大切なことは大抵アニメとマンガとゲームが教えてくれた（杉田）

──おふたりは小学生時代、どんな子供でしたか？

櫻井　……普通でしたね（笑）。そんなに語るエピソードもない。鉄棒とかケードロとかかくれんぼとか子供らしい遊びをしたり、ファミコンやったり……そんな感じですよ。あと川に泳ぎに行ったりしたなあ。でもクラスでも目立つほうじゃなくて、1人でコツコツとプラモデル作ったり絵を描いたりするのが好きでした。

杉田　理解者のために役立ちたいと思う子供だったと思います。社会の中に溶けこんでいくために準備段階として学校があって、教師にしろ親にしろ身近にいる大人の中には、人とはこういうものだとか、命とはこうあるべきだという自己ルールに当てはめて現実を見ない者も多くいました。大切なことは大抵アニメとマンガとゲームが教えてくれたので、それを3次元でどう生かすか、ということばかり考えていました。

──そうして、声優になられたんですね。

杉田　この仕事ができて本当に良かったね（意味深）って色々な人に言われます。

櫻井　ははは（笑）。

奏は小5にしてはおバカだと思うけど（櫻井）

──杉田さんが演じるギンは、家業である産婦人科医を継ぐと言ったり、楽しく遊んでいても塾があるから帰ったりと、親の敷いたレールを素直に歩いている子ですね。

杉田　うん。相応に優秀な子なんだと思います。でも仲間との時間も絶対に無駄にしない。彼のそんなところが好きです。

──ギンと奏は、体は大人に近いですが中身はまだまだ子供です。どういうふうに役作りをしましたか？

櫻井　幼さが出たほうがいいと思いながらお芝居していますが、あまりそこに囚われてもなとも思ってます。大変なのはアドリブですね。3人それぞれ切り口が違うし、個性がバラバラなので面白いです。

杉田　はい。

櫻井　奏は子供の語彙で、子供の発想なので、そこは注意しています。アドリブって僕が想像する言葉と奏の発想が一致しないといけないじゃないですか。そこに自分が入ってきちゃうとマズい。でも今までOKをいただけているので、まあ大丈夫かなって思ってます（笑）。

──櫻井さんは、奏のことをどういう男の子だと捉えていらっしゃいますか？

櫻井　いい子ですね。亡くなったお母さんの言いつけを守っていて、その言いつけがすごく正しくて真っ当なことなので、いいお母さんだったんだなあって思います。お父さんもすごく社交的で優しくて、いい環境で育ってますよね。小5にしてはおバカだと思いますけど（笑）。

──ははは（笑）。

櫻井　小5ってもうちょっとこう……ね？（笑） でもそうやって無邪気でいられるのは周りの人たちのフォローがあるからなんですよね。奏は輪の真ん中にいることが多いので、それはあの子の人柄を物語っているのかなと。

──確かに奏はいい子ですね。杉田さんはどうやってギンの役作りをしていきましたか？

杉田　役作り……。ギンを演じるとき、好奇心の先にある明確な答えを忘れるようにします。

櫻井　ちょっと哲学チックな話に……。カッコいい。

杉田　例えば大人だと答えがわかってることも、ギンは真の意味がわからない。答えを僕の中で知ってしまっているとつまらなくなるんで、なるだけ忘れるようにしてます。ギンは興味を持ったものに対しての執着心がすごいので、言葉の1音目をあえて大きくしたり。「なんで」ってセリフだったら「な」を一番強く。そうすると答えを本当に知らないギンの好奇心が出てくる。

──なるほど、わかってきました。

杉田　なので具体的な形（意味深）とかは忘れます。いやらしい意味で面白いことを言ってやろうみたいな心は蛇足なので捨てるようにしています。

──声の演技の知識がないと、子供の役を表現するためには幼い声を出す、というイメージがあります。でもドラマCDで聞いた杉田さん演じるギンは、幼い声では全然なかったのにとても子供らしく聞こえました。

櫻井　ああ、わかります。マインドが子供でしたよね。

──はい。

櫻井　杉田くんの持って生まれたものをストレートに生かしてるのが、ギンのキャラクターにマッチしてるんじゃないかと。声色というよりは、興味が湧いたものに対してテンションを上げて幼さを出したり、子供らしさを表現する演技の工夫やアイデアは、たぶんキャストそれぞれにあるんでしょう。ひけらかしたりはしないんですけど、現場ではそれをお互いに感じ合いながらやってます。