アニメ「名探偵コナン 犯人の犯沢さん」が10月3日より読売テレビほかで放送される。「名探偵コナン」の公式スピンオフとなる同作は、本編に登場する“犯人”を主人公に描かれる物語だ。コミックナタリーではアニメの放送開始に合わせ、「名探偵コナン 犯人の犯沢さん」の特集記事を展開。原作の魅力を紹介するとともに、主演の蒼井翔太に作品の印象やアフレコにあたっての思いなどを語ってもらった。
なおインタビューにはアニメの第1話にあたるネタバレが含まれているので、新鮮な気持ちでアニメを楽しみたい人は視聴後に読むのをオススメする。
取材・文 / 熊瀬哲子撮影 / 入江達也ヘアメイク / 高橋忍スタイリスト / ヨシダミホ
「名探偵コナン 犯人の犯沢さん」の見どころ
連載から23年、「名探偵コナン」初のスピンオフ
2017年、「名探偵コナン」にとって史上初となる公式スピンオフコメディの始動が告知された。1994年の連載開始からおよそ23年が経ったときのことである。「名探偵コナン」の本編で正体不明の犯人が黒いシルエットで描写されるのはおなじみだが、ついに、いやまさか、その犯人を主人公としたマンガ「名探偵コナン 犯人の犯沢さん」がスタートすることになったのだ(参照:「名探偵コナン」犯人が主役のギャグ新連載、黒い人が犯罪都市・米花町へ)。
本編への容赦ない切り込み
連載開始時、掲載誌であるサンデーS(小学館)に書かれていたのは、「世界トップの犯罪都市・米花町」。第一に「あ、それ言っていいんだ……」と感じた文面であったが、マンガではこれだけに留まらず、「登場人物たちが殺人現場に見慣れている」「事件そっちのけでキャラクターたちがイチャイチャする」「子供が当たり前に事件現場にいる」などと、本編で突っ込みたいけど読者みんながそっとしているようでしていないような部分に、なんの迷いもなくズカズカと踏み込んでいくところが潔くて気持ちがいい。
親近感のある主人公
「錦田警部はどろぼうがお好き」「迷宮入り探偵」などで知られるかんばまゆこが描く犯沢さんは、目的こそ“とある人物の殺害”ではあるが、随所に非常に親近感を覚えるキャラクターとして描写されているのも魅力だ。彼(彼女)の真の目的を忘れ、思わず「がんばれ……っ!」と応援したくなってしまう瞬間、そして哀愁がある。
愛くるしい相棒・ポメ太郎
この作品で忘れてはいけないのがポメラニアンのポメ太郎。物語の中盤で犯沢さんと出会い、家族となり相棒となり、犯沢さんに癒やしをもたらす存在になるのだが、このポメ太郎が非常に、非常に愛くるしいのである。ポメ太郎にデレデレになってしまう犯沢さんの姿は、動物を愛する人にとってはとても共感できるのではないだろうか(ちなみにポメ太郎は作者のかんばの愛犬であるポメラニアンがモデルになっているという)。
と、簡単にではあるものの「犯人の犯沢さん」の魅力を綴ったが、「犯沢さん」を生み出したきっかけの人物であり、前サンデー編集長の市原武法氏が過去のインタビューで本作について語った際のこのコメントに尽きると思う。「結局原作が好きな人が描かないと面白くないんですよ。愛がないとおちょくりようがないし、詳しくないと描けないから」(参照:週刊少年サンデー特集 編集長・市原武法インタビュー)。「名探偵コナン」を愛する作者だからこそ描ける、「犯人の犯沢さん」ワールドをマンガでもアニメでも楽しもう。
蒼井翔太インタビュー
真の目的とのギャップで笑いがこみ上げる
──アニメ「名探偵コナン 犯人の犯沢さん」はオファーがあってご出演が決まったのでしょうか?
そうですね、お声をかけていただきました。後日、原作を読ませていただいて、セリフ量の多さと謎多き人物というところで「わっ、難しそうなキャラクター!」「自分が犯沢さんを演じられるだろうか?」っていうプレッシャーみたいなものを感じました。それと同時に、読めば読むほどハマっていく部分があったので、演じられるのがうれしい気持ちもめちゃくちゃありましたね。
──作品自体にはどんな印象を抱きました?
もう、テンポが速い! アフレコする側の視点からすると、まずそれを感じました。でもそれも読みやすいテンポの速さですよね。日頃からリアルに自分たちがいろいろと物事を考えているリズムにすごく近くて、だからすんなりと読める。ボケとかも自分の中に入り込みやすいし、元気をもらえる作品だなと思いました。
──「名探偵コナン」に登場する“犯人”を題材にしているので、殺人という目的を掲げているにしても、内容としては日常コメディという感じですもんね。
そうなんですよ。犯沢さんの一番の目的である、とあるターゲットを“チョメチョメ”したいっていうこと以外は、僕自身もそうですし、皆さんにとっても共感できることがすごく溢れているっていうのがこの作品のポイントで。犯沢さんの真の目的とのギャップがあるからこそ、日常的な“あるある”のシーンで笑いが込み上げて来てしまうんだろうなって思います。
──私は2017年に連載が始まったときに、「世界最大の犯罪都市・米花町」って書かれていた衝撃がいまだに忘れられなくて。「あっ、それ言っていいんだ」って。
それで言うと第1話の1ページ目から面白いですもんね。誰も米花町で(電車から)降りたがらない。「ここで降りるのか!?」「早まるな!!」くらいの勢いで(笑)。スタートからかんば先生の掴み方がすごいなって思います。アニメのPVでも「死神が潜む……」とか言ってますから(笑)。
──本編の主人公(コナン)のことを死神呼ばわりですからね(笑)。第1話は米花町がいかに犯罪都市として認識されているかが描かれているだけでも面白いのに、犯沢さんがその米花町の改札にうまく入れないというエピソードのみで終わったのも、当時第1話を楽しみにしていた身としてはまた衝撃を受けました。
ICカードの存在を知らなくて改札でべコーン!ってなるという。その話、噂によるとかんば先生の実体験だってお聞きして。すごくかわいらしいなって思いました。
──あっ、そうなんですね(笑)。でもこのマンガってきっとかんばさんにとっての“あるある”が詰まってる作品なんだろうなと随所で感じます。
そうですよね、きっと。あとはそうやって共感できる部分もありながら、犯沢さん自身は性別不明なところだとか、謎多き人物というのもこの作品の面白さだなと思います。
コナンくんのパラパラ、今でも踊れます
──そもそも蒼井さんは「名探偵コナン」になじみはありましたか?
そうですね。テレビっ子だったので青春時代からアニメは観ていましたし、コナンくんが(オープニング映像で)パラパラを踊ったあの時期は、次の日学校で話題になって、録画して何回も観ました。みんなも踊ってましたし、僕も今でも踊れます。だからマンガの1巻の表紙もそうですし、アニメのキービジュアルのポーズも見た瞬間に「あのパラパラだ!」って思いました。これを表紙に持ってくるのも心の掴み方がさすがですよね。
──「あれだ!」「それもネタにするんだ!」ってファンのツボを突いてきますよね。
あとは音楽が好きな自分としては、主題歌にも耳を奪われていました。先日僕のファンクラブイベントでカバーライブをやらせていただいたんですけど、そのときに倉木麻衣さんの「Secret of my heart」を歌わせていただいたんです。本当はもっと「コナン」の曲を歌いたかったんですけどね。「恋はスリル、ショック、サスペンス」(コナンがパラパラを踊った愛内里菜によるオープニング主題歌)も歌いたかったんですけど……。そうしたら「犯沢さん」のエンディングが倉木麻衣さんの「Secret, voice of my heart」になるということを知って。倉木さんが歌ってくださるなんてすごく豪華ですよね。
──すごいですよね、倉木さんも乗っかってくれるんだ!っていう。
オープニングも新浜レオンさんが歌う歌謡テイストなサウンドが「犯沢さん」の世界観にすごくぴったりで。僕自身も最後まで聴かせていただくのが楽しみです。
──大地丙太郎監督のコメントによると、劇中のBGMにも仕掛けがあるとか。
そうなんです。よく音楽を聴いたときの表現で「スルメ曲」とか言うじゃないですか。「聴けば聴くほど味が出る」って。この作品に関しては「味の濃いスルメ」なんですよ。なので噛んだときのインパクトがまずあって。で、1枚終わったらまた1枚いきたくなる。それこそスルメのように。だから最初のインパクトとやみつきになる感じの両方が楽しめる作品だと思います。
──確かにやみつきになる要素はたくさんありますよね。ギャグもそうですし、「コナン」のパロディに関してもそうですし。「あれ? この人見たことあるぞ?」と思ったら「あ、やっぱり本編に出てたあの人だ」とか、照らし合わせる楽しさもあるなと。
出会う人出会う人そうですからね。どちらの世界でも「あ、やっぱり米花町だな」ってしっくり来てしまうパワーがあるのもすごいなと思います。
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阿笠博士のヤバさは笑いを堪えるのが大変でした