コミックナタリー Power Push - 「機動戦士ガンダム 鉄血のオルフェンズ」
自分を信じることしか方法のない少年たち 長井龍雪監督×シリーズ構成・岡田麿里 対談
アニメ「機動戦士ガンダム 鉄血のオルフェンズ」第2期の放送が、10月2日にスタートする。「厄祭戦」と呼ばれる大きな戦争が終結してから約300年後を舞台にした同作は、民間警備会社に所属する三日月・オーガスら少年たちを中心に描く青春群像劇だ。監督は長井龍雪、シリーズ構成は岡田麿里が務め、「あの日見た花の名前を僕達はまだ知らない。」「とらドラ!」でもタッグを組んだ2人が物語を紡いでいく。
オンエアを目前に、コミックナタリーでは長井と岡田の対談をセッティング。キャストの演技や、キャラクターデザインの原案を担当している伊藤悠のイラストから影響を受けたというキャラクター像、「正解」でも「間違い」でもなく、自分たちを信じることでしか進む方法を知らない、鉄華団の少年たちについて話を聞いた。
取材・文 / 熊瀬哲子
キャストの演技を聴いて、キャラクターの方向性が変わった
──これまでに「あの日見た花の名前を僕達はまだ知らない。」「とらドラ!」などの作品でもタッグを組まれてきたおふたりですが、「鉄血のオルフェンズ」ではどのように制作を行っているのでしょうか。
長井龍雪 「オルフェンズ」は、もともと自分のほうで「こういう話にしていきたい」「こういうことをやりたい」と考えていたビジョンがあって、岡田さんにはそこにアイデアを練り込んでいただきながら脚本に落とし込んでもらっています。
岡田麿里 私自身、監督のアイデアにはすごく好感を持っているので、話し合いをしていても「そういうのは嫌だ」みたいなことにはあまりならないんですよね。戦闘や時勢など、私がわからないところがあると相談に乗っていただいたりしています。「オルフェンズ」はオリジナル作品なので、それこそ第1期は何もないところからキャラクターのことを考えていかなければならなかったんですけど、第2期にもなると、キャラに対して知り合いのような感覚も芽生えていて。「この子はこういうことをしない」とか、そういった感覚がスタッフ間でも共通認識としてあるので、新しい脚本家の方に入っていただいても伝えやすくなりましたね。
長井 第1期のときは、役者さんの声を聴いたところでキャラクターの性格やその後の展開が変わっていくこともあったんですよ。それこそ、アインはそんなに出番がある予定ではなかったし。
岡田 内田(雄馬)さんのアフレコを聴いて、「すごく主人公声だよね」っていう話になったんです。もともとアインのルックスも、「この子、ほかの作品だったら主人公でもおかしくないよね」って言ってて。ちょうどアフレコが始まったあたりが、アインの今後の身の振り方を考えていくタイミングだったので、演技を聴いてから「アインはこうしていこうか」と方向性が変わっていきましたね。
長井 ガエリオも松風(雅也)さんの人のよさそうないい声で、どんどんキャラクターが立っていって。当初はマクギリスの友達ポジションくらいにしか考えていなかったんですけど、やっぱり根が優しい人っていうのは声からにじみ出てしまうので(笑)。予定していたものとは違う方向に成長していったキャラでしたね。
こういう本です、どういうふうに思います?(長井)
──オーディションの際にも声優さんたちの声は聴いていると思うのですが、実際にアフレコが始まると新しく見えてくるものがあるくらい、印象が変わるものなんでしょうか。
長井 オーディションのときは声質とかで選ぶんですけど、実際のアフレコになると役者さんもそれぞれの解釈で芝居をつけてくださいますし、だんだんと役者さん自身の中にも膨らんでいくものがあると感じるんです。そういうものは、こちらもできるだけ汲み取っていきたいなと。特にオリジナル作品の場合は決まりきっていない部分もあるので、役者さんのアプローチを受けて、キャラクターにフィードバックすることがあります。それはどのキャラに対してもあるのかなと。シノなんて、モビルスーツに乗せるか乗せないかも決まってなかったですからね。
──へえ!
長井 それがやっぱりアフレコを聴いて、「村田(太志)さんは乗せるしかないでしょ、この演技は」って(笑)。
岡田 そう、そう(笑)。シノは観ていて気持ちいいですしね。
長井 「モビルスーツに乗ってもらうのはアリかもしれない」みたいな。
岡田 鉄華団の子たちは特に野郎の集まりなので。“野郎セリフ”って、結構性格の差をつけづらいんですよ。野郎でも生真面目なことを言う奴、粗雑な奴。どうしてもいくつかのパターンに収まりがちなんですけど、役者さんの声が入ることでそれぞれのキャラクターにグラデーションができるんです。
──演技に影響を受けることもあるということですが、監督からキャストの皆さんに指示を出されることもあるんですよね?
長井 もちろんその時々で細かい指示は出すんですけど、大まかには「こういう本です。読んでみてください。どんなふうに思います?」ぐらいの気分なんですよ。
岡田 第1期では監督から細かく指示を出していたところもあったと思うんですけど、特に第2期の始まりでは「こんな感じです」って言って渡してましたね(笑)。
長井 (笑)。第2期になって、第1期からのメインキャストの皆さんは作品についての意識が固まっているので、新しく出演する方々にも第1期からのキャストの皆さんを見ていただければ、きっと作品の雰囲気がわかっていただけるんじゃないかなと思ったんです。
岡田 第2期から新しく入っていただいた声優さんたちも、皆さん素晴らしくて。すでに今回もアフレコの影響を受けて、シナリオやキャラクター設定を調整している部分もあるんです。
次のページ » 「そっか、こいつオルガのこと好きだったんだ」(長井)
- 「機動戦士ガンダム 鉄血のオルフェンズ 第2期」
2016年10月2日(日)より毎週日曜17:00~
MBS/TBS系列全国28局ネット
キャスト
- 三日月・オーガス:河西健吾
- オルガ・イツカ:細谷佳正
- ユージン・セブンスターク:梅原裕一郎
- 昭弘・アルトランド:内匠靖明
- ノルバ・シノ:村田太志
- クーデリア・藍那・バーンスタイン:寺崎裕香
- アトラ・ミクスタ:金元寿子
- ハッシュ・ミディ:逢坂良太
- ザック・ロウ:古川慎
- デイン・ウハイ:木村昴
- ラディーチェ・リロト:深川和征
- ククビータ・ウーグ:斉藤貴美子
- マクギリス・ファリド:櫻井孝宏
- ラスタル・エリオン:大川透
- イオク・クジャン:島崎信長
- ジュリエッタ・ジュリス:M・A・O
- 石動・カミーチェ:前野智昭
- ほか
©創通・サンライズ・MBS
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長井龍雪(ナガイタツユキ)
1976年生まれ、新潟県出身。アニメーション監督、演出家。主な代表作に「とらドラ!」「とある科学の超電磁砲」「あの日見た花の名前を僕達はまだ知らない。」「心が叫びたがってるんだ。」など。
岡田麿里(オカダマリ)
1976年生まれ、埼玉県出身。脚本家。「あの日見た花の名前を僕達はまだ知らない。」「心が叫びたがってるんだ。」「花咲くいろは」「LUPIN the Third -峰不二子という女-」など、数々の作品でシリーズ構成や脚本を務める。