2007年に福井晴敏の小説としてスタートした「機動戦士ガンダムUC(ユニコーン)」は、2010年からOVAシリーズが劇場でイベント上映され、2016年にはTVシリーズとして放送された人気作だ。「機動戦士ガンダム」から連なる「宇宙世紀」を舞台にした物語は、幅広い世代からの支持を受け、このたびOVA全7話、TVシリーズ全22話を収録したBlu-ray BOXが発売される。
Blu-ray BOXの発売を記念し、久々にメインキャスト3人が集結。バナージ・リンクス役の内山昂輝、リディ・マーセナス役の浪川大輔、オードリー・バーン(ミネバ・ラオ・ザビ)役の藤村歩に印象的なシーンを振り返ってもらうとともに、当時を懐かしむ3人の様子をお届けする。インタビューの最後には、特典として付属するガンプラの撮り下ろし写真も掲載しているのでこちらもお楽しみあれ。
取材・文 / はるのおと 撮影 / 入江達也
ネオ・ジオングは小顔でかわいい(藤村)
──先ほどまでTVシリーズ第21話「この世の果てへ」のオーディオコメンタリーを収録されていましたが、久々に観られての感想は? 浪川さんはコメンタリーで「ユニコーンガンダムが登場するシーンが最高」とおっしゃっていましたが。
浪川大輔 ああいうシーンってありそうでなかったでしょ。バナージが「ユニコーン!」って呼んだら、どこかで待っていたユニコーンガンダムが出てきて。
内山昂輝 意識して待っていたかはわからないですけど。
浪川 じーっと待っていて、呼ばれてボーンって出てくるわけですよ。お互いが共鳴し合って。
内山 呼んだら反応してくれるって、AIスピーカーみたい(笑)。
藤村歩 私はネオ・ジオングの壮大さが鳥肌ものでした。建築物かという大きさだし、ビームも四方八方にぶわって出すし、ほかのモビルスーツとは違うスケールだというのが余すことなく絵と音楽で表現されて。でも頭はシナンジュのサイズのままだから、小顔でかわいい。
浪川・内山 小顔(笑)。
──それをユニコーンガンダムがパンチとチョップで倒すというのもすごいですよね。
藤村 やっぱりビスト神拳はすごい。
内山 え、何それ?
藤村 あのユニコーンガンダムの格闘シーンが、ネットでファンにビスト神拳と呼ばれていて。笑っちゃった。
──ビスト家に伝わる拳法と言われてますね。それでは演じた際に気を付けたことについて、それぞれのキャラクターの劇中での変化を踏まえて教えてください。
内山 バナージは難しく考えず、直感的に演じました。当時の自分の年齢がバナージに近く、その頃の思いや大人への感情も似ていたので、最近演じているキャラクターより“自分感”は強いです。あとバナージは周囲の人間関係がけっこう変わるんですよね。当初は連邦側にいたけど、その後はジンネマンたちネオ・ジオン側とも行動をともにして考え方が変化していく。それは組織というより人からの影響だと思うんですけど……だから振り返ると、いろんな人との出会いを通じて変わっていったキャラクターだと思います。
藤村 オードリーことミネバに関しては、当初は内山くんが言ったことの真逆で、人より組織や背負っている家柄の影響が強いキャラクターでした。それがバナージとの出会いを通じて、徐々に1人の人間として成長していって。特に終盤は、バナージに対しては女性としての思いが入ってくるので、そういったエッセンスを徐々に入れていきました。
──その変化の前も、ミネバはかわいらしいところがたまに垣間見えますよね。地球でコーヒーを飲むシーン(episode 4「重力の井戸の底で」)とか。
藤村 あとepisode 1「ユニコーンの日」でホットドッグを食べる場面。
内山 上品に口を拭うところ。
藤村 そう。そういった庶民的なエッセンスとミネバが混じると、ギャップで少しかわいらしい一面が出ますよね。
──最後にリディです。オーディオコメンタリーでも一番人間らしいという話が出ていました。
浪川 変化のポイントは、やっぱりオードリー・ヘップバーンじゃないですか?
藤村 「ヘップ」はいらない。
浪川 オードリー・バーン。リディは家柄という背景がありつつも爽やかなお兄さんだったんですが、自分の感情で動いた結果として失敗を繰り返し、素の自分では通用しないことを知って「自分はこんなにちっぽけな人間だったんだ」と悟っていく。その一方でバナージがどんどんすごくなっていくんだから、そりゃ落ち込みますし、目の前に黒いガンダムがあったら乗りたいと思うことでしょう。
何回「バナージ!」って叫んだことか(浪川)
──バナージとリディの歩みは対照的でした。演じるうえで、2人で相談や調整はされましたか?
内山 2人でっていうのは特になかったですね。
浪川 圧倒的に安定感のある内山昂輝と、ブレる浪川そのままでしたから。
内山 そのコメントに、僕はどうリアクションすればいいんですか(笑)。
浪川 でもどうだったの、バナージは。大変だった?
内山 大変でしたけど、収録の時期によって大変の種類が違ったというか。
浪川 大変そうに見えない。飄々とやっていたよね。
藤村 全然見えなかった。
内山 昔の自分を褒めてあげたいです。
浪川 だけど改めて思うとアニメが始まった頃、内山くんは19歳で藤村さんは20代中盤でしょ? その年齢で「ガンダムシリーズ」の主人公とヒロインを背負うってすごい。
内山 でも、浪川さんだって昔から「ガンダムシリーズ」に関わっているわけじゃないですか。最初に演じたのは12歳でしたっけ?
浪川 そう。(「機動戦士ガンダム0080 ポケットの中の戦争」に登場する)アルフレッド・イズルハっていう子供の役だったんだけど、さすがに演じ続けるのが厳しいから、30歳くらいのときに(別の声優に)代わってもらったの。ゲームの収録があるからってFAXで台本が届いたんだけど……。
内山 FAX?
浪川 当時はFAXで届いていたんだよ。「うわーん」とか「やめてよー」とか「やだー」みたいなセリフが並んでいて。俺は「できないです」と1回はお断りさせてもらったんだけど、「いや、大ちゃんならいけるよ」って説得されて収録したわけ。そしたらやっぱり全然声が違う。それで終わったあとにディレクターさんに肩をトントンと叩かれて「今までありがとう」って。
一同 (笑)。
内山 「ガンダムシリーズ」に昔から関わっている浪川さんのお話は重みがあります。
浪川 どこがだよ、降ろされた話だよ(笑)。
──「ガンダム」くらいの大作になるとゲームなどで収録する機会も多いので、久々に演じるという感じではないんでしょうか。例えば「スーパーロボット大戦シリーズ」だけでも3、4回くらい収録していそうですが……。
内山 確かに、バナージは定期的に演じていると思います。でも俺も、浪川さんみたいに降ろされる日がくるかもしれない。
浪川 16歳のキャラクターだもん、大丈夫だよ。でもゲームの収録はしんどいよね。セリフがずっとクライマックスばかりで。何回「バナージ!」って叫んだことか。
藤村 そうですね。前後の流れがあって盛り上がったところでバーンって出るセリフだけを抜き出して、しかも掛け合いせずに録るのはすごく難しい。
浪川 そうそう、そういうこと。ミネバは、ゲームで演説はしたの?
藤村 少ししました。私も一生演説するんですかねえ(笑)。
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「撃てましぇーん!」って言ってないから(内山)
- 「機動戦士ガンダムUC」
- 2019年2月26日発売 / バンダイナムコアーツ
-
Blu-ray BOX Complete Edition [Blu-ray13枚組]
【RG 1/144 ユニコーンガンダム ペルフェクティビリティ 付属版】
税込70200円 / BCXA-1417
- 収録内容
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OVA版本編(全7話)
- 映像特典
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- TVシリーズ「機動戦士ガンダムユニコーン RE:0096」(全22話)
- 過去のBD / DVDに収録された映像特典集
- BD-LIVEサービス用に2015年3月30日まで配信された、BD / DVD未収録映像集
- ユニコーンガンダム ペルフェクティビリティ新規PV
- 封入特典
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- 「ラプラスの箱」石碑風収納BOX
- 福井晴敏書き下ろしシナリオ
- ニューベストサウンドトラックCD
- 名シーン原画セレクション
- 特製ブックレット
- 音声特典
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- 新規収録オーディオコメンタリー
- TVシリーズ「機動戦士ガンダムユニコーン RE:0096」副音声アーカイブ
- オーディオコメンタリーアーカイブ
- 収録内容
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OVA版本編(全7話)
- 封入特典
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- 新規アニメイラストを使用した収納ケース
- ライナーノート(16P)
- ストーリー
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U.C.0001。西暦から宇宙世紀(Universal Century : U.C.)に移るセレモニーが行われていた地球連邦政府の首相官邸、宇宙ステーション・ラプラスは爆破テロにより粉々に砕け散ってしまう。テロ事件に関わった青年サイアムは、残骸の中で後に“ラプラスの箱”と呼ばれることとなる禁忌の箱を発見する。
U.C.0096。工業スペースコロニー、インダストリアル7に住む少年バナージ・リンクスは、ある日、オードリー・バーンと名乗る謎の少女と出会う。ビスト財団とネオ・ジオン残党軍“袖付き”による“ラプラスの箱”の取引を止めようと、単身行動を起こすオードリーに協力するバナージ。しかし、同じく取引を妨害するため乗り込んだ地球連邦軍と“袖付き”との戦闘により、コロニーは戦場と化してしまう。戦火の中で離ればなれになってしまったオードリーを探すバナージは、“ラプラスの箱”の鍵となる純白のモビルスーツ、ユニコーンガンダムとの運命的な出会いを果たす。
- キャスト
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バナージ・リンクス:内山昂輝
ミネバ・ラオ・ザビ(オードリー・バーン):藤村歩
マリーダ・クルス:甲斐田裕子
リディ・マーセナス:浪川大輔
ミコット・バーチ:戸松遥
タクヤ・イレイ:下野紘
アンジェロ・ザウパー:柿原徹也
スベロア・ジンネマン:手塚秀彰
ギルボア・サント:チョー
オットー・ミタス:内田直哉
ダグザ・マックール:東地宏樹
ミヒロ・オイワッケン:豊口めぐみ
アルベルト・ビスト:高木渉
フル・フロンタル:池田秀一
©創通・サンライズ
- 内山昂輝(ウチヤマコウキ)
- 埼玉県出身、8月16日生まれ。主な出演作品に「ニセコイ」(一条楽役)、「ハイキュー!!」(月島蛍役)、「ユーリ!!! on ICE」(ユーリ・プリセツキー役)、「Free!-Dive to the Future-」(桐嶋郁弥役)など。
- 浪川大輔(ナミカワダイスケ)
- 東京都出身、4月2日生まれ。主な出演作に「機動戦士ガンダム0080 ポケットの中の戦争」(アルフレッド・イズルハ役)、「ルパン三世 PART5」(石川五ェ門役)、「ハイキュー!!」(及川徹役)、「明治東亰恋伽」(森鴎外役)など。
- 藤村歩(フジムラアユミ)
- 東京都出身、9月3日生まれ。主な出演作に「HUNTER×HUNTER」(ネフェルピトー役)、「会長はメイド様!」(鮎沢美咲役)、「狂乱家族日記」(乱崎凶華役)、「ほしの島のにゃんこ」(ホピ役)など。