年齢差から生まれるズレが面白かったり切なかったり（櫻井）

──今日は「初恋モンスター」の魅力をおふたりにたっぷりと語っていただければと思います。

櫻井孝宏・杉田智和　よろしくお願いします。

──アフレコ現場に日吉丸晃先生もいらっしゃるときがあるとのことですが、その際にはどんなお話をされます？

杉田　日常会話があったというよりは、キャラクターの解釈でわからないことを聞くようにしています。それを参考に音響監督の演出を受けます。日吉丸先生はネタの傾向が自分に似ていて、今日も台本に「サンダーバキュームボール」と表記されていて個人的に刺さりました。

──「ミラクルジャイアンツ童夢くん」ですか？ アニメが放送されたのはずいぶん昔ですね。

杉田　はい。放送は僕が小学生ぐらいのときです。

──なるほど、リアルに「初恋モンスター」の登場キャラクターと同世代だった頃ですね。おふたりとも3巻特装版のドラマCDから奏役とギン役を演じていますが、最初にこのマンガを読んだ感想はいかがでしたか？

櫻井　年齢差から生まれるズレが面白かったり切なかったり。歳の差っていっても奏と夏歩は5歳差ぐらいじゃないですか。10代の5年ってデカいですけど。片や大人びて見える小学5年生と、片や子供っぽく見える高校1年生の凸凹が、周りの仲間たちの人間模様とあいまって面白かったですね。

杉田　出演が決まったときに、単行本と（連載誌の）ARIAの見本誌をいただきました。ARIAのほうを先に読んでいたら連載作品の中で「初恋モンスター」が全く浮いてなくて、「ARIAって前向きな無法地帯だな」って思いました。女性向けとか嘘ですよ。寛大な空間で男性の読者も獲得しに行ってます。

櫻井　ははは（笑）。チャレンジ精神にあふれてる。

ちゃんと中まで読んでほしい（杉田）

杉田　「初恋モンスター」は表面的なインパクトに振り回されて、割と入り口で満足して笑いながら帰ってしまう人が多くいる印象です。

──確かに「…で、俺、小学生だけどどうする？」という第1話の衝撃的な見開きページがネットで話題になりましたね。

杉田　ちゃんと中まで楽しんでほしいです。「見た目と歳の差のインパクトで出落ちなんだろ」と感じる以上に、成長について子供なのに大人、大人なのに子供っていうギャップを抱える人の悩みが丁寧に描かれている。内容を見ないで要素だけが強く取り上げられるのは、少しもったいないと思います。

櫻井　あのセリフだって深読みすれば、奏は夏歩に会う以前にも小学生とわからず言い寄られて、「小学生なんだけど」って伝えると離れていくっていう経験を、過去にしていたのかもしれない。

──「本当の俺を知っても好きだって言えるならあんたと付き合ってもいい」というセリフもありますね。

櫻井　うん。勘違いしてくる人がいるから「どうする？」って最初に聞いてるんじゃないかなって考えると、夏歩が初めてじゃないと思う。ともすると子供なりに傷ついたことがあったかもしれないですし。見た目が大人っぽいので、平均的な子供とはちょっと違う経験をしてきている。そのあたりのバックボーンを想像すると、ちょっと見方が変わるかなあと思うんですよね。

杉田　最初の印象だけで片付けてほしくないんですよね。同じ言葉でも意味が違ってたりするので。複数の意味といいますか。

──はい。

杉田　優秀な作品は、1つのシーンや言葉から色々派生して、 想像を掻き立てられるという特徴があります。「この3人はどういうときに悩むんだろうなあ」とか。

──奏とギンと十六の、外見が大人に見える小学5年生3人組ですか？

杉田　そう。行動の範囲は小学生なんで、きっといろいろ悩むだろうなって。「もし犬や猫を拾って、命の大事さを知ったらどんなことになるだろう」とか。

櫻井　うん、行動範囲は小学生なんだよね。そこは大人との大きな違いかなと思います。行動範囲で考えると、町単位じゃないですか（笑）。

──そうですね。奏と夏歩のデートは近所の公園の砂場でした。

櫻井　ホント子供なので、まだ成長途中で知らないことだらけ。毎日楽しくて、毎日が経験で……。少しずつ目に見えない、見た目じゃわからないような成長を遂げているんだろうなあと思ってます。