自分の作品に出てくると話が動きやすくなるキャラは……
──今回は男女3組、6人のキャラクターがいますが、描きやすかったキャラ、難しかったキャラはいますか?
僕はメインのキャラより、脇のキャラのほうが動かしやすいんです。主人公たち……「ROAD TO YOU」で言うとリョウタとユキはストーリーラインを作っているというか、物語に責任を持たないといけない。ちょっとした言動が物語を変えてしまう可能性があるので、悪い言い方をすれば動かすのを恐れてしまう。でも脇の人は責任が軽いですから。
──ではほかの2組のほうが描きやすかった。
監督さんはトシロウさんを大事にされている感じだったので、監督さんに“あげた”というか、「監督に気に入っていただければ」という感じで描いたところがあるかもしれない。でも娘のマイちゃんは喜怒哀楽があって、自分の作品にもこういうキャラが出てくると話が動きやすいだろうなと感じましたね。彼女はアニメではテーブルに突っ伏して寝てましたけど、自分のマンガならソファーで無防備に寝てたりするかな?とか、いろいろイメージしながら描くのは楽しかったです。
──残るジンさんとケイさんはいかがですか。
女優のケイさんは、自分とは一番遠い存在なので描くのが難しかった(笑)。でも、根っこは田舎のかわいい女の子だろうなっていうつもりで描きました。そのマネージャーであるジンさんは、何を考えてるのかわからないキャラですよね。
──2人を演じる野島健児さんと浅野真澄さんは、2人の関係性について特設サイトでのコメントでそれぞれ「ただのタレントとマネージャーではないですよね」「なんかエロいですよね(笑)」と言っていました(笑)。
何かを感じ取ったんでしょうね(笑)。出番は少ないけどアクセントというか、印象に残る2人だと思います。ショートアニメなのにキャラを6人出すっていうのを最初に聞いたときは、けっこう難しいかなと思っていたんですけど、もちろん監督さんの腕ですが、結果として6人のバランスがとれてたのでしょうね。
作った人の一生懸命さが感覚で伝わるアニメ
──仮に3組のいずれかの前日譚やその後をマンガとして描くなら、どの2人がお話を描きやすいでしょうか。
そうですね……ケイさんとジンさんかな? リョウタくんとユキちゃんのカップルや、マイちゃんとトシロウさんの親子の話は、自分の中では自然に想像がつくんですよね。
──想像しやすすぎると、話としては面白くならない?
ケイさんとジンさんは年齢層も高いし、いろんなことがあってここにたどり着いたパートナーなんだろうなって。だから話を膨らませられると思います。
──ケイさんは高橋さんの作品にあまり出てこないタイプのヒロインです。
そうですね。ジンくんも妙にカッコいいですし、好きですね。でも彼は最後のほうでハンカチで口を押さえてるシーンがありますよね。あれは設定にもあったし車酔いしてるのかな。
──設定には「何でもそつなくこなすが、実は乗り物酔いしやすい」とありますね。ただ車酔いではなく、後半で一瞬だけ2人がボートに乗ってるシーンがあるので、船酔いしてるのかなと思いました。
なるほど、それは気づきませんでした。ジンさんはマネージャーとしてはケイさんに対して強い感じですよね。そこを監督のはからいで「こんな弱い面もあるぞ」というのを出すという狙いがあるのかもしれないですね。
──短い尺のなかでそこまで考えられているわけですね。最後に、「ROAD TO YOU」について「ここに注目してほしい」という部分を教えてください。
そうですね……どこを観てほしいというか、この作品は、関わっているすべての人が集中力を途切らせずに、全力を出し切って作られているという印象を受けました。アニメーションスタジオの方も、監督も、声優さんも、あと音楽を担当された須田景凪さんも。このアニメはSNSで拡散されたこともあって、前情報なしで急に観た人が多いんじゃないかと思うんですけど、「作ってる人が一生懸命やったものだ」ということが、情報としてじゃなく、映像を観た感覚で伝わってくるんですよ。
──事前に「こういう人たちががんばって作ってるんだよ」と聞かされなくても、完成したものを見れば作り手の情熱が伝わってくると。
ものを作る人間としては、「そういうことって伝わるんだな」「伝わるって信じていいんだな」という自信を持てましたね。関わった皆さんの中では、私は一番楽をしたなとは思ってるんですけど。
──「楽をした」とは?
私は最初にネームを描いただけで、皆さんががんばっている間も自分のマンガを描いていただけなので。
──「だけ」ってことはないでしょう(笑)。
それでもこんなクオリティの高い形になったので、「関わらせてもらって得したな」と思っています(笑)。
- ROAD TO YOU ~君へと続く道~
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- スタッフ
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- キャラクター原案:高橋しん
- 監督:川又浩
- キャラクターデザイン・作画監督:土屋堅一
- アニメーション制作:アンサー・スタジオ
- キャスト
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- リョウタ:神谷浩史
- ユキ:沢城みゆき
- トシロウ:谷昌樹
- マイ:津田美波
- ケイ:浅野真澄
- ジン:野島健児
- 高橋しん(タカハシシン)
- 1967年9月8日北海道生まれ。1990年「好きになるひと」で第11回スピリッツ賞激励賞を受賞、同年マンガ家デビュー。1993年、週刊ビッグコミックスピリッツ(小学館)にて「いいひと。」の連載を開始。お人好しの主人公が人々の幸せを願い努力する様子を描いた同作はヒットを記録、ドラマ化も果たした。2000年より同誌で連載を始めた「最終兵器彼女」では、世界の崩壊を背負った男女の壮大なラブストーリーを展開し、セカイ系の先駆けとして新たなファンを獲得。現在、同誌にて駅伝をテーマにした「かなたかける」を連載中。 またメロディ(白泉社)から少女マンガ「トムソーヤ」「あの商店街の、本屋の、小さな奥さんのお話。」が刊行されるなど、幅広いジャンルで活躍している。