「コードギアス 奪還のロゼ」天﨑滉平×古川慎インタビュー|新たな「コードギアス」の道を示した物語の終着点とは

「コードギアス」シリーズの新作アニメーション「コードギアス 奪還のロゼ」の最終幕が、現在全国で公開中。“ナナシの傭兵”と呼ばれる兄弟・ロゼとアッシュが、強大な力で合衆国日本・旧ホッカイドウブロックを占領するネオ・ブリタニア帝国に立ち向かう姿が全4幕で描かれた。

コミックナタリーでは、最終幕公開を記念しロゼ役・天﨑滉平とアッシュ役・古川慎にインタビューを実施。ロゼとアッシュがこれまでたどった道のり、最終幕で見せた姿は、2人にはどう映ったのか? 収録の裏話や2人がプライベートで劇場を訪れた際のエピソードとともに語ってもらった。また、「コードギアス 奪還のロゼ」を経て“とんでもない技”を身に着けたとされる天﨑。古川がそんな天﨑を激賞する様子もチェックしてみよう。なおこのページには「コードギアス 奪還のロゼ」最終幕終盤までのネタバレを含むため、末鑑賞の場合はご注意を。

取材・文 / 粕谷太智撮影 / ヨシダヤスシ

「コードギアス 奪還のロゼ」あらすじ

「コードギアス 奪還のロゼ 最終幕」キービジュアル

「コードギアス 奪還のロゼ 最終幕」キービジュアル

光和7年、ネオ・ブリタニア帝国に占領された合衆国日本・旧ホッカイドウブロックに、「ナナシの傭兵」として知られる傭兵兄弟がいた。
非常に優れた運動能力とナイトメアフレームの高い操縦技術を持つ兄のアッシュ、頭脳明晰で情報収集、作戦指揮を担当している弟のロゼ。
シトゥンペバリアと呼ばれる難攻不落のエネルギー障壁により4年間、黒の騎士団の解放作戦を退けてきた第100代皇帝カリス・アル・ブリタニアと、彼に仕えるノーランドら皇帝直属の騎士アインベルクたちは、旧ホッカイドウブロック領主の娘・皇サクヤを捕らえ、再び世界を混乱へと陥れようとしていた。
依頼を受けたロゼとアッシュは、日本人レジスタンスの七煌星団とともにサクヤ奪還のため、ネオ・ブリタニア帝国に立ち向かう。


「コードギアス 奪還のロゼ」最終幕予告PV

「ここまで演じてきてよかった」と思えるラスト

──5月から順次上映されてきた「コードギアス 奪還のロゼ」がついに最終幕を迎えました。完結した物語を観た感想をまず教えて下さい。

天﨑滉平 僕はすごく好きな終わり方でした。 個人的な感想としては、いろんなものを失ったり、傷つけたり傷つけられたりしながらも、それぞれが成長して得たものがあって、それが未来につながる、みたいなお話が大好きなので。つらいことも含めていろんな思いもありましたけど、ここまで演じてきてよかったと思えるラストだったなと、今振り返ったときに思えます。

天﨑滉平

天﨑滉平

古川慎 「奪還のロゼ」は、「反逆のルルーシュ」のオマージュを感じられる展開・演出がふんだんにちりばめられていて、昔から「コードギアス」が好きだった身としては、それがうれしかったです。しかもそれが、最終幕ではしっかりとロゼ、アッシュ、サクヤの物語というところに帰結して、これはただのオマージュではなくて、「コードギアス」という名を冠した、1つの新しい作品なんだという終着点にたどり着けたのが非常に印象的でしたし、誇らしい気持ちにもなりました。

──ラストには衝撃の展開も待っていました。

古川 アッシュの人生は他人に振り回される要素が多すぎるんですよね。彼が生き続けている理由って、自分の心を救ってくれた皇重護の娘・サクヤを彼の代わりに守ることだし、その発端となったノーランドへの復讐という部分も非常に大きくて。それは同じことがサクヤにも言えるんです。彼女も、自分の影武者になった春柳宮サクラを助けるためにここまで戦ってきて。その根底には、父・重護を殺した敵を倒したいという思いもある。他者や世界に振り回されてきた2人だから、成し遂げるべきことを終えた後で、迎えるべき未来がしっかりとあってほしかったな、と改めて思えました。

「コードギアス 奪還のロゼ」より、アッシュ。

「コードギアス 奪還のロゼ」より、アッシュ。

「コードギアス 奪還のロゼ」より、ロゼ。

「コードギアス 奪還のロゼ」より、ロゼ。

ロゼの秘密が明かされる第1幕の山場で「ッハァ」

──おふたりはそれぞれ劇場に足を運んだそうですが、印象に残ったファンの反応などありましたか?

天﨑 僕が1人で観に行ったとき、隣に座った方が「コードギアス」シリーズにすごく詳しい方で。その方がお友達に作品を勧めて、一緒に劇場に連れてきていたみたいなんですね。お友達のほうは、「反逆のルルーシュ」は知っているけど、スピンオフは通っていないようでした。そのお隣の方が、第3幕を観終えて、お友達に「どれが過去シリーズのキャラクターだったかわかる?」って聞いていたんです。そしたらお友達は、「なんとなくわかった。明らかに主人公なオーラを出している人たちがたくさんいたから」と言っていて。そこで、オーラ出てるんだな!って(笑)。

古川 髪の色とかでわかるのかな(笑)。

天﨑 デザインとか声とかね(笑)。でも、「『奪還のロゼ』を観てほしい」って言って、お友達を連れてきてくださっているファンの反応が劇場で見られたのはうれしかったですね。

──ロゼの正体はサクヤだと判明したところもリアクションが起きそうですが。

天﨑 「ッハァ」っていう息が皆さん漏れてましたね。あとはやっぱりラズベリーちゃんのシーンかな。

古川 ああ、第3幕でロゼが、自分がラズベリーだったと明かす最後のあのコメディシーンね。

古川慎

古川慎

──アッシュがロゼの正体はサクヤだと知った後のやり取りですね。

古川 第1幕から第3幕までって、必ず1カ所はしっかりと笑いどころがあって。劇場で笑っている人がいたよってことも教えてもらっていたんです。でも、僕が公開から時間が経って観に行っていたのもあって、何回か観てもう内容がわかっている方が多いのか、1幕と第2幕では特に笑い声は聞こえてこなかったんですよ。それが、3幕ではしっかり聞こえましたね(笑)。

天﨑 僕は第3幕を初日に観に行ったんですけど、大爆笑でしたね。その後に、しばらくしてから古川くんと、サクヤ役の上田(麗奈)さんと観に行ったときも、あのシーンは同じだけ笑いが起きてました。

古川 観に行ったのが最終幕が始まる直前だったので、あれはもう鉄板になっていたんだと思います。

天﨑 あのシーンでお笑いを学びましたよ。やっぱり緊張と緩和なんだなって。ちょっと前まで、サクヤが覚悟を決める決めないって、すごくシリアスな話からのあのシーンだから(笑)。

古川 そうだよね。「最近まったく会えていないんだ、ラズベリーさんに」じゃないんだよ(笑)。

──アッシュがいつもの渋い声で言っているのもおかしかったです。

古川 あれは演じていて楽しかったですね。

アクションシーンは男の子の夢が詰まった“激アツ”な展開

──「奪還のロゼ」では、ナイトメアフレームの戦闘シーンの進化もすごいですよね。第1幕のZi-アポロの戦闘は思わず声が出ました。

古川 台本のト書きを読んだときから、どういう映像になるのか楽しみでした。第1幕の戦闘シーンは、BGM、演出、作画と、男の子が惹かれるものがすべて詰まっていて。何回も何回も巻き戻して楽しませてもらいました。

天﨑 僕はまず、ロゼに専用機があるというのもすごくうれしかったです。それにその専用機のZi-アルテミスが、アッシュの乗るZi-アポロと合体するなんて! あれは、男の子の夢が詰まった激アツなシーンでしたね。

「コードギアス 奪還のロゼ」より、Zi-アルテミスとZi-アポロがエンゲージしたZi-オルテギア。

「コードギアス 奪還のロゼ」より、Zi-アルテミスとZi-アポロがエンゲージしたZi-オルテギア。

──合体を“エンゲージ”と呼ぶのもまた男心をくすぐられました。

天﨑 あとは、七煌星団の戦闘演習のシーンも好きでした。アッシュがハルカと対峙して、「無駄な動きが多い」なんて、ハルカに戦い方を指南したりする何気ない場面が、後にアッシュがクリストフから戦闘を教わっていたっていう過去の回想につながっていく。その流れが、すごく美しくて。

──「無駄な動きが多い」というあの言葉も、アッシュが戦闘の師匠であるクリストフからかけられていたという。

古川 アッシュがすごく強いのはそこまでのシーンでわかっているから、あの回想だけでクリストフの株も自動的に上がるんですよね。

天﨑 そうなんだよ!

古川 裏でニヤニヤしながらギアスの研究をしている文系な人かと思ったら、実はめちゃめちゃ戦闘できますっていう。戦闘の強さを裏付けるセリフはまったくないのに、アッシュの師匠として描かれることで、クリストフの脅威が伝わるところもまた面白いです。

──無駄な動きを少なく急所を打つというアッシュの戦い方は、最終幕のラストバトルにも表れていますよね。その一貫した戦闘スタイルというのも、今作のバトルシーンを魅力的なものにしている要素の1つな気がしました。

古川 僕はラストバトルだと、ファウルバウト(ノーランドのナイトメアフレーム)にも注目していただきたくて。あれこそ、ノーランドの理念がそのまま出ている戦い方だと思うんです。自分から追うんじゃなく、来たものを虫のように払い落とす。人間を虫けらだと思っている、そういう戦い方だよなとわかったときに、「こいつふざけんな、絶対にぶっ倒してやる」って思いました(笑)。

──はははは。

古川 身動きもあまり取らずビームを撃っているっていう傲慢さと圧倒的な強さを併せ持った戦い方をしてくるノーランドに対して、正面切って挑んでも勝てないなと思ったアッシュたちが、どういうふうに切り抜けていくのか。そこで、ノーランドが蔑んでいる人間が協力し合って倒しに行くっていう、その構図もエモさを感じてよかったですね。

「コードギアス 奪還のロゼ」より、ノーランドのナイトメアフレームであるファウルバウト。

「コードギアス 奪還のロゼ」より、ノーランドのナイトメアフレームであるファウルバウト。

天﨑 そのアッシュとサクヤの姿が、収録のときの古川くんと上田さんに重なったんです。アッシュは先にノーランドと1人で戦っていて。だけど、すごい反応速度であったり、積み重ねてきた戦闘能力だったりっていう、アッシュが持ってるものだけでは太刀打ちできなかった。アッシュの力だけでもダメ、サクヤの力だけでもダメ。だから2人の力を合わせて戦うことになる。収録では、ビームを撃っているシーンに画がついてなかったので、古川くんと上田さんにとって情報はお互いの声だけだったんです。お互いがお互いを信じて立ち向かっていく姿が、アフレコで見た2人と、映像になったときのアッシュとサクヤとでまったく一緒に感じられて。そこですごく感動しました。

古川 あのシーンは、別々の収録だったら絶対にここまで緊迫してなかったな。

天﨑 そうだよね。

古川 一緒に録れてよかったです。本当に上田さんには助けていただきました。