描いてきてよかった! 間違ってなかった!
──「暁のヨナ」はこの10年の間に、ドラマCD化、TVアニメ化、舞台化とメディアミックスも盛り上がりました。改めて、メディアミックスへの思いを教えてください。
ドラマCD、アニメ、舞台とそれぞれの制作者様がきちんと話を聞いてくださり、スタッフさん、演者さんともにとても恵まれたと感謝しています。スタッフさんや監督さんが作者の意見を聞いてくださるのは、本当にありがたいことです。できないことは「なぜできないか」と丁寧に説明してくださるので、こちらも「これだけはしないでほしい」という要望を気兼ねなく伝えることができました。
──コミュニケーションがうまくいっているということですね。舞台は新垣里沙さん主演で水の部族編を舞台化したものと、生駒里奈さん主演で原作マンガの1~7巻を舞台化したものが上演されました。今年の11月には再び生駒さんと矢部昌暉さん(DISH//)のコンビで新作公演が行われます。
舞台は基本的に脚本のチェックのみで、あとは舞台を見るまでどうなっているかわからないので、一観客の気持ちで楽しんでいます。キャストの皆さんがキャラを大切に演じてくださいますし、その場のアドリブなどが本当に面白いです。
──連載開始からこの10年で、思い出深い出来事を教えてください。
うーん、いろいろありすぎて。10年あればアシさんとの出会いと別れがあったり。アシさんはみんなとてもいい方で、本当にお世話になってるんです。あと初期は住んでいる熊本から東京に行って編集部で何度も打ち合わせをしたり、ネームが描けず泣きながら考えたり、ドラマCDのアフレコに行って死ぬほど緊張したり……。
──アフレコで草凪さんがそんなに緊張なさった理由は?
アフレコでは、キャラのイメージやセリフのニュアンスを音響監督さんや声優さんに伝えなければならないんですが、プロの現場で意見を言うのはとても勇気がいるんです。
──確かに、それは緊張しますね。
アニメ化前のドラマCDは初の音声化でしたし激しく緊張しました。特に緑龍編のCDではキャストさんも多くて、ギガン役の榊原良子さんやクムジ役の菅生隆之さんといった大ベテラン役者さんもいらしたりと本当に心臓と胃が痛かったです。ギガン船長やクムジは当日までキャストがどなたになったのか知らなかったので、驚きと緊張で余計に震えました。こんな感じでそれぞれに思い出があるので一番は決められませんが、長くやってきたことで少しずつ読者さんも増え、反応をいただけたりすると「描いてきてよかった! 間違ってなかった!」って思えます。
──「ヨナ」の連載を始めたばかりの、10年前の草凪さんに今の草凪さんが声をかけるとしたらなんと伝えますか?
最初の1年はこの物語を動かす自信がなくて、不安でため息が多かったんですが、「もう少しの辛抱だ」と伝えたいです。「もう少し描いたらキジャって奴が出てきて急にやりやすくなるぞ」と(笑)。
──白龍キジャの登場は3巻の後半ですから「それまでの辛抱だ」と(笑)。確かにキジャは心が強くてまっすぐでピュアで、いいキャラですよね。今連載では千州編がクライマックスですが、キジャたち四龍同士のバトルあり、ヨナのロマンスに進展ありと盛りだくさんでした。
四龍同士のバトルや、合間でちょこちょこやってるアルギラとヴォルドを描くの楽しかったです。千州編の後半は軍勢とバトルばかりで、苦しくもあり描き甲斐もありました。流血や暴力シーン苦手なのに、鬨の声を上げる軍勢や大軍相手にボロボロで立ち向かう戦士が大好きでして……矛盾してますが。毎回時間なくて作画がとても大変でしたが、もっと時間かけて表情や戦闘をこだわりたかったです。
──発売されたばかりの30巻にはまさにその部分が収録されますが、見どころを教えてください。
……ラストかな。
──ネタバレになるので詳しくは言えませんが、単行本で読むのが楽しみです!
ストーリー作りが倍うまくなるなら画力が半分なくなってもいいと思ってた
──30巻には「暁のヨナ」のイラストがデザインされたアートカード30枚が付く限定版も用意されています。草凪さんは作画・カラーともにアナログで描かれていると思いますが、デジタルに移行する予定などはありますか? ドクターマーチンのカラーインクの国内販売終了やスクリーントーンの流通量も縮小傾向と、アナログ派の先生方にとって転機となるような時代なので気になっており……。
カラーは、デジタルで好きな作品もたくさんあるので憧れはあります。デジタルのような塗り方をアナログでできないか目指したりも。ただ私はデジタルがまったくわからず、直に紙に描く感触が好きでアナログから離れられないので当分難しいかと。でも画材がなくなるのは寂しいし困る……。高いアナログ技術を持ったベテラン作家さんが今まで培ったものを捨て、連載中にデジタルに移行しているのを知ると本当に頭が下がります。
──連載をしながらデジタルの勉強も……というのはなかなかできることではないですよね。草凪さんは、絵を描くのとお話を考えるのは、どちらがお好きですか?
どちらも同じくらい好きだし、苦しいです。昔はストーリー作りが倍うまくなるなら画力が半分なくなってもいいと思ってたことがありましたが、今はまったく思いません。お話はもちろんですが、マンガにおいて絵が素敵であることの大切さを年々感じています。
──ご自身の絵柄で、特徴のある部分はどこだと思いますか?
前は自分の絵に、そんなに特徴があると思ってなかったんです。でもあるときから自分の絵は何か変な癖があるな……と思うようになりました。
──え、変な癖……?
どこが、と具体的には言えませんが、もう少しくどくない絵になりたいです。でも作風には合ってるような気もするのでジレンマです。
──「ヨナ」のロマンス部分もコメディ部分もバトル部分も表現できる、素敵な絵柄だと思います。今後、作家としてやりたいことはありますでしょうか?
当たり前ですが、とにかく「ヨナ」をよきところに導くことです。これ以外考える余裕がないので、ほかのことは「ヨナ」が終わってから考えます。
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マンガ家になる以外の選択肢がなかった
- 草凪みずほ「暁のヨナ㉚」
- 発売中 / 白泉社
高華国と千州軍の戦いの中、時間を稼ごうと相対する四龍たち。そして、前線で死力を尽くすハクは、ついにクエルボと見え一騎打ちに──!? その最中、千州の城ではヨナとクエルボの妻・ユーランのもとへ、ゴビ神官が現れ……!? 千州編クライマックス!
- 草凪みずほ「暁のヨナ㉚」30Arts Collection限定版
- 発売中 / 白泉社
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コミックス 税込1328円
30巻発売記念の、豪華アートカード30枚セット付き限定版。描き下ろしイラストも入って見応え抜群!
- 花とゆめ18号
- 発売中 / 白泉社
-
雑誌 税込400円
- ・「暁のヨナ SPポストカード」
- 30巻限定版に付いてくるアートカードと同サイズのポストカード。9月5日発売の花ゆめ19号の付録ポストカードと絵柄が繋がる仕様。両方集めるとコレクションが完璧に!
- ・「暁のヨナ アーツコレクションケース」
- 30巻限定版に付いてくるアートカード全30枚+付録の2枚がすべて収納可能なポケットファイル。
「暁のヨナ」W付録!
- 草凪みずほ(クサナギミズホ)
- 2月3日熊本県生まれ。2002年、「御神兄弟がゆく!?」で第27回アテナ新人大賞優秀新人賞を受賞。2003年に花とゆめ(白泉社)にて「よいこの心得」でデビュー。同作が連載化したことで、第28回アテナ新人大賞デビュー優秀者賞を受賞する。続けて「夢幻スパイラル」「ゲーム×ラッシュ」「NGライフ」とヒット作を飛ばし、現在花とゆめにて「暁のヨナ」を連載中。同作は2014年10月にTVアニメ化、2016年3月に舞台化を果たした。また舞台の新作「暁のヨナ~ 緋色の宿命編~」が11月より東京・EX THEATER ROPPONGIにて上演され、生駒里奈と矢部昌暉(DISH//)が主演を務める。
2019年11月20日更新