コミックナタリー Power Push - あおやぎ孝夫「ここが噂のエル・パラシオ」

女子プロレスが舞台のエロコメでサンデーの限界に挑む!

サンデーマンガにおける“エロ描写”の基準とは?

──その、ハッキリと描かれてはいないけどあるように見える、っていうのはテクニックですよね。

いや……、多分ほんとのエロの世界では、最近は規制も厳しいですし、もっと研ぎ澄まされたテクニックが編み出されてるはずなんです。でも僕はあまりその方面は読んできてないので詳しくないんですよ。だから書き文字やフキダシ、あと湯気とかタオルみたいな小物で隠すという、かなりベタなやり方ですね。

巧妙に隠されるカットその1。 巧妙に隠されるカットその2。

──なるほど。股間に関しては、何らかのガイドラインとかあるんですか。

もちろんモロは描きませんし、多分形がわかっちゃマズいと思います。あと股間ということで言うと、僕は基本的に男の反応は描かない。

──男の反応というのは、いわゆる「モッコリ」のことですか。

ええ。僕自身が苦手なんですよ、マンガの中でのその表現が。小学校低学年ぐらいまでは笑って読めてたんですけど、いつからか急に全然ダメになって。作品自体は面白いなと思っても、そこだけが自分の中で消化できないんです。だから僕のマンガでは、意識して描かないようにしてます。鼻血とかのレベルで抑えて。古典的ですけど。

──でも鼻血ブーとか湯気で隠すとかのお約束感って、読んでいて心地良いですね。

僕は話作りにしても絵柄にしても、あまり斬新なものとかエッジの効いたものができないのはわかってるので、あえて徹底的にベタベタをやってますね。その上で、読んでちょっとニヤッてしてもらえればいいかなって。

初めて描くジャンルに戸惑いつつも、楽しそうに語るあおやぎ。

──女の私が見ても不愉快な感じがしないです。

うーん……。でもきっと売れるエロコメは、女性がちょっと不愉快になるくらいじゃないとダメなんじゃないですかねえ。

──どのくらいの不謹慎さだと売れるんでしょうか。

それがわかったら僕がやってます(笑)。でもそういうマンガ描いてる人ってみんな女体とかうまいじゃないですか。僕はまだそこまでの絵が描けてるとは思ってないので。

──最近は少年誌でもエロの表現はエスカレートしてきてますよね。

個人的には、過激になり過ぎると笑えないというか、楽しめないんじゃないかなという思いがあります。マンガの楽しみがエロシーンだけに向かっちゃうっていうのも、なんか寂しいですし。あくまでギャグの一環としてのエロに止めておきたい。あの、こういうトーク大丈夫ですか?

──大丈夫です。お気になさらず。

あの、よく女の子がミルクとかリンスをかぶって、“白い液体”をぶっかけられたように見せる表現とかあるじゃないですか。発売中のゲッサン(2010年2月号)に載っている第9話は銭湯の話なんですが、ネームを切るときにふとそれが頭をよぎって、それっぽいネタを考えたりしてたんですよ。お風呂シーン描くなら、そういうのもやらなきゃいけないかなって。

──「やらなきゃ」っていうのも、すごい義務感ですね(笑)。

義務というか、お約束感を追求したいっていうか。でも、まだ自分の中でエロ描写をどこまで描いていくのか、どこまでアリにするのかっていうのが定まらなくて、結局やめちゃったんです。

──あおやぎ先生のエロの基準は少年誌にちょうどいいんじゃないですか?

うーん……PTA向けなのかなあ(笑)。たぶん最近の子供たちはもっと過激なのを求めてると思うんですよね。でも過激を追求してっちゃうと際限なくなるじゃないですか。その競争に身を置くのはちょっと怖いです。まあそのギリギリのレースで勝ちに行かないといけないのかもしれませんけど。

──ちなみにエッチなシーンで気に入ってるところありますか?

その最新第9話で最後のページの桜花は気に入ってますね。

あおやぎが気に入っている第9話のラストシーン。

──これは……いろいろなアイテムで巧妙に隠されてますね(笑)。

いえ、その大ゴマの次の桜花のお尻のコマです(笑)。この最終ページは時間がなくてギリギリのスケジュールで描いてたんですけど、このお尻だけは丁寧に描きました。

あおやぎ孝夫『ここが噂のエル・パラシオ』1巻 / 2010年1月12日発売/460円(税込) / 小学館・ゲッサン少年サンデーコミックス / ISBN: 978-4091220905

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あらすじ

交通事故にあった“オレ”が目を覚ますと、そこは須弥仙桜花ひきいる謎のプロレス団体「エル・パラシオ」の道場だった! 記憶を失ったオレは、流されるままに5人の猛獣……もとい、美女たちと共に暮らすことになってしまい……。オトコ1人、オンナ5人の新型ラブコメディのゴングが鳴る!

あおやぎ孝夫(あおやぎたかお)

プロフィール写真

12月13日生まれ。東京都出身。「フリーダム!」で第43回小学館新人コミック大賞入選。「ジョカトーレ」で連載デビュー。2002年から2004年まで、週刊少年サンデー(小学館)にて「ふぁいとの暁」を連載。全7巻が少年サンデーコミックスより発売。2009年5月、ゲッサン創刊号(小学館)にて「ここが噂のエル・パラシオ」の連載をスタートした。