「ドロ刑」福田秀×石田明(NON STYLE)対談|関係性を愛することで深まるコンビの魅力

「こういう人格でしか生きてられへん」ところまでキャラを作り込む

福田 石田さんはコントの中で、ちょっと歪んだ人格のキャラクターを演じたりもされるじゃないですか。ネタを書かれるとき、ああいうキャラクターはどうやって生み出しているんですか?

石田明

石田 僕はね、ちょっとずつ人格を“ずらして”いくんですよ。

福田 “ずらす”というのは?

石田 例えば身近な人を元にキャラクターを作ったとしたら、ただのモノマネじゃないですか。だからそこで作ったキャラクターをどんどん分析して深めていくんですよ。「こいつのバックボーンにはこういうものがあって、こういうことがあった、だからこういうことを言うんや」って。脚色というよりは誇張に近いかもしれませんね。最終的には「こいつはこういう人格でしか生きてられへんのや」っていうところまで持っていくんです。

福田 コントの中に登場するキャラクターというだけではなく、もうそのキャラクター自体がひとつの作品っていう感じなんですかね。

石田 そこまで持っていくと、舞台に立ったときウケてもスベっても関係なくなっちゃうんですよね。だって「こいつはこういうキャラクターだから仕方ないでしょ」ってなるんです。

福田 あるキャラクターについて、自分の中で考えながら消化していくっていうやり方は、作家もやっている方法なのでわかる気がします。

石田 舞台の脚本でも各キャラクターのバロメーターを細かく決めたりしますしね。「死にそうな2人のキャラクターを前にしたときに、こいつはどっちを助けるのか」とか。先生はどうやってキャラクターを作っているんですか?

「ドロ刑」第2話より。啄木の正の捜査を終えた斑目に対し、ハルトは「煙鴉の捜査を始めるんだよね」とうれしそうに問いかける。

福田 もともと自分の中に好きになるキャラクターの傾向があるので、それを当てはめていくという感覚が近いですかね。斑目なら「バカで真面目で熱血」、ハル(煙鴉)なら「複雑な過去がある」「人を若干小馬鹿にしている」とか。

石田 煙鴉でいうと、途中で「犬が好き」みたいな設定が少しずつ明らかになって、キャラが人間味を帯びていくのがいいですよね。キャラを作るのって楽しいですよね。

福田 楽しいけど大変ですね。最近でも「このキャラはこうは言わないだろう」というセリフを言わせそうになってしまったり。

石田 えっ、例えばどういうのですか?

福田 斑目が捜査後に「疲れた」って言っているシーンがあって、担当さんがそれを見て「『疲れた』は言わないと思います」って。「確かに!」と思ってそっと直しました(笑)。

石田 「疲れた」って言うのは相当なときであってほしいですね。

こじれた2人を描いていきたい

「ドロ刑」第3話より。バーで爆睡してしまった斑目で遊ぶハルト。

石田 先生が「ドロ刑」で今後描いてみたいシチュエーションとかキャラクターってどんなものですか?

福田 そうですね……。単純に警察が好きというのはあるので、警察署内の様子とかを描きたいなとは考えています。あとはまだ女性キャラクターが少ないので、いっぱい出せたらいいなと。

石田 確かに女性キャラクター少ないですよね。バーにいるオネエのママなんて、普通のマンガだったら美人を配置する場所でしょう(笑)。

福田 女性を描くこと自体は好きなんですけどね(笑)。

「ドロ刑」のカラーカット。

石田 あと斑目がどうして今の熱血漢な性格になったのかがわかったら面白そうですね。姉がいるっていう描写もありましたし、その姉が出てきたりして。

福田 実はまさに今そういうお話を描いているんです。

石田 おお、うれしい!

福田 1巻だとまだ斑目とハルが出会って間もないので、キャラクターや関係性の掘り下げもできていないんですけど、ここからそういう部分を深めていってもっとこじれていく様を描いていければと思います。

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福田秀(フクダシュウ)
埼玉県出身。ミラクルジャンプ2014年11月号(集英社)に、読み切り「JUMP OUT」が掲載されデビューを果たす。その後週刊ヤングジャンプ2016年1号(集英社)に「ハイヒール」が掲載され、同誌2018年5・6号より「ドロ刑」を連載している。
石田明(イシダアキラ)
石田明
1980年2月20日生まれ、大阪府出身。中学、高校の同級生である井上裕介と結成したNON STYLEではボケとネタ作りを担当しており、2000年にプロデビューを果たす。2006年に行われた第4回MBS漫才アワードで優勝し、以後多くの漫才コンクールで新人賞を獲得する。2008年には活動拠点を東京に移すとともに同年のM-1グランプリで優勝し、4489組の頂点に輝く。近年は漫才、テレビ出演のほか、舞台や映画の脚本、演出なども手がけている。7月14日から16日にかけて東京・有楽町のオルタナティブシアターにて、ザ・プラン9の久馬歩とともに脚本・演出を担当した舞台「モニタリンGood!~それが大事~」が上演に。さらに作・演出を手がけ、自身も出演する「ももたろう」を題材にしたヒーローショー「幼児・小学生・戦隊ファン向け 夏休み企画 ももたろう」が、東京・ルミネtheよしもとにて7、8月に公開される。いずれのチケットもチケットよしもと、チケットぴあ、ローソンチケットにて販売中。