コミックナタリー Power Push - あおやぎ孝夫「ここが噂のエル・パラシオ」

女子プロレスが舞台のエロコメでサンデーの限界に挑む!

「ここが噂のエル・パラシオ」は、交通事故により記憶をなくした主人公・忠輔が女子プロレス団体「エル・パラシオ」に拾われ居候となり、レフェリーとして開発されていく女難コメディ。作者・あおやぎ孝夫にとって久々の本格連載は、スポーツマンガ家としてのイメージを一新するに十分な意欲作だ。

しかもゲッサン創刊号に掲載された第1話では、素っ裸の女の子がドロップキックを炸裂させるシーンがきわどすぎると、本筋とは一見関係ないところで(?)大いに話題になってしまった。“さわやか”が売りだった作者が、なぜ……。本作を描くに至った経緯から現在のサンデーマンガにおける「エロの限界」まで、新境地に挑むあおやぎにその真意を聞いた。

取材・文/増田桃子 編集・撮影/唐木元

Twitterでつぶやく このエントリーを含むはてなブックマーク この記事をクリップ!

ネットで「祭り」になった第1話のあのシーン

──「ここが噂のエル・パラシオ」は、ご自身初のラブコメ、しかもハーレムものですね。

ずっと描きたいと考えていたジャンルでした。これまでは男ばかりの真面目なスポーツマンガを描いてきて、あまり女の子を出してこなかったので、ちょっと前の「ふぁいとの暁」なんかを読んでくださっていた方はビックリしたのではと思うんですけど。ずっと描いてみたかったんですよ、女の子(笑)。

──女の子を描くにしてもいろんなジャンルがあると思うのですが、エロコメにしたのには理由が?

最初はただ単に女子プロレスのマンガが描きたいな、と。女子プロってことは当然女の子がいっぱい出てくるし、コスチュームもいろいろあるし、絡みもある。となるとサービス的には当然脱がせるわなっていう(笑)。女性からしたら失礼な話かもしれないですけど。

──そしていきなり第1話であのシーン(画像参照)。ネット上では「祭り」と言ってもいいほどの話題になりました。

あれはですねー、正直自分の中ではまったく意識してなかったんです。ギャグの一環というか、単純に素っ裸でドロップキック放ったら、主人公には丸見えで面白いかなくらいの思い付きで。そしたら創刊号が出た直後に知人から連絡が来たんですよ、「ネットですごい書かれてるよ」って。うわ! 何だろう、と思って見てみたら「ここかー」と(笑)。

ゲッサン創刊号に掲載された第1話の衝撃カット。

──創刊号でもかなり目立った話題のひとつでした(笑)。

焦りましたよ。「これはもしかしてマズいことになってるんじゃないか」と。悪いほうに考えるのは得意なので、担当さんが上の人に叱られたり、もしくはゲッサンに参加された大御所の作家さんを怒らせちゃったりしてないか、とか。でも編集部的には特に問題にならなかったようです。

──騒ぎになっていたのはネット上だけだったんですね。

担当さんに連絡したら「え、何が?」みたいな反応だったのでホッとしました。

──掲載されたカットはモザイクの上に「!?」という文字がのせられていますが、元の絵はどれくらい描かれているんですか?

いや、何も描いてないんですよ。描いてあるっぽくモザイクトーンが貼ってあるだけで。

──そのモザイクがさらに「!?」で隠されることにより、何かよからぬ連想をさせてしまったという。

担当さんには「モザイクトーンの上にビックリマークを入れてください」ってお願いしただけなので、実際どんな風に(文字を)のせてくるのかは、僕はわからない。この絶妙な隠し方は担当さんの手腕です(笑)。わざわざここだけ極太のゴシック体だし(笑)。

──ほんとは何も描かれていないのに、トーンと写植の妙によって、何か凄いものが描かれているような気になってしまったんですね。そのあたり「どこまで描いていい」という基準はあるんでしょうか。エロ描写というか。

基本的に乳首は止められています。例えば第1話のお風呂シーンもバストトップは描いてないです。ただ隠している湯気の形によって、まあそれらしきものが見えるかな? くらいの感じで。

こちらが掲載時のバストショット。湯気とタオルで巧妙に隠されている。 一方こちらは、今回のインタビューのためわざわざ描いていただいた、いわば“NG”カットだ。

あおやぎ孝夫『ここが噂のエル・パラシオ』1巻 / 2010年1月12日発売/460円(税込) / 小学館・ゲッサン少年サンデーコミックス / ISBN: 978-4091220905

  • あおやぎ孝夫『ここが噂のエル・パラシオ』1巻
  • Amazon.co.jp
あらすじ

交通事故にあった“オレ”が目を覚ますと、そこは須弥仙桜花ひきいる謎のプロレス団体「エル・パラシオ」の道場だった! 記憶を失ったオレは、流されるままに5人の猛獣……もとい、美女たちと共に暮らすことになってしまい……。オトコ1人、オンナ5人の新型ラブコメディのゴングが鳴る!

あおやぎ孝夫(あおやぎたかお)

プロフィール写真

12月13日生まれ。東京都出身。「フリーダム!」で第43回小学館新人コミック大賞入選。「ジョカトーレ」で連載デビュー。2002年から2004年まで、週刊少年サンデー(小学館)にて「ふぁいとの暁」を連載。全7巻が少年サンデーコミックスより発売。2009年5月、ゲッサン創刊号(小学館)にて「ここが噂のエル・パラシオ」の連載をスタートした。