恵庭が2013年に小説投稿サイトにて発表した「5人の王」は、5人の王が治める国を舞台に、妹の身代わりとなって青の王に仕えることになった少年・セージを描くファンタジーBL。小説は全3巻と外伝全2巻が発売されており、イラスト担当の絵歩によるコミカライズは、Daria(フロンティアワークス)にて連載中だ。
電子書籍サービス・ブックパスでは、コミカライズ版「5人の王」3巻の発売を記念し、読み放題キャンペーンを展開中。これに合わせコミックナタリーは恵庭と絵歩それぞれへのメールインタビューを行い、「5人の王」に対する思いや今後の展開について語ってもらった。
構成・文 / 増田桃子
神の血を引く5人の王が治める国・シェブロンを舞台にしたBL長編ファンタジー。それぞれ青の王、赤の王、緑の王、紫の王、黒の王と呼ばれる王たちの中でも、傲慢で冷酷といわれる青の王・アジュールのもとに、「星見」と呼ばれる神の力を持つ妹の身代わりとして少年・セージがやってくる。しかしセージは、偶然出会った赤の王・ギュールズに淡い恋心を抱くように。人々の想いが交錯する中、数々の苦難を乗り越え、セージが最後に選んだ未来とは……。
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セージ
本作の主人公。唯一の家族である妹・ヒソクの身代わりとして青の宮殿にやってくる。自分には妹のような特殊能力はないと思っているが……。
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青の王(アジュール)
5人の中で一番の権力を持ち、シェブロンの中央を治める王。傲慢な男にも関わらず、臣下からの信頼は厚い。
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赤の王(ギュールズ)
シェブロンの最も豊かな地である南方を治める王。穏やかで優しく、子供のような一面も持つ。
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シアン
青の王に仕える近衛隊長。博識で青の学士とも呼ばれている。
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ウィロウ
緑の王に仕える建築士。自由奔放で怖いもの知らず。
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グリニッジ
緑の王の側近。厳格で真面目な性格。
ルリ
青の王に仕える侍女。優しく穏やかな女性。
原作:恵庭メールインタビュー
──「5人の王」が生まれた経緯、また長編のBL作品を描こうと思った理由を聞かせてください。
まず、抱いた相手の肌にしるしが浮き出るという設定を思い付きました。しるしに印象的な名前をつけたくて「ティンクチャー」にしたのですが、これは紋章学に使われる用語で、紋章には原色が5色使われるという記述から、5色のしるしが出てくる物語はどうかなと想像が膨らんでいきました。コミカライズ版2話目くらいまでの展開を考えただけで書き始めたので、長編にするつもりはなかったのですが、設定を盛り込むうちに驚くほど長くなってしまいました。
──絵歩さんはもともと小説の挿絵も手がけていらっしゃいますが、絵歩さんの絵を見たときの印象や、感想など聞かせてください。
初めて拝見したのはキャラクターのラフだったかと思いますが、特徴を細かなところまでとらえてくださっており、さらに私が文章で表現できなかった、カッコよさやかわいらしさが際立っていて感激しました。特に小説の表紙の青の王を見たときには、圧倒的なカッコよさに震えました。これは、かなり性格に難があっても許されるな……と。セージも挿絵のときから可愛く描いてくださっていましたが、コミカライズでは表情がいきいきしていていっそうかわいらしく感じました。コミカライズではいつも、キャラクターの仕草や笑い方などが性格にぴたりとあっているのがすごいなと思います。
──コミカライズ版を初めて読んだときはどう思われましたか?
とてもうれしかったです! 小説の挿絵が素敵でしたので、絵歩先生のイラストをまた拝見できるのがとにかく楽しみでした。挿絵には登場しなかった脇役や、見てみたいシーンなどたくさんありましたが、コミカライズではどんなふうに描写されるのか想像が追いつかず、1話目を見て驚きました。衣装や建物の緻密さにびっくりして……コミカライズの大変さにようやく気づき、絵歩先生にお引き受けいただけて心底ありがたかったです。
──キャラクターが生まれた経緯について教えてください。
主人公のセージと青の王は、国のてっぺんとドン底という両極端な立場にしました。架空の国なので立場が違うほうが世界設定を説明しやすいかなと。性格は違いますが、ふたりとも周囲を振り回すタイプなので、振り回されそうな神経質な人がいれば主人公たちの強引さが際立つかなと思い、シアンがうまれました。ウィロウは暗い展開が続いたので、明るい要素として登場させました。赤の王は三角関係の中で、青の王のライバルでしたので、青の王とは正反対の性格にしたところかなりいい人になってしまい、付き合うなら赤の王のほうが……と何度も思いました(読者の方にもすごく言われました)。
──ファンタジーを描く楽しさ、逆に難しさはなんでしょうか。
最も楽しいのは次々と事件を起こせるところでした。ちょっとした三角関係でもバレたら命が危ない……とおおごとになったり、あたりまえのように超能力を出せたので、事件のきっかけには事欠かなかったです。舞台が現代だと突飛な展開を書くのは尻込みしてしまうので、ファンタジーの自由さに助けられました。難しさは感じなかったのですが、記憶力に自信がないので設定を忘れないように気をつけるのが大変でした。
──では「5人の王」3巻の見どころを教えてください。
これまでは、妹を守るために青の王に仕えるというのがセージの目的でしたが、王様になったことで状況が一変します。グリニッジやウィロウなど、緑の宮殿のキャラクターも続々と登場し、新しい展開が始まったと、新鮮に感じてもらえるのではないかなと思います。
──3巻以降の展開は、見どころはなんでしょうか。
セージが少しずつ過去の出来事を知り始めていますが、今後の展開にも大きく関わっています。過去に何が起きたのかあきらかになるにつれて、青の王とセージの関係も変化していきますので、そのあたりをお楽しみいただければうれしいです。
──最後に、作品を応援してくれている読者の方や、まだ「5人の王」に出会っていない方々に、メッセージをお願いします。
応援してくださる方々のおかげで、書籍化、コミカライズへとつながっていくことができました。このような特別な機会を与えていただき、夢のような心地でいます。そして、読んだことはないけれど、兄妹愛と超能力が無性に気になるという方がいらっしゃいましたら、お手にとっていただけますとうれしいです。
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作画:絵歩メールインタビュー
- ブックパス ダリアコミックスeキャンペーン
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BLコミック誌Dariaが創刊20周年で盛り上がりをみせる中、コミカライズ版「5人の王」1巻をはじめ、ダリアコミックスeの人気作品がブックパスでは読み放題!
期間2018年3月30日(金)12:00~5月31日(木)
マンガ版「5人の王」3巻電子版は、ブックパスでは5月22日より配信予定。
- 絵歩・恵庭「5人の王③」
- 発売中 / フロンティアワークス
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コミックス 700円
- 恵庭(エニワ)
- 10月30日生まれ。A型。小説家。小説投稿サイトに投稿していた「5人の王」で、2013年にフロンティアワークスより小説家デビュー。当作品では、BLとしての恋愛に加え、過去と未来の入り組んだ時間軸や、壮大な秘密を解き明かしていく過程を、スピード感あふれる文章で見事に描き上げた。また、個性的なキャラクターが多く登場することで物語に深みを出している。他、同社より2作品の文庫小説を発表。
- 絵歩(エポ)
- 10月7日生まれ。A型。マンガ家・イラストレーター。2013年の「5人の王」(フロンティアワークス)の挿絵で本格的にデビュー。のちに、コミカライズも担当する。文章からイメージして描き起こしたファンタジー世界のイラストに定評があり、ボーイズラブ小説、一般小説でもイラストレーターとして多数起用される。現在は雑誌Dariaにて「5人の王」のコミカライズを連載中。ミステリーと鳥好き。