FLOWが4月10日に約3年ぶりのニューアルバム「TRIBALYTHM」をリリースした。2004年に「GO!!!」がTVアニメ「NARUTO-ナルト-」のオープニングテーマとなって以来、多数のアニメ・ゲームの主題歌を担当し、国内外のアニメファンにも親しまれる彼ら。2018年には「アニメ縛り」と銘打ったライブツアーや、南米5カ国を回るワールドツアーも行った。そんな体験を経て、FLOWが導き出した新作のテーマが、タイトルにもなった「TRIBALYTHM」。コミックナタリーには初登場となる彼らに、アニメやゲームとの向き合い方について、そして新作に込めた思いについて語ってもらった。
取材・文 / はるのおと 撮影 / 斎藤大嗣
「DAYS」で平成アニソン大賞を受賞できたのがうれしい(GOT'S)
──今回はアニメとFLOWの関係についていろいろと話を聞かせてください。まずホットな話題として、3月に発表された平成アニソン大賞で2005年リリースの「DAYS」がアーティストソング賞を受賞しましたね。
GOT'S(B) うれしいね。賞とは無縁だから、俺ら。
KOHSHI(Vo) デビュー当時(※)以来じゃない?
※FLOWは2004年に「第18回 日本ゴールドディスク大賞」ニュー・アーティスト・オブ・ザ・イヤーの15組に選ばれた。
TAKE(G) いや、パリの「Japan Expo」で(最優秀J-MUSICアルバム賞を)受賞した「MICROCOSM」以来かな。
──ちなみに「DAYS」を受賞したと知ったときに「あれ? ほかの曲じゃないの?」と思いませんでした?
TAKE 少しTwitterでエゴサしたら、「『GO!!!』じゃないの?」と言っている人は多かった(笑)。
GOT'S それもわかるけど、「DAYS」で受賞できたというのがうれしいよね。けっこう冒険した曲だったから、それが14年経ってまた評価してもらえて。
KOHSHI 勢いだけで押さない曲に挑戦してね。
TAKE 「DAYS」はデビュー当時の西海岸パンクやミクスチャーといった軸から、バンドとしての新しいサウンドを模索していた時期に、「交響詩篇エウレカセブン」と出会ったことで世に出すことができた曲で。そこでのちの「COLORS」や「ブレイブルー」にも通じる、自分たちなりの4つ打ちロックという新しい武器を手に入れられたので、バンドとしても非常に大事な曲でした。
──2004年に「GO!!!」で初めてアニメとタイアップし、2005年には「DAYS」があって。FLOWはその頃からずっとアニソンの最前線で活動されています。そうしたアーティストって、FLOWのほかは西川貴教さんかUVERworldくらいじゃないですか?
GOT'S 3つ揃って“チームガンダム”みたいなね。
TAKE いやいや、我々は「ガンダム」の曲やってないから(笑)。でもロボットアニメだと「エウレカ」や「コードギアス」があるから、そういう意味ではビッグ3ですよ。
IWASAKI(Dr) 大きく出たな(笑)。
TAKE でもアニメの主題歌を数回担当されて、その後はご縁がないバンドもけっこういますよね。自分たちはきちんとアニメ作品と向き合って楽曲を形にしてきたからこそ、続けさせてもらえているのかなと。アニソンを作るときは、FLOWとアニメ制作者、クリエイター同士のコラボだと思っていますから。
──では、ここまでアニメやゲームとコラボを続けてきた中で、「DAYS」以外にも印象的な曲や出来事はありますか?
GOT'S 俺は2017年に出したミニアルバム「Fighting Dreamers」ですね。「GO!!!」の15周年版が入ってるんですが、今までアニメを通してお世話になった声優さん11人に参加してもらったんですよ。「GO!!!」は「NARUTO-ナルト-」の曲ですけど、それ以外にもいろんなアニメの声優さんが気持ちよく参加してくださって。いいものになったし、ファンの人たちにも喜んでもらえました。
──まさにFLOWがアニソンを作り続けてきたからこその企画でした。ほかの皆さんはどうですか?
KOHSHI 俺は声優さんとのコラボレーションかな。「GO!!!」の15周年版もそうだし、GRANRODEOや水樹奈々さんとはライブもご一緒させてもらえて。アニソンをやっていなかったら体験できなかったことだろうし、いちボーカリストとしてすごく刺激を受けました。
──具体的にはどういった刺激を?
KOHSHI 歌唱力はもちろんだし、GRANRODEOのKISHOWさんとか、声優で歌がうまくて芝居もできて……冗談じゃないですよ(笑)。
KEIGO(Vo) しゃべりもできてね。
KOHSHI そう。たまに一緒にカラオケに行くんですけど、KISHOWさんは酔っても歌がブレない。俺は酔うとベロベロになるから、最近「KOHSHIちゃんは酔うと駄目だよね」ってよく言われて(笑)。そういう、声を仕事にしてる人たちの強さは見習いたいですね。
海外では「Sign」がずば抜けた人気(KEIGO)
──KISHOWさん以外に、これまでアニソン界隈で出会った中で印象的な方はいますか?
GOT'S 影山ヒロノブさんかな。映画「ドラゴンボールZ 神と神」の主題歌として「CHA-LA HEAD-CHA-LA」をカバーさせてもらったんですけど、それまで全然面識がなかったから初めて会うときにみんな緊張してた。
TAKE そのカバーのお話をいただいたときに、本当は断りたかったんですよ。
IWASAKI 1回断ったよね(笑)。
TAKE 「無理」「俺は影山さんの声で聴きたい」って言ってね。「ドラゴンボール」ファンだったら、17年ぶりの劇場版でFLOWのカバーバージョンが流れたら「なんでだよ」って思うでしょう。
KEIGO こちとら、ただの「ドラゴンボール」ファンだから(笑)。
TAKE でもすごくリスペクトを込めてカバーをさせていただいて、そのおかげか影山さんとも縁ができて。
GOT'S そのあとも国内だけじゃなく海外で一緒になったり、俺らの演奏で影山さんに歌ってもらったりとかして。
TAKE そんなコラボ、小学生の自分に伝えたら卒倒するよ。
GOT'S 本当にいい人だし、年齢も上の方なのにパワフルな声やパフォーマンスは変わらない。影山さんや(影山が所属する)JAM Projectのライブは何回観ても圧倒されるよ。
TAKE 俺らも全員40を超えたけど、年齢を言い訳に中途半端なことはできないね。
──影山さん、パフォーマンスもそうですが低姿勢なのもすごいですよね。
IWASAKI 本当にそう。頭が下がります。
KEIGO 俺たちが集合時間の前に行っても、JAM Projectのメンバーは絶対いるもん。
TAKE 10分前には全員いるからね。こっちは15分前に行かなきゃいけない(笑)。
──話を戻して、残るお三方の印象的な出来事を教えてください。
IWASAKI アメコミや「スパイダーマン」が好きな人間としては、「HEROMAN」のエンディングテーマに「CALLING」が決まったときの衝撃はでかかったです。スタン・リーの作品に携われるとは夢にも思っていなかったので(※)。
※「HEROMAN」は2010年に放送された、スタン・リー原作による日米合作のTVアニメ作品。
KEIGO 僕は海外のライブの中でも、最初に海外のアニメのイベントに出たときのことは特に覚えています。アメリカのダラスで行われた「AnimeFest 2006」なんですけど、まさか外国の方々が俺たちのことを知っていて、一緒に歌ってくれるなんて考えてもいなかった。アニメとの出会いがなかったらたぶんなかったことだと思います。
──海外でライブをされた方は皆さん、向こうのファンの熱気に驚かれますよね。海外と日本では、人気の曲に違いはありますか?
KEIGO FLOWは、海外では「Sign」の人気がズバ抜けていますよ。Spotifyの再生回数も1位が「Sign」。
TAKE 2位の「GO!!!」がその半分くらいの再生回数で、そのあとに「COLORS」や「HERO ~希望の歌~」、「風ノ唄」が続きます。
KEIGO やっぱり海外は「NARUTO」人気がすごいよね。
TAKE 忍者、アニメ、日本。要素が完璧だもん。あと「Sign」をオープニングテーマとして使っていただいたのが、アニメの中でも大きな転機を迎えるタイミングだったんです。師匠の自来也が亡くなってナルトが独り立ちし、サスケは兄のイタチたちとの因縁が一旦収束するという。原作ファンにとって大事なエピソードだったからこそ、曲も人気があるんだろうね。
──アニメのどのエピソードで曲が使われたか、すらすらと出てくるのに驚きました。
TAKE 最初にアニメと関わらせてもらったのが「GO!!!」だったから、「NARUTO」はやっぱり印象的ですよ。「GO!!!」をリリースした当時はまだSNSとかもメジャーじゃなかったから、お客さんの反応はライブでしかわからなかったんです。でもリリースしたあとにライブ出演した学園祭で、木ノ葉隠れの里の額当てをしたお子さんが「GO!!!」で盛り上がってくれていて。それを見て「俺たちが『NARUTO』とコラボレーションして生み出したものが、ちゃんと届いているんだな」と実感した記憶があります。
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同じ作品とタイアップを続けるからこそ
できることがある(TAKE)
- FLOW「TRIBALYTHM」
- 2019年4月10日発売 / Ki/oon Music
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初回限定盤 [CD+Blu-ray]
7480円 / KSCL-3143~4 -
通常盤 [CD]
3240円 / KSCL-3145
- CD収録曲
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- TRIBALYTHM -Intro-
- 風ノ唄
- Break it down
- 火花
- liENDULUM
- サンダーボルト
- INNOSENSE
- 音色
- BELIEVER
- Smells Like 40 Sliirit
- BURN
- ONENESS
- アイオライト
- TRIBALYTHM -Outro-
- 初回限定盤Blu-ray収録内容
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- 15th Anniversary Final「FLOW LIVE BEST 2019 in日本武道館~神祭り~(全25曲/約150分)
- Documentary of FLOW LIVE BEST 2019 in 日本武道館~神祭り~
- Documentary of 15th Anniversary TOUR 2018 "Anime-Shibari" -Latin America Tour-
- TRIBALYTHM企画 2番勝負 ビストロFLOW ブラジル料理対決
- TRIBALYTHM企画 2番勝負 世界のききビール対決
- FLOW(フロウ)
- 1998年に兄弟であるKOHSHI(Vo)とTAKE(G)が結成したミクスチャーロックバンド。1999年にKEIGO(Vo)とGOT'S(B)、2000年にIWASAKI(Dr)が加入し、現在の編成となる。2003年7月にシングル「ブラスター」でメジャーデビュー。2005年6月にリリースしたシングル「DAYS」がTVアニメ「交響詩篇エウレカセブン」のオープニングテーマに起用されて大ヒットし、一躍人気を高める。2015年2月にはアニメ作品への提供曲を収録したベストアルバム「FLOW ANIME BEST 極」をリリース。2018年には「15th Anniversary TOUR 2018『アニメ縛り』」と題して全国と中南米でのツアーを行った。2019年1月に10年ぶり2度目の日本武道館公演を実施。4月10日に約3年ぶりのニューアルバム「TRIBALYTHM」をリリースし、5月からは全国7都市を回るツアー「FLOW LIVE TOUR 2019『TRIBALYTHM』」がスタートする。