コミックナタリー Power Push - 「覆面系ノイズ」
切なさと激情に満ちた「覆面系ノイズ」福山リョウコと早見沙織が語るアニメ化への気概
ニノは共感できない主人公だってめっちゃ言われる(笑)(福山)
──アフレコに先駆けて歌のレコーディングが進められていたんですね。
福山 そうなんですよ。レコーディングした歌をもって映像を組み上げているので、主題歌の「ハイスクール」とか数曲をまず歌ってもらった感じでしたね。
──早見さんはどんな気持ちでニノを演じていますか?
早見 演じてるときは、「今日を生きる!」「全力投球!」的な感じですね(笑)。私はいつも原作を見ながらアフレコをするんですけど、福山さんの絵柄からはものすごい激情や衝動が伝わってくるので、そこに委ねて演技していると思います。原作を読んでいても感じますけど、自分の心がものすごく揺さぶられるんですよね。「覆面系ノイズ」のそういう部分が私は好きなので、アフレコでもそこを強く意識するようにはしています。
福山 あー、すっごいうれしいです! ニノは共感できない主人公だってめっちゃ言われるんで(笑)、早見さんにそういう感想を言っていただけたのはホントにうれしい。
早見 共感するポイントって、どこに着目するかで変わってくると思うんですよ。私も、突然路上で歌い出すニノには共感できないし(笑)。
福山 あははは(笑)。確かにそうですよね。
早見 でも、心の中にある感情を言葉や文字では表現しきれないもどかしさを感じていたりとか、それでもなお声に出してみたい欲求があったりとか、そういうニノの気持ちは私もとってもよくわかるんですよ。同じような気持ちで「くー!」ってなることが自分にもよくあるので。
福山 それって早見さんが声優という仕事にものすごく力を込めているからですよね。そこは私も同じというか。このニノっていう主人公は、たぶん自分なんですよ。マンガを描くのが異常なくらい好きな自分がニノに投影されているところもあるんだなって後々気付いたんですよね。ニノはすごく変な人だから恥ずかしいんですけど(笑)。
早見 でもすごくわかります。私も表現することがすごく好きだし、自分自身でハッとする表現を出せたときに得られる充足感を味わうためにこのお仕事をしているところもあるんですよ。そういう部分で共感できるからこそ、私は「覆面系ノイズ」を読んでいて心揺さぶられるんだと思いますね。
──セリフをしゃべるニノと歌うニノ。その表現の仕方には何か違いはありますか?
早見 同じ人ではあるけど、臨み方は違っているような気がします。はっきり言葉として表現するのは難しいですけど……心の感じっていうのかな。
福山 あー、わかる気がします。
早見 歌のレコーディングでは「うわー!」って激情に駆られて歌うんですけど、心の芯では割と落ち着いている感じがあるんですよ。でもアフレコのほうでぶわっと感情を吐き出すシーンを録ると、終わった後もまだハーハー言ってるというか。感情の余韻が長引くような感じなんですよね。もちろんその度合いはシーンによって違うんですけど。
福山 そういう感覚で演じてくださってるなんて、すごくうれしいです。歌の録りでは心に落ち着いている部分があるっていうのはちょっと面白いですよね。
早見 まあそれも、完全に冷静じゃなくなると現場で何か言われたときに反応できなくなってしまうからであって。なので1%くらいは落ち着かせとかないとなって。
福山 1%! 意外と少ない(笑)。いやーすごいですね。プロの仕事ですよね、ホントに。
静寂を叫び声で貫くような表現は、アニメでより肌で感じられる(早見)
──福山さんはマンガとアニメの表現の違いについてどう感じていますか?
福山 当然のことですけど、絵が動く、音がつくという部分が最大の違いだと思いますね。ただ、紙面の利点は逆に音がないことだとも思っていて。マンガだとモノローグを使って曲のすごさなんかをいくらでも伝えることができてしまうんですよ。声に関してもいくらでもイメージを膨らませることができるから、そういう部分に限っては描き手としてとても楽なんです。実際に音楽や歌声が乗ると、それに対しての反応も当然出てくるわけじゃないですか。
早見 そうなんですよねえ。私もマンガを読んでいるときにはそこで鳴っている音や歌声を想像することもあるんですけど、今はそれを自分で実際にやることになるわけなので、そういうシーンが出てくるたびに、「わ、また出てきた!」って思っちゃいますね(笑)。作品内で歌について評論されているシーンがあったりするとものすごく気になっちゃうし。
福山 そうですよね(笑)。
早見 でも、静寂を叫び声で貫くような表現は、アニメになったことでもっと肌で感じられるようにはなっていると思います。マンガもアニメも根本的な部分では割と近いところがあるんじゃないかなとも思うんですけど、それぞれお互いにやっぱりいいところはありますよね。
──静かなブースの中で瞬間的に激情し、叫び声をあげなければいけない難しさもありそうですよね。
早見 そうですね。だから常に神経を集中させて臨んでます。思えば、これだけ毎回叫んでいる役柄は初めてかも(笑)。
福山 あははは(笑)。そうですよね。ホント変な人ですみません(笑)。
早見 いやでも気持ちの緩急がある役は今までにもあったし、自分としても好きなんです。静と動がはっきりしているニノは、その代名詞みたいな感じですね(笑)。楽しんで演じることができていますよ。
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アニメ「覆面系ノイズ」
あらすじ
歌が大好きな少女ニノは、幼馴染で初恋の相手モモと、作曲が得意な少年ユズ、 それぞれと幼いころに離れ離れになってしまう。
「いつの日か、歌声を目印にニノを見つけ出す……」2人と交わした約束を胸に、 信じて歌い続けてきたニノ。高校入学の日、彼女たちの運命は音となり、 唐突に鳴りはじめた……!
「ぼくたちは ほんとのこころを かくしてる」
スタッフ
原作:福山リョウコ(白泉社「花とゆめ」連載)
監督:髙橋秀弥
シリーズ構成:赤尾でこ
キャラクターデザイン・総作画監督:いとうまりこ
総作画監督:重本和佳子
プロップデザイン:樋口聡美
色彩設計:大塚奈津子
美術監督:諸熊倫子(スタジオ天神)
撮影監督:織田頼信
3D監督:柴山一生(IKIF+)
2DW・特殊効果:徳丸仁志、立花美紀
編集:池田康隆
音響監督:山口貴之
音楽:SADESPER RECORD(NARASAKI/WATCHMAN)
アニメーション制作:ブレインズ・ベース
キャスト
ニノ:早見沙織
ユズ:山下大輝
モモ:内山昂輝
ハルヨシ:小野大輔
深桜:高垣彩陽
クロ:福山潤
福山リョウコ(フクヤマリョウコ)
和歌山県出身。2000年にザ花とゆめ(白泉社)に掲載された「カミナリ」でマンガ家デビュー。2003年に花とゆめ(白泉社)で10代のモデルを主人公とした「悩殺ジャンキー」の連載を開始、同作がヒットし代表作となる。その後、2008年より2012年まで「モノクロ少年少女」を発表。2013年、バンドと片恋をテーマとした「覆面系ノイズ」の連載を開始。「覆面系ノイズ」は2017年に4月にテレビアニメ化、11月に実写映画化を果たす。
早見沙織(ハヤミサオリ)
東京都生まれの声優・ボーカリスト。2007年の声優デビュー後、アニメ「セキレイ」の結、「あの日見た花の名前を僕達はまだ知らない。」の鶴見知利子、「物語」シリーズの斧乃木余接など、毎シーズン主要キャラクターの声を数多く務め、またそれらキャラクター名義で歌うキャラクターソングにおいて、その歌唱力を高く評価される。2015年8月に自身がヒロイン役を担当するアニメ「赤髪の白雪姫」のオープニングテーマにして自作詞曲「やさしい希望」で待望のアーティストデビューを果たした。「映画『聲の形』」西宮硝子役、アニメ「覆面系ノイズ」の主人公・有栖川仁乃役ほか。