コミックナタリー PowerPush - 午前3時の無法地帯
新米デザイナーの恋物語が豪華キャストでドラマ化 ねむようこ&山下敦弘監督が明かす映像化裏話
ももこのことを完全に忘れて「遠藤がんばれ!」って
──脇役キャラについてもお聞きしたいのですが、ドラマを拝見して、ももこの恋敵である遠藤は、原作よりも何倍も嫌なやつだなと思いました。
本当に嫌なやつなんですよ、遠藤(笑)。原作だともう少し説明がありますけど、ドラマ版はその辺りがあまりないですから。この作品ってみんないい人ばっかりじゃないですか。その中で遠藤だけがかき乱す役なんですけど、最後に鏡見て化粧直しするシーンでは、すごくいい顔をするんですよね。あのときはももこのことを完全に忘れて「遠藤がんばれ!」と思いました。でもまた遠藤がももこと再会すると、お互い嫌味言い合ったりして。あの関係性、すごくいいなと思って。木南(晴夏)さんにやっていただいて本当によかったですね。
──ほかのPデザインのメンバーはいかがですか。
輪嶋も面白かったし、瀧さんもあんなにハマると思わなかったですね。あ、田辺役の宇野(祥平)くんだけは、最初ちょっと大丈夫かなって思ってました。田辺って癒し系だけど、俺の中で宇野くんはギラギラ系なんで(笑)。
──確かに、田辺はキレてるシーンが印象的でした。
原作ではもっと柔らかい感じですけど、ドラマでは少し怖い部分も出てるかもしれないですね。あと真野さんは撮ってて面白かったですね。ももこを助けてるんだか助けてないんだか(笑)。
──ももこに「ムカつく」なんて暴言を吐いちゃったりしてます。
あ、あと原作では真野と堂本は付き合ってるじゃないですか。ドラマでは描いてないですけど、一応ふたりは付き合ってるという設定でやってたので、たまにふたりが近づいてるシーンもあります。見る人が見ると分かるかもしれません。
なるべく不親切な部分はなくそう
──今回はBeeTVという主にケータイで見るドラマということで、尺も1話が約15分と短めです。山下監督は普段、だいたい2時間くらいの映画を撮ることが多いと思いますが、そのあたりはどうでしたか。
基本、映画のスタッフで撮って、撮影期間も1カ月くらいだったので、そんなに映画撮影と変わりはなかったですね。まあ1話ずつ見せていかなきゃいけないので、終わり方くらいは考えましたが。
──毎回、引きを作らないといけないとか?
うーん、その辺もどうだろうな。自分ではあんまり考えてなかったかもしれないですね。ちょっとは意識しましたけど、自分もそんなにTVドラマのことわかってないので。まあ俺にTV的なものを求めてるとも思えないし(笑)。
──映画とドラマの違いってどんなところなんでしょう。
映画館だと暗い箱の中で2時間見させられるわけですけど、ドラマの場合は家で何かしながら見れるわけなので、お客さんに想像させるとか、ニュアンスを感じ取ってもらうってことはなるべく減らそうとはしてました。基本“見せる”ことに重きを置いているというか。映画だと見せないことで想像させたりできますけど。それこそ昼ドラなんて、洗い物しながらでもセリフだけで全部話がわかるじゃないですか。「あ、いま刺されたな」とか(笑)。まあそれは極論で、僕にはできないですけど。
──ドラマは途中から見てもわかりますからね。
でもねむさんの原作もそうかと言ったらそうではなくて、想像させてくれる隙間がいっぱいある。だから何回も読めると思うんですけど。自分はそっちの、想像させてくれるもののほうが好きなので、100%そういうドラマの作り方をしているわけではないですけど、なるべく不親切な部分はなくそうとはしました。
せっかく映像にするのであれば、ある種のスペクタクルを
──特に悩んだシーンはありますか。
いちばん悩んだのは第10話の、エレベーターでのシーンですね。あそこは原作にはないシーンだし、やっぱりねむさんも悩んでたので、名古屋まで行って打ち合わせしました。
──原作とは違うシーンだったので驚きましたが、とてもテンポがよくて面白かったです。
もちろん原作と同じように、2人だけの世界、というような見せ方もできたんですけど、せっかく映像にするのであれば、ある種のスペクタクルというか、クライマックスがあったほうがいいと思ったので。Pデザインを中心にして、半径100メートルくらいだけで動いてる世界なので、ああいったアクションがあればいいだろうなと思ったし。もちろん着地点が「ももこの成長」という点は、変わらず一緒なんですけど。
──では最後に、原作ファンの方へ見どころをお願いします。
キャラクターやストーリーの違い、流れる空気感の違いを確認する作業でもいいんですけど、原作ファンだったらやっぱり見どころはキャラクターに尽きると思います。原作はそれでもう完成されているものですからひとまず横に置いておいて、ドラマ版では本田翼の魅力、オダギリジョーさんの魅力を見ていただければ。俺らも本田さんをお芝居で原作のももこに近づけるという作業はしていなくて、ももこに本田翼本人の持っているものをプラスしている感じです。そのあたりを楽しんでもらえたらうれしいですね。
» 作品紹介
- ドラマ「午前3時の無法地帯」
パチンコ専門のデザイン会社Pデザインに勤めはじめた若きデザイナー、ももこ。ひとくせもふたくせもある先輩たちに囲まれて、日々、仕事に恋に全力投球!! 毎日怒られながら、徹夜しながら、真正面から仕事とぶつかりあって大きくなっていくももこ。忙しすぎて彼氏とうまくいかなくなった時に出会った、年上のミステリアスな男性とももこの恋はドキドキがいっぱい! 誰にでも起こりそうな感情移入度120%のラブストーリー。
キャスト
本田翼、オダギリジョー、青柳翔、和田聰宏、永岡佑、木南晴夏、宇野祥平、河井青葉、碓井将大、藤本泉、逢沢りな、丸高愛実、山田真歩、中別府葵、吉永淳
スタッフ
脚本:高田亮
監督:山下敦弘(#1~4、10~12)、今泉力哉(#5~9)
企画プロデュース:三宅裕士
プロデューサー:龍貴大、根岸洋之、梅村安
主題歌:moumoon
制作:マッチポイント
製作・著作:BeeTV
ねむようこ
2004年フィール・ヤング(祥伝社)にてデビュー。身近な女の子を魅力的な描線で描き注目を集める。2008年より同誌にて「午前3時の無法地帯」を、2009年より続編となる「午前3時の危険地帯」を連載。2011年からは月刊flowers(小学館)にて「とりあえず地球が滅びる前に」を、2012年からはフィール・ヤングにて「トラップホール」を連載中。2013年3月、代表作「午前3時の無法地帯」がBeeTVにてドラマ化を果たす。