優等生風の見た目から話しかけづらい雰囲気を醸し出している女子・和田と、ギャルのような見た目で周囲から怖がられている山本という接点のなさそうな2人が、ショッピングモールのフードコートで放課後を過ごす「フードコートで、また明日。」。テンポよく無駄話を交わす2人の関係から、信頼できる相手と過ごす何気ない時間の特別さを感じることができるガールズコメディだ。全15話で完結した第1シリーズの内容を収めた単行本が発売され、新シリーズのスタートもすでに予告されている。
コミックナタリーでは単行本の刊行を記念して、モーニング娘。'21の生田衣梨奈に「フードコートで、また明日。」を読んでもらい感想を聞いた。活発なイメージが強い反面、実は深夜アニメをこよなく愛するサブカル好きの一面も持ち合わせている生田は、果たして同作をどう読んだのか。また、生田の同期でモーニング娘。リーダーを務める譜久村聖との関係性を「フードコートで、また明日。」における和田と山本に照らし合わせ、その共通点などを語ってもらった。
取材・文 / ナカニシキュウ 撮影 / 稲垣謙一
スタイリング / HONEY MI HONEY
見た目はギャルの山本だけど、中身はしゃべりたがりの和田
──「フードコートで、また明日。」は和田と山本という女子高生2人が毎日フードコートで待ち合わせをしておしゃべりを楽しむ物語です。生田さんはフードコートという場所に馴染みはありますか?
私、実際によくフードコートに行くんですよ。ちょうど今回のお話をいただいた前日にもショッピングモールのフードコートで「鬼滅の刃」ウエハースの開封式を1人でしていたので(笑)、「もしかしてそれを見られていたのかな?」って思っちゃうくらいのタイミングでしたね。今まで一度も現地でバレたことはなかったんですけど……。
──普段は芸能人オーラを消しているんですか?
できるだけ消すようにはしています。昔は“バレたい欲”が強かったので全然消せなかったんですけど(笑)、そこは大人になって落ち着いてきましたね。
──「フードコートで、また明日。」を読んでみて、まずどんなことを感じましたか?
フードコートのお話を描こうと思った作者の方がまずすごいなと。非現実的な舞台のほうがドラマが起きやすいイメージがありますけど、すごく日常的な舞台で、しかもほとんどそこから場面も変わらないですし。それと、キャラクターには見た目とのギャップを感じました。見た目がギャルの山本さんが意外と活発ではない性格で、一見おとなしそうな和田さんのほうが積極的に話を振る役割だったりとか。変化球で来るなあと思いました。
──和田は優等生っぽい見た目ながらけっこう感情の起伏が激しいタイプで、山本は派手そうに見えて実は弟にお弁当を作ってあげたりする家庭的な一面のある子なんですよね。
私自身は、見た目は山本さんに近いんですけど、性格的には和田さんのほうなんです。いろいろ話題を振ったり、好きなことについて話し出すと止まらなかったり。よく「生田はしゃべらなければいいのにね」みたいに言われるので(笑)、山本さんがうらやましいなと思いました。おとなしいギャルって、モテそうだなと。
──とはいえ、生田さんが急にしゃべらなくなったら心配されちゃいそうですけども。
そうですね(笑)。心配されないように、これからもよくしゃべってよく笑う人間でいます!
「好きなもんに金かけんのはフツーでしょ」
その言葉に勇気をもらえた
──「フードコートで、また明日。」は、そんな女の子のおしゃべりの楽しさが詰まった作品ですよね。和田と山本2人の対話だけで物語が進行するという。
「それ、どうでもよくない?」っていう内容の会話が多くて、リアルだなあと思いましたね。「クマをどうやったら倒せるか」みたいな話をするシーンがありましたけど、私もよく「もしゾンビに襲われたらどうするか」とか話してますし(笑)。女の子の日常会話って、普通はたぶん文字に起こしちゃうとつまらなくなると思うんですけど、このマンガで見るとすごく面白いものに思えます。
──切り取り方がすごく上手なんですよね。和田と山本の会話は一見支離滅裂なんですけど、気が付くと最初の話題をうまく回収していて。
現実の女の子はたぶん話の伏線を回収できないです(笑)。そこをうまく描いてくださっているから面白く読めるのかな。実はこのマンガ、うちのお父さんも読んで「面白いな」って言ってたんです。女の子が読んでこそ楽しい作品なのかなと思っていたんですけど、「お父さん世代の男性でも楽しめる作品なんだ?」っていう発見がありました。
──家族で楽しめる作品であると。
そうですね! いいキャッチコピーが出ました(笑)。
──(笑)。作中で特に印象的だったセリフを教えてください。
「好きなもんに金かけんのはフツーでしょ」という山本さんのセリフですね。和田さんがエイベル公爵(作中で和田がプレイするソーシャルゲームの登場キャラクター)のフィギュア欲しさにクレーンゲームにお金をつぎ込んで「3000円が水の泡…私は大バカ野郎です…」って凹むシーンで山本さんがかけてあげる言葉なんですけど、その和田さんの姿が私たちのファンの方に重なって見えたというか。私たちアイドルも生写真やグッズなどを買っていただく立場なので、そのことを山本さんが「フツーでしょ」って肯定してくれた気がして。
──なるほど、生田さんはエイベル公爵の立場でこの作品を見ることができるわけですね。その視点に立てる読者はかなり珍しいと思います。
確かに(笑)。ファンの方にはアイドルを応援することを無駄遣いだと絶対に思ってもらいたくないですし、「損はさせないよ」って言えるアイドルでありたいです。それに、私自身もアイドルやゲームが好きなので、推しにお金を使う楽しさは知っていますし、ふいに「こんなに使っちゃっていいのかな」と不安になったりする気持ちもわかるんですよ。こういうお話ってなかなかマンガの中には出てこないように思いますし、勇気をもらえるなと感じました。
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和田さんと山本さんの関係は、私と譜久村聖ちゃんみたい