コミックナタリー PowerPush - オノ・ナツメ「ふたがしら」
祝・ドラマ化&ヒバナで連載再開!真逆な2人の行く末は?
時代劇チャンネルは老後の楽しみにしておこうと思ってたのに
──「ふたがしら」のドラマ化が決まったときに、オノさんは「自分の作品が時代劇になることは大きな憧れだった」とコメントを出されていましたね。
ええ、時代劇好きなんです。TVドラマだと「鬼平犯科帳」「剣客商売」とか必殺シリーズとか。子供の頃、学校から帰るとよく再放送してましたよね。「水戸黄門」とか。他にも「大江戸捜査網」や「三匹が斬る!」は、TVつけて、やってたら観ちゃう感じでした。NHKの「人形劇 三国志」をついつい観ちゃう感じ(笑)。
──ああ、わかります。
「大岡越前」も再放送でやってたのを子供の頃にちょこちょこ観てたんですけど、第1シリーズは観たことなかったんです。それが去年、時代劇チャンネルで「大岡越前」を全シリーズ一挙放送していて。無料放送の1回目を観ちゃったんですよ。すっごく面白くて! すぐ契約しちゃいました。時代劇チャンネルは老後の楽しみにしておこうと思ってたのに(笑)。
──ははは(笑)。まんまと契約してしまった。
時代劇は観ていて、惚れる男が多いんですよね。例えば鬼平って周りの人や密偵からすごく惚れ込まれているじゃないですか。そういうのが時代劇にはある気がします。「鬼平犯科帳」の「一本眉」っていうお話があるんですけど、そのエンディングで、鬼平のかっこよさがすべて語られているんですよ。そんなにたくさん時代劇を観ているわけではないですけど、今まで観た中で一番。大好きな終わり方です。
──鬼平のかっこよさって、度量のデカさだったり、人間的に厚みがある、という感じですね。
そうですね。「男」のかっこよさ。それとはまたちょっと違って、かっこいい時代劇として浮かんだのは「江戸の激斗」ですね。大好きなんです。特にオープニングがめちゃめちゃかっこいいんですよ! 出てくる人たちは浪人たちの寄せ集めで、遊撃隊を作って野盗を秘密裏に倒していく。上手く説明できないけどかっこいい(笑)。若いなあという感じ。そのあたりは「ふたがしら」の2人に近いかもしれないですね。まだまだ成長途中の2人。
脇役のストーリーがどんどん思い浮かんでしまう
──オノさんは「さらい屋五葉」「ふたがしら」「つらつらわらじ」と、時代ものをずっと描かれていますが、そこには何かこだわりがあるんでしょうか?
たまたま重なっただけなんですよ。「五葉」は誘拐する人たちのグループを描く、というテーマがまず決まって、現在のイタリアか、江戸時代か、どちらを舞台にしようかと迷っていてたんです。それでイタリアはもう描いてたから、やったことのないところで描いてみようということになり、一度描いてみたかった江戸時代を。いまはアメリカを舞台にした新作を準備中なんですが、今度もまた重なっちゃいそうです(笑)。でも江戸もので描きたいものはまだまだあります。資料だけはちょこちょこ集めていて、いずれ描けたらいいなと思っています。
──「五葉」からは「ふたがしら」や「子連れ同心」が派生して。
あとは同人誌で「五葉」の外伝として萩生田道場主の話も描きましたね。そこと「つらつらわらじ」のキャラクターが繋がる話も続きを描きたいんですけど、いまは寝かせてる状態です。「ふたがしら」で出てきた夜坂の一味の物語も描いてみたいんですよね。描いてるとキャラクターが膨らんできて、本編では収めきれない。
──描いてると、脇役にもそれぞれのストーリーが思い浮かんでしまうんですね。
そうなんですよ! でもまずは「ふたがしら」の弁蔵と宗次の物語を追わないといけませんね。
──ヒバナではいよいよ「ふたがしら」の連載が再開されます。
ヒバナって「マックスになりたいテンションに『着火』する」っていうキャッチコピーが付いてますよね。「ふたがしら」って、マックスになるところも峠を越えて、消え行く炎を描いていく流れなので、雑誌名が決まったとき大丈夫かなって思ったんですけど(笑)、でも2人の行く末を最後まで見守っていただければ。と言ってもまだしばらくは続きます!
ふたりの頭(かしら)、立つ。その前途は?
大坂を離れて東へ戻ってきた弁蔵と宗次。頼りになる仲間を得たふたりは、満を持して自分たちの一味である「壱師」を立ち上げた。その初仕事は上々、勢いに乗る弁蔵だが、宗次の顔はなぜか晴れない。そんな中、かつての古巣・赤目一味が怪しい動きを始め……?
芸能界などにも多くのファンを持つ新感覚江戸活劇、待望の第五集刊行!
江戸の四季の中、父子のあたたかな日々。
気弱な同心・立花伊織。与力様に怒られたり、同心仲間に手柄をとられたりしつつも、町を見廻り治安を守る。そしてその傍らには、我が道をゆく息子・巳太郎の姿が。初鰹・七夕・煤払い・雪うさぎ……父ひとり子ひとりの日々を、四季の移ろいとともに描く1冊。
笑いたい、泣きたい、喜びたい、怒ってからスカッとしたい、シビれたい、憧れたい、惚れちゃいたい。
たった今の気持ちをたった今かなえてくれるキャラクターたち。
マックスになりたいテンションに「着火」する新しい青年コミック誌を、やります。
掲載ラインナップ
- 「雪花の虎」 東村アキコ
- 「アフターアワーズ」 西尾雄太
- 「コマさん~ハナビとキセキの時間~」 柴本翔
- 「しまなみ誰そ彼」 鎌谷悠希
- 「いかづち遠く海が鳴る」 野田彩子
- 「或るアホウの一生」 トウテムポール
- 「ドルメンX」 高木ユーナ
- 「椿と罪ほろぼしのドア」 長田亜弓
- 「461個の弁当は、親父と息子の男の約束。」 荒井ママレ/渡辺俊美
- 「スラップスティック」 青野春秋
- 「最近の赤さん」 とよ田みのる
- 「ロボッとうさん」 有永イネ
- 「三十路飯」 伊藤静
- 「ありごけ」 漆原ミチ
- 「ふたがしら」 オノ・ナツメ
- 「子連れ同心」 オノ・ナツメ
- 「あちらこちらぼくら」 たなと
- 「ロッタレイン」 松本剛
- 「ドロヘドロ」 林田球
別冊付録
「勇者たち」 浅野いにお
オノ・ナツメ
2003年、COMIC SEED!(ぺんぎん書房)にて「LA QUINTA CAMERA」でデビュー。ヨーロッパの雰囲気を上手に切り出した、小粋でアンニュイな人間模様を描き人気を博す。2009年に代表作「リストランテ・パラディーゾ」がテレビアニメ化、続いて2010年に「さらい屋五葉」がTVアニメ化される。2015年現在、ヒバナ(小学館)にて「ふたがしら」を、月刊ビッグガンガン(スクウェア・エニックス)にて「ACCA13区監察課」を連載中。そのほかの著書に「つらつらわらじ」「GENTE(ジェンテ)」「逃げる男」「COPPERS」「子連れ同心」などがある。