コミックナタリー PowerPush - 午前3時の無法地帯

新米デザイナーの恋物語が豪華キャストでドラマ化 ねむようこ&山下敦弘監督が明かす映像化裏話

やりたいことがなかったら、今も勤めてたかもしれない

──ねむさんは会社勤めをされているとき、マンガは描かれてたんですか?

マンガはずっと描いていて投稿もしてましたけど、会社に勤めてるときはまったく描いてなかったです。そんな暇なかった……。でもある日、夜中に仕事をしていて、「あれ、私マンガ家にならなくていいのかな」ってふと思って。いまここで、このまま仕事してたらマンガ家にはなれない。描かなきゃなれない。宝くじと一緒で、買わなきゃ当たらない、みたいな。それで会社を辞めて投稿しはじめたんです。

──「午前3時の無法地帯」は、ご自身の経験を踏まえて描かれていたわけですが、イラストレーターを目指していたももこは最終的に会社を辞めずに、今の職場にプライドを持てるようになって、「仕事ナメんなよ」って言えるようになって終わる。そのラストにご自身を投影しようとはしなかったんですか?

原作ラストの1コマ。

たぶん、私自身その会社をそんなに辞めたかったわけじゃないんです。周りも面白い人たちで楽しかったし、辞める直前は仕事にも慣れてきて、回せるようになってきてたし。マンガっていうやりたいことがほかになかったら、今も勤めてたかもしれない。もしかしたら、そんな自分のもうひとつの可能性を反映しているラストだったのかもしれないですね。

──じゃあもしマンガ家になっていなかったら、ももこのような人生を選んでいたかもしれない。

そうですね。ぶつくさ文句言いながら仕事し続けてたかも。もちろんしんどいこともありましたけど、楽しかったです。すごくいい経験でした。

──ももこも、別にデザイン業に燃えて著名クリエイターになってやろうとか賞に応募するとかいうわけでもなくて。このあたりの温度感がまたリアルというか。

でも仕事ってそういう部分が多い気がして。それ以上でもそれ以下でもない、ただただ仕事なんですよね。みんな「やりたくねえ」とか愚痴をこぼしながらも働いてるし。そういうノリのマンガが描きたかったんです。女の子デザイナーの立身出世伝がやりたかったわけじゃなくて。

仕事が死ぬほど辛いなら辞めていいよ

──いまのマンガ家という仕事はどうですか?

マンガは、会社時代の仕事とはもうちょっと違うと思います。意味も内容も。マンガは自分の考えていることを、脳みその中身を人に見せるっていう仕事なんで。仕事というより、生活そのものという感じ。そういう意味では、マンガは仕事って感じじゃないですね。スケジュール組んだり、作画してるときとかは仕事っぽいですけど(笑)。

「午前3時の危険地帯」1巻

──デザイナーだけじゃなくて、エディターとかライターとか、「午前3時」に共感する女の子はいっぱいいると思うんですが、そういう人たちにねむさんがアドバイスできることってありますか。

うーん、そういう人に言いたいのは「辞めていいよ」ってことですかね。だから私、続編の「危険地帯」のラストだけは、絶対にこれって決めてたんです。ももことは違って、たまこは最終的に会社を辞めてしまう。大切なのは辞める辞めないじゃなくて、人生で何を重視するかってことなんですよね。仕事じゃなくて自分の人生に責任を持つべきだと思うので、仕事が死ぬほど辛いなら辞めていいんです。頑張る場所を間違えないでほしい。

──では最後にドラマの見どころをお願いします。

小道具のホワイトボード。ももこだけ「七瀬」と手書きになっている。

メディアが変わったときにいままでのファンの方が気になるところって、やっぱり「ここが違う!」みたいなところだと思うんですが、私は逆に違うところを楽しんでもらえたらと思います。ドラマ「午前3時」のチームは本当にこちらの意見を聞いてくださったし、原作をすごく尊重して作ってくださったんですが、それでも違いはどうしても出てくる。そういうところを楽しんで見てみてほしいです。

──映像だからこそできることがありますしね。

あ、あと小道具! すごく細かいところまでこだわってくれてるんです。発注書とか、輪島さんの机に貼ってあるメモとか。アップで映ることなんて全然ないのに、ちゃんと作られていてすごい。びっくりしたのは、行き先を書くホワイトボードがあるんですが、みんなの名前はマグネットで作ってあるのに、ももこは新入社員だから(まだマグネットができてなくて)手書きなんです。そういう細かいところにいちいち感動しちゃった。そういうところも楽しみのひとつだと思います。

ドラマ「午前3時の無法地帯」

パチンコ専門のデザイン会社Pデザインに勤めはじめた若きデザイナー、ももこ。ひとくせもふたくせもある先輩たちに囲まれて、日々、仕事に恋に全力投球!! 毎日怒られながら、徹夜しながら、真正面から仕事とぶつかりあって大きくなっていくももこ。忙しすぎて彼氏とうまくいかなくなった時に出会った、年上のミステリアスな男性とももこの恋はドキドキがいっぱい! 誰にでも起こりそうな感情移入度120%のラブストーリー。

キャスト

本田翼、オダギリジョー、青柳翔、和田聰宏、永岡佑、木南晴夏、宇野祥平、河井青葉、碓井将大、藤本泉、逢沢りな、丸高愛実、山田真歩、中別府葵、吉永淳

スタッフ

脚本:高田亮
監督:山下敦弘(#1~4、10~12)、今泉力哉(#5~9)
企画プロデュース:三宅裕士
プロデューサー:龍貴大、根岸洋之、梅村安
主題歌:moumoon
制作:マッチポイント
製作・著作:BeeTV

ドラマ「午前3時の無法地帯」はBeeTVにて配信!

ねむようこ

プロフィール画像

2004年フィール・ヤング(祥伝社)にてデビュー。身近な女の子を魅力的な描線で描き注目を集める。2008年より同誌にて「午前3時の無法地帯」を、2009年より続編となる「午前3時の危険地帯」を連載。2011年からは月刊flowers(小学館)にて「とりあえず地球が滅びる前に」を、2012年からはフィール・ヤングにて「トラップホール」を連載中。2013年3月、代表作「午前3時の無法地帯」がBeeTVにてドラマ化を果たす。