「はたらく細胞」|清水茜(原作者)×鈴木健一(監督)対談 背景までもが主役。原作に描かれない細部まで拾いあげたアニメへのこだわり

スギ花粉が落ちてくるときはアルマゲドンだよ(鈴木)

鈴木 アニメならではという意味では、音楽も大事で。「はたらく細胞」の世界では、僕たちが普通に生きていて、ちょっとしたことでできた小さいすり傷が、細胞たちにとっては大きな脅威になるわけです。その規模感のギャップはすごく面白いし、大事にしたかったので、音楽をお願いする際には「とにかく大仰によろしく」と伝えました(笑)。細胞たちにとって、スギ花粉が落ちてくるときは映画「アルマゲドン」だよって。

「はたらく細胞」1巻より、スギ花粉アレルギーのシーン。

清水 なるほど(笑)。たしかにイメージぴったり。

──「はたらく細胞」で起こっている事件や死闘は、すべて人体で起きていることですが、すり傷ひとつでも細胞レベルで見てみると世界戦争並みのカタストロフだと。

鈴木 はい(笑)。たとえすり傷であっても、大パニックのようにやってくれという話をしています。だって、そのほうが面白くなるじゃないですか。それで、蓋を開けてみると「ただのすり傷かよっ!?」とみんなが突っ込めるくらい、大仰にやりたい。そこはすごく注意してやっていました。

アニメーター殺しのマクロファージ

──メインの赤血球と白血球は当然人気だと思うのですが、特に読者に人気のキャラはどのあたりでしょう。

清水 血小板ちゃんはもちろん人気があるんですけど、ちょっぴり意外なんですが、B細胞も人気があるみたいですね。

──ちょっとおバカで元気な後輩キャラですね。

清水 はい。あとはやっぱりマクロファージさんですね。

テレビアニメ「はたらく細胞」より、井上喜久子演じるマクロファージ。細菌などの異物を捉えて殺し、抗原や免疫情報を見つけ出す。

鈴木 ですよね。アニメーター殺しのマクロファージ(笑)。フリルの数と量がすごいんです。「あまり描きすぎても、動画で崩れてしまうからこのくらいがいいね」とか、「監督、このキャラはやっぱり三つ編みしないとだめですか(泣)」とか言われながら作ってます(笑)。

清水 私はマクロファージさん、描いていて楽しいです(笑)。

──(笑)。キャラで言うと、厨二病な好塩基球さんのキャラもとても濃いですよね。

鈴木 好塩基球さんは、ちょうど今日アフレコ収録したところなのですが、すごくいい感じですよ。笑っちゃうくらいブーストを効かせたエフェクトでしゃべってもらって、アドリブも飛び出してました。まだ声優さんは発表されていませんが、すごく盛り上がりそうなキャスティングなので、楽しみにしてほしいです。

──やっぱり、低音の渋めの声の方なのでしょうか、楽しみです。キャスティングで言うと、今回は花澤香菜さんが赤血球を、前野智昭さんが白血球を演じていますが、清水さんはお聞きになっていかがですか?

清水 どのキャストのみなさんも、みんなピッタリですよね。

鈴木 小野大輔さん演じるキラーT細胞も、井上喜久子さん演じるマクロファージさんも、ハマりっぷりが素晴らしくて。かなり豪華なキャスティングになったと思います。

細胞のひとつになったような気持ちで観てほしい

──アニメはどんなふうに楽しんでもらいたいですか?

鈴木 これは、「はたらく細胞」を読んでいるみんなが陥りやすいマジックなんですが、この作品で起こっていることは、自分の体の話なんだと思って観てもらえるとうれしいです。そうすれば、体にも気を遣って生きていけるのではないかと(笑)。まあこういう作品を作っている以上、「不健康になっちゃまずい」とはよく言ってます。

──「はたらかない細胞」になると、本末転倒ですからね(笑)。

「はたらく細胞」読み切り版より。

清水 作品のもとになった読み切りを描いたときからの当初の目的として、中学生や高校生くらいの方が免疫の勉強が楽しくなるといいなというのがあったんです。だから、学生さんにもぜひ観ていただけたらと思います。

──マンガやアニメをきっかけに、医療の道を志す人が出てくるかもしれませんよね。

鈴木 「これを見て医者になったんです」っていう人が出てくると、うれしいですよね。

清水 はい。

──最後に、放送を楽しみにしている人に向けて、それぞれメッセージをお願いします。

鈴木 シリーズを通して、自分の健康についてちゃんと考えていけるようなアニメにしていきたいと思いますので、ぜひそれを観てほしいです。あとは、ガチャガチャというよりは、わちゃわちゃしている楽しさがあるので、自分も一緒に体の中に入って、細胞になったような気持ちになって観ていただけるといいなと思います。

テレビアニメ「はたらく細胞」のキービジュアル。

清水 私は、とにかく楽しんで観ていただければと思います。ほんとに、監督をはじめとした制作陣の皆さんには細かいところまで観察していただいて、名前も定まっていないような細かいキャラのやりとりとか、原作では1センチに満たないような看板の文字だったりを、ものすごく細かく拾っていただいているので、そういうところにも目を向けて楽しんでいただけたらと思います。

鈴木 気になったところは全部、一時停止して観ることをおすすめします(笑)。

テレビアニメ「はたらく細胞」
放送情報

TOKYO MX:2018年7月7日(土)24:00~
とちぎテレビ:2018年7月7日(土)24:00~
群馬テレビ:2018年7月7日(土)24:00~
BS11:2018年7月7日(土)24:00~
MBS:2018年7月7日(土)26:38~
テレビ愛知:2018年7月7日(土)25:50~
北海道放送:2018年7月7日(土)26:38~
RKB毎日放送:2018年7月8日(日)26:25~
AT-X:2018年7月10日(火)23:00~

スタッフ

原作:清水茜(講談社「月刊少年シリウス」連載)
監督:鈴木健一
シリーズ構成:柿原優子
脚本:柿原優子、鈴木健一
キャラクターデザイン:吉田隆彦
細菌キャラクターデザイン・プロップデザイン・アクション作画監督:三室健太
サブキャラクターデザイン:玉置敬子
総作画監督:吉田隆彦、玉置敬子
美術監督:若林里沙(アトリエPlatz)
美術設定:曽野由大、橋口コウジ
音響監督:明田川仁
音楽:末廣健一郎、MAYUKO
アニメーション制作:david production
製作:アニプレックス、講談社、david production

キャスト

赤血球:花澤香菜
白血球(好中球):前野智昭
キラーT細胞:小野大輔
マクロファージ:井上喜久子
血小板:長縄まりあ
ヘルパーT細胞:櫻井孝宏
制御性T細胞:早見沙織
樹状細胞:岡本信彦
記憶細胞:中村悠一
B細胞:千葉翔也
好酸球:M・A・O
マスト細胞(肥満細胞):川澄綾子
先輩赤血球:遠藤綾
肺炎球菌:吉野裕行
ナレーション:能登麻美子
ほか

清水茜「はたらく細胞①~⑤」
発売中 / 講談社
清水茜(シミズアカネ)
清水茜
1994年生まれ。東京都出身。第27回少年シリウス新人賞にて大賞を受賞。月刊少年シリウス2015年3月号(講談社)より「はたらく細胞」を連載中。
鈴木健一(スズキケンイチ)
アニメーション監督・演出家。「HELLSING OVA」や「SD ガンダム三国伝 Brave Battle Warrious」では監督を務めたほか、テレビアニメ「ジョジョの奇妙な冒険」「ジョジョの奇妙な冒険 スターダストクルセイダース」でもシリーズディレクターを手がける。