久野 人類最終戦争後という壮大な設定から始まりますし、ファンタジー要素が多いのですが、人間模様がとても丁寧に描かれているので、私たちの日常生活と重ね合わせて感じたり考えたりできる瞬間がたくさんあります。この「火狩りの王」の重厚な世界観にどっぷり浸かっていただいて、楽しんでいただけたらうれしいです。
プロフィール
久野美咲(クノミサキ)
1月19日生まれ、東京都出身。大沢事務所所属。主なアニメの出演作に「ひそねとまそたん」(甘粕ひそね役)、「世界征服~謀略のズヴィズダー~」(星宮ケイト役)、「ハッピーシュガーライフ」(神戸しお役)、「3月のライオン」(川本モモ役)、「ゴジラ S.P <シンギュラポイント>」(ペロ2役)、「七つの大罪」(ホーク役)などがある。
久野美咲 (@kuno_misaki0119) | Twitter
石毛翔弥(イシゲショウヤ)
8月20日生まれ、埼玉県出身。インテンション所属。主なアニメの出演作に「あやかしトライアングル」(二ノ曲宗牙役)、「その着せ替え人形は恋をする」(五条新菜役)、「ゴジラ S.P <シンギュラポイント>」(有川ユン役)、「惑星のさみだれ」(ルド=シュバリエ役)、「遊☆戯☆王VRAINS」(藤木遊作 / Playmaker役)などがある。