コミックナタリー PowerPush - オノ・ナツメ「ふたがしら」
祝・ドラマ化&ヒバナで連載再開!真逆な2人の行く末は?
弁蔵が鬼、宗次が仏になっていく経緯
──着地点が決まっているところに向かっていっている。
「ふたがしら」の弁蔵と宗次は、「五葉」の弁蔵と宗次とも全然違うので、どうしてそうなったか、というのも描きたいところだったんです。
──なぜ弁蔵が「鬼蜘蛛」、宗次が「仏」と呼ばれているのか。
鬼と仏になっていく経緯ですよね。最初、ご隠居(宗次)が仏だから、弁蔵は鬼かな、鬼に沿ったカッコいい二つ名ってなんだろうと思って「鬼蜘蛛」に決めたんですけど、「ふたがしら」描きながらなんで「蜘蛛」って付けたんだろうってずっと考えてて(笑)。ようやく4巻の最後で、弁蔵に蜘蛛の羽織を着せてみました。元々、派手なものが好きだから、着物を選ぶときも目立つものが好きだったってことにしようと。
──ようやく辻褄が合ったと(笑)。
あと弁蔵は描いてるうちに勝手に動き出したというのはありますね。勝手に動いてくれるから描きやすい。ネームやってるときも、悩まないです。はじめのうちは「こういうキャラで」とか設定を決めてても、描いてるうちに「このキャラはこんなこと言わないな」「こういうときはこう行動するな」っていうのが出来上がってきて、それで話が動いていったりする。
──なるほど。では宗次も勝手に動いてきているんでしょうか?
宗次は弁蔵に合わせている感じ。弁蔵がこういうことをしたらこうするだろう、とか。彼もあんまり悩まないですね。ただ5巻からはやっぱり難しかったです。動かしづらいというよりは、動かした後にこれでいいのかな、と。宗次とか特に、何か思ってるんだろうなっていうのもあり。多分こう考えてるはずっていう言葉での説明もあまりないし、出来上がったネームを読み返しながら、これで大丈夫かな、伝わるかなっていうのは思いました。5巻からヒバナで再開するあたりからの宗次って、本当にずっと違和感を抱えてる状態なので。なんでそれを抱えなくちゃいけないのかっていうところまで(苦笑)。弁蔵からしたら、そんなこと考えなくてもいいだろ!って言われそうなことを考えてるんですよ。
──弁蔵と宗次がたびたび口にする「向き不向き」という言葉、「五葉」でも宗次が主人公の政に対して「向いてない」ということを言っていて、繋がりを感じさせますね。
そうですね。「ふたがしら」での宗次は「向き不向きじゃない」って言ってたのに、それがどう変わっていったのかというところも、「ふたがしら」で描きたいところのひとつです。
5巻カバーの2人は、向いてる方向が違っている
──第2話の扉の2人は、1巻の弁蔵と宗次とは違う印象です。
この冒頭の扉の2人に、最終的に行き着くんですよね。弁蔵はちょっと怖いというか、陽気な感じではなくて、結局「鬼」と呼ばれるようになる。宗次はどこを見てるのかわからない、笑ってるのかどうかもわからないような。
──着地点が決まっているというのは、作品を作る上で楽なのか、それとも難しいのか、どんな感じなんでしょうか。
これに関しては難しいですね。1巻や2巻の2人の関係を描いているのがすごく楽しかったので、余計に。
──ずっと、楽しい2人を描いていたい。
もうちょっと描きたい、というのはありました。でもその先もちゃんと描きたい。宗次がこうだから、弁蔵がこうなる、とか。5巻最後に収録されている予告ページなんて、前巻の予告と雰囲気が真逆ですよね。4巻最後の予告は「これから俺たちでかいことやってやるぜ!」って感じだったんですけど。
──「壱師の名を広げてやろうぜ!」「さあ、ここからさ。」ってアオリからも、ここからヤンキー成り上がり物語が続くと思ったのに、いい意味で裏切られました。
5巻のカバーイラストも、いままでと違う感じです。2人の向いてる方向も違っていて、目線も合ってない。2人の間に、何かズレのようなものが生じている。実は6、7巻のカバーも、すでにイメージはあるんです。その通りになるかはまだわからないですが。
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マックスになりたいテンションに「着火」する新しい青年コミック誌を、やります。
掲載ラインナップ
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- 「或るアホウの一生」 トウテムポール
- 「ドルメンX」 高木ユーナ
- 「椿と罪ほろぼしのドア」 長田亜弓
- 「461個の弁当は、親父と息子の男の約束。」 荒井ママレ/渡辺俊美
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- 「最近の赤さん」 とよ田みのる
- 「ロボッとうさん」 有永イネ
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- 「ふたがしら」 オノ・ナツメ
- 「子連れ同心」 オノ・ナツメ
- 「あちらこちらぼくら」 たなと
- 「ロッタレイン」 松本剛
- 「ドロヘドロ」 林田球
別冊付録
「勇者たち」 浅野いにお
オノ・ナツメ
2003年、COMIC SEED!(ぺんぎん書房)にて「LA QUINTA CAMERA」でデビュー。ヨーロッパの雰囲気を上手に切り出した、小粋でアンニュイな人間模様を描き人気を博す。2009年に代表作「リストランテ・パラディーゾ」がテレビアニメ化、続いて2010年に「さらい屋五葉」がTVアニメ化される。2015年現在、ヒバナ(小学館)にて「ふたがしら」を、月刊ビッグガンガン(スクウェア・エニックス)にて「ACCA13区監察課」を連載中。そのほかの著書に「つらつらわらじ」「GENTE(ジェンテ)」「逃げる男」「COPPERS」「子連れ同心」などがある。