コミックナタリー Power Push - 「響け!ユーフォニアム2」監督・石原立也×原作者・武田綾乃対談
「働いたら負け」の時代に見せたかった、努力することの美しさ 全国大会に向けてラストスパート、北宇治ファイトォォー!
音でも絵でも追求した「響け!ユーフォニアム」らしさ
──アニメ版を作るにあたって、音の面でのこだわりは?
石原 音に関しては、音響さんがとても優秀な方々ばかりなので基本的にはお任せしています。ピストンを押したときの音とかああいった細かな音は、演奏とはまた別のところで録音して、それらを組み合わせています。あとは録った吹奏楽曲を後で演奏シーンに合わせて途中で切ったり、音を絞ったりといった方法もあり得るでしょうけれど「響け!ユーフォニアム」の場合はシーンに合わせてそれぞれ演奏を録っています。例えば練習シーンなら滝先生が「はい、やめて」と言ったらピタッと終わらず、みんなが割とバラバラと演奏をやめるとか。
──そのシーンに合った演奏になっていると。画作りの面で気をつけている点は?
石原 いろいろとありますが、一番はアニメ的な、ケレン味のあるアングルや派手なカット割は「響け!ユーフォニアム」に似合わないので、スタンダードなカメラワークを多くしているところです。それは特に2期に顕著で、わかりやすいのはオープニングでしょうか。2期はカメラを固定してそれほど派手に動かしていません。僕はそちらのほうがこの作品に合うと思っています。
──オープニングの話が出たのでエンディングについても伺います。2期のエンディングは、サビまではファンシーな雰囲気ですが、どういった意図でしょうか?
石原 エンディングに関しては、自由にやってもらいました。ただ、1期では割と青春感があったのに対して、2では楽曲と同じく卒業っぽい雰囲気になりましたね。どちらも画作りは女性に任せましたが、おかげでとてもかわいらしいものになったと思います。
──武田さんは好きな主題歌はありますか?
武田 その2期のエンディングですね。すごくかわいいし、チューバくん(作中に登場する楽器をモデルにしたマスコットキャラ)が好きなので「わあ、いっぱい出てる!」と(笑)。
石原 チューバくんは2期であまり本編に出ない分、エンディングに出てもらいました。
地元民も絶賛する2期1話の花火大会描写
──画作り以外に、1期から2期で路線変更した部分はありますか?
石原 1期を放送して、この作品はコミカルな面よりも、ハードな部活ものという側面のほうが望まれてるのかなと感じました。例えば1期2話とか割とギャグっぽい描写が多かったですけど、2期はそういうシーンはグッと減ってシリアスな方向にシフトしています。
──1期は8話がすごく評価が高かったですよね。その辺りにも視聴者の好みが見える気がします。
石原 そうですね。8話はもちろん物語的なひとつの山場だし、いつもの練習風景とは違うあがた祭りという場所を綺麗に描けたと思います。やっぱり女の子2人が真剣に話すシーンはいいですよね。2期の希美とみぞれの話もそうですけど。
──2期になって制作的に変わった点はありますか?
石原 まず、やりやすくなった点として、スタッフみんながキャラクターをちゃんと掴んでいることがあります。例えば第5話で久美子と梓が電話をしている場面がありますよね。そこで梓の手にミサンガが巻かれていますが、それは立華高校が舞台のシリーズ作で出てくるものなんです。色彩設計の竹田(明代)が「梓はミサンガを巻いていた方がいいですよね?」と指摘してくれて。そういった部分では、スタッフに助けられていますね。
──演奏描写のノウハウに蓄積があるというのも大きそうです。5話の「三日月の舞」フル演奏なんてすごかったですし。
石原 そう思われるでしょう? でも、やればやるほどハードルが上がっていきますから、そこは2期になってやりにくくなった点ですね(笑)。
──1期から2期まで、劇場版があったとは言え1年以上のブランクがありました。ただ、2期の1話が1時間スペシャルで、一気に勢いを取り戻しましたよね。
石原 あれは偶然の産物というか苦肉の策というか……2期はテレビシリーズとしては13週だったんですけど、シリーズ構成を考えていたらどうしても足りないという話になって。するとプロデューサーから「第1話を1時間スペシャルにしますか」って話が出たんですよ。スペシャル感もあったし、花火大会まで最初の放送で観せられてよかったですよね。あの花火大会、伝わりづらいかもしれませんが、かなり力を入れたんですよ。
武田 でも、宇治の人はみんな「あるある!」って言いながら感動していましたよ。宇治の花火大会って2014年で一旦終了してしまったんですが、私も、先行上映回で観せてもらったときに、花火大会の記憶がバーって蘇ってきました。
石原 あの花火大会は「源氏物語」をモチーフに花火が進行していくんですよね。第1幕、第2幕、第3幕と進んでいって……クライマックスの「光源氏は永遠に」ってアナウンスとかよかったですよね?
武田 それはもう! 内容なんて忘れていたのに、やっぱり毎年聞いていたのでアニメで観たら完全に思い出しました。あれが地元民としては一番感動したんですが、でも声優さんたちは花火大会の内容にあまりピンと来ていない様子だったので、地元民だけが分かる宇治あるあるだったんだなと(笑)。
石原 ただアニメの「響け!ユーフォニアム」の世界って、時系列になぞらえると2015年という設定なんですよね。課題曲に「プロヴァンスの風」があるし。実際には行われなかった花火大会を描きましたが、そこは物語ということで……。
武田 時空が歪みましたね(笑)。
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TOKYO MX1:水曜24:00~24:30
ABC朝日放送:水曜26:14~26:44
KBS京都:木曜25:30~26:00
テレビ愛知:水曜26:05~26:35
tsk:水曜25:00~25:30
BS11:木曜24:00~24:30
AT-X:金曜22:00~22:30
- Blu-ray / DVD「響け!ユーフォニアム2」1巻 / 2016年12月21日発売 / ポニーキャニオン
- 「響け!ユーフォニアム2」1巻
- Blu-ray Disc 7020円 / PCXE-50711
- DVD 6156円 / PCBE-55531
第1回「まなつのファンファーレ」(本編48分)
初回特典
- キャラクターデザイン池田晶子描き下ろし三方背特製 ケース/デジパック仕様
- 16Pスペシャルブックレット:パート日誌(低音パート)、キャラクター紹介、第1回解説、楽器設定、小物 設定、美術設定、スタッフコメント【石原立也(監督)】
- キャラクターデザイン池田晶子描き下ろしイラストカード(中川夏紀)
映像特典
- 未放送ショートムービー「花火大会キッスへようこそ!」
- WEB版予告映像
- ノンテロップOP/ED
- PV/CM集
音声特典
- キャストコメンタリー(黒沢ともよ×朝井彩加×豊田萌絵×安済知佳)
- スタッフコメンタリー(石原立也×池田晶子×山田尚子)
その他
- 日本語字幕
- 2017年3月12日開催スペシャルイベントチケット優先販売申込券(2017年2月6日申込締め切り)
舞台は北宇治高校吹奏楽部。高校に入り、クラスメイトの葉月からの熱烈なアプローチを受けて吹奏楽部に入った久美子。
久美子の高校の吹奏楽部は、5年前までは関西大会の常連で、過去に全国大会に出場したこともある強豪校だったが、顧問である山岡が他校へと移ってからは関西大会にすら進めていない。
再度の顧問交代を機に、再び高みを目指す部員たちの青春と奮闘、幼い人間関係の深化を、小気味よい演奏シーンとともに描いた、スウィング・青春小説!
石原立也(イシハラタツヤ)
アニメーション監督・演出家。京都アニメーション所属。監督作に「中二病でも恋がしたい!」「無彩限のファントム・ワールド」などがある。
武田綾乃(タケダアヤノ)
1992年、京都府生まれ。2013年、第8回日本ラブストーリー大賞隠し玉作品「今日、きみと息をする。」でデビュー。2作目の「響け! ユーフォニアム 北宇治高校吹奏楽部へようこそ」がアニメ化され話題に。ほかの著書に「響け! ユーフォニアムシリーズ 立華高校マーチングバンドへようこそ 前編・後編」、ユーフォシリーズのファンブック「響け! ユーフォニアム 北宇治高校の吹奏楽部日誌」(いずれも宝島社文庫)などがある。最新刊は「石黒くんに春は来ない」(イースト・プレス)。