コミックナタリー PowerPush - 「映画ドラえもん」35周年
とよ田みのる&石黒正数が語る「私とドラえもん」
伏線の張り方がテクニカル
──同業者の目線からはどうですか。
伏線回収は本当に美しいなあと思いますね。「のび太の大魔境」に出てくる、……先取り約束機でしたっけ。
──約束事をすると、その結果を先に実現できるっていう道具ですね。
しずかちゃんが先取り約束機で「後で必ず助けに来るから、今助けにきて」って約束するんですよね。で、冒険が終わった一番最後に先取り約束機の約束を果たさなきゃいけないって言って、もう1回助けに行く。あれもご都合主義にならないように、しずかちゃんが「お風呂に入りたいから」っていう理由で先取り約束機を持ってる。そのために先取り約束機なんてものをわざわざ出してるっていう(笑)。あの伏線の張り方は、もうテクいですよね。すごく自然に、伏線と気付かせないような作りになってる。はじめからもうこのラストの構想があるわけですよね。大長編は、藤子先生のテクニカルな部分も詰め込まれていると思います。
──とよ田先生はある程度長い物語を描くとき、全体の構成や伏線を最初に考えているんでしょうか。
「ラブロマ」とか「友達100人できるかな」を描いてた頃は、結構行き当たりばったりでしたね。第1話描いた時点で連載が決まっちゃったりしてたんで(笑)。でも最近の「タケヲちゃん物怪録」は結構考えてましたね。登場する屋敷の間取りとかも全部考えてましたし。でも藤子先生は本当に最初から、先まで見据えて描いてますよね。大長編の構成の確かさ、美しさを見ると。
夢だけじゃない、意外にドライなドラえもん
──藤子先生って、ずっと子供マンガを描いてきて、ご自身でも「お子さまランチ」なんておっしゃったりもしていて。あるとき大人向けのSF短編も描いたりしてましたけど、この大長編で子供向けとSFの藤子先生がひとつになる。
ええ、ええ。異色短編まではいかないけど、先生がいつもより伸び伸びしていらっしゃる感じ。SF要素も、ちゃんと科学的考証に基づいた、正しい知識で構成されている。「のび太と竜の騎士」でも、恐竜が絶滅した理由とかをきちんと教えてくれる。
──夢だけじゃないんですよね。
「ドラえもん」は子供向けであるみたいなことが言われてましたけどね、根底には結構ドライな、現実を見つめた視点もあると思うんですよ。
──ええ。
ドラえもんのクールなツッコミもいいんですよ。例えばのび太が「恐竜のたまご見つけた!」って喜んでると、「なんでこれが恐竜のたまごってわかるの?」って。「木の実かもしれないし、ナウマン象のうんこかもしれない」ってピシャリと、ドライなツッコミを入れるときがあるんです。
──ドラえもん、意外と冷めたところありますよね。
浮かれてるのび太を諌めるドラえもん、という構図は劇中に多々あるんですよ。それはなぜかっていうと、ふわふわした甘い夢だけじゃなくて、厳しい現実を乗り越えた先に得られる希望や夢をちゃんと描きたいって、藤子先生が思ってるからだと思うんですね。それは恐らく藤子先生が甘いものだけを与えて、読者がその後辛辣な社会に押しつぶされないように、そういう現実的な目線も持ったほうがいいよってことを、優しさとして入れてると思うんです。無責任に夢だけを与えないっていうところは、僕が藤子先生の一番好きなところだし、一番影響を受けたところかなあ。
──確かに、とよ田先生の作品とも通じるところは、そういうところかもしれません。
優しいだけじゃなくて、ドライな目線がところどころに入るのが、すごく好きなんです。藤子先生の生真面目さがちょっと垣間見える瞬間というか。
ドラえもんは、自然に生活の一部に溶け込んでいるもの
──とよ田先生はご自身で、藤子・F・不二雄チルドレンである、みたいな意識はお持ちですか?
恐れ多いですけど、いただいたものはたくさんあると思いますね。でもマンガ描いてて影響受けてない人なんているのかって話で(笑)。藤田和日郎先生とお話してたときに、藤田先生はその人の成り立ちが気になるお方だから、「どういう作品が好きなの?」っていう質問を必ずされるんですよ。それで僕が「藤子・F・不二雄が好きなんですよ」って言ったら、「それはみんな好きじゃん!」って。
──それくらい普遍性が高いものというか。
自然に生活の一部に溶け込んでるんですよね。よくよく考えたら、あなたたちの基盤に「ドラえもん」がいませんか?っていう。僕なんて栗まんじゅう食べてるだけで「ドラえもん」を思い出しますから。「あれ怖かったな」って(笑)。
──はははは(笑)。バイバインでどんどん栗まんじゅうを倍に増やしていく話ですね。
「数時間で地球が栗まんじゅうで埋まるぞ!」って。ちょっとしたトラウマですよ(笑)。
「映画ドラえもん のび太の宇宙英雄記(スペースヒーローズ)」は3月7日公開!
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Contents Index
映画ドラえもん×ビデオパス 「映画ドラえもん」全35作品を「ビデオパス」で独占配信中!
- 「映画ドラえもん のび太の宇宙英雄記(スペースヒーローズ)」2015年3月7日(土)全国ロードショー
- 「映画ドラえもん のび太の宇宙英雄記(スペースヒーローズ)」
ある日、テレビのヒーローに憧れたのび太は、みんなでヒーロー映画を作ろうと言い出す。ドラえもんは、ひみつ道具〈バーガー監督〉を出して、のび太たちが「銀河防衛隊」というヒーローになって宇宙の平和を守るという映画を撮影し始めた。ところがその時、地球に不時着していたポックル星人のアロンに、本物のヒーローと間違われて一緒に宇宙へ行くことになってしまう……。ポックル星は一見楽しそうな星に見えたが、実は宇宙海賊のある恐ろしい計画が進行していた。このままではポックル星が滅んでしまう。ドラえもんたち「銀河防衛隊」は、本物のヒーローになって、ポックル星を救うことができるのか!?
とよ田みのる(トヨダミノル)
1971年10月7日東京都大島生まれ。本名は豊田実(読み同じ)。2000年「レオニズ」で月刊アフタヌーン(講談社)の四季賞(夏)にて佳作を受賞。2002年に高校生同士の恋愛を描いた「ラブロマ」を同賞に投稿、四季大賞を受賞しデビューする。翌年、同作は連載化。そのほかの代表作に「FLIP-FLAP」「友達100人できるかな」「タケヲちゃん物怪録」など。3月6日に誕生した新たな青年マンガ誌・ヒバナ(小学館)にて子育てエッセイ「最近の赤さん」を連載開始する。そのほか新連載も鋭意準備中。
2015年3月13日更新
ドラえもん映画を劇場に観に行くのは本当久しぶりだったのですが大長編ドラえもんの醍醐味である冒険に満ちたお話で楽しんで参りました。
原作の異説クラブメンバーズバッジの回のオマージュやF先生の短編「なくな!ゆうれい」のキャラ造形を思わせるキャラクター(ゲストのアロン君もチンプイっぽい?)等オールドファンをニヤリとさせるような遊びも入れつつも、遠い異世界での冒険、異文化交流の中育まれる友情、いつもの日常よりもちょっぴり勇気を持った仲間たち、子供の頃に大好きだったドラえもんの映画そのままのノリにワクワクして童心に返って鑑賞しました。
子供の頃にドキドキしたあの世界が今の子供達にも愛されていることが嬉しいです。
ドラえもん映画いつか子供が大きくなったら一緒に行って一緒にワクワクしたいですね。