小倉唯さんから「正解は天城さんのやる演技なんじゃない」
──天城さんのアクビちゃんへの印象を教えてください。
私の中では「天真爛漫」「自由奔放」というイメージがありました。誰とでも仲良くなれて、みんなを翻弄してしまう、そんなキャラクターだと。
──その印象は演じてみて変化しましたか?
天真爛漫さは想像以上でしたね。アフレコで自分の思うテンションの高さで演技をしたら「もっとテンション高く」と2、3回言われて。でもハイテンションなだけではなく、人を心配するときには天真爛漫さの中にもちょっと感情の揺れがあったり。指導を受けて演技を変えていく中で、印象も変化していきました。
──公式サイトではパンドラと合わせて“凸凸(デコデコ)コンビ”なんて呼ばれています。
いつもは2人ともドジっ子なんですけど、パンドラはアクビちゃんといることで若干お姉さん感が出ているんですよね。自由なアクビちゃんをちょっとだけ抑える役のような。だから関係性的にも1歳くらい年の離れた姉妹みたいというか、アクビちゃんは誰といても最終的には妹キャラになってしまうんです。
──そんなアクビちゃんと自身で、似ている部分はあると思いますか?
「天城サリー」という名前はファンの皆さんが付けてくださった名前なんですけど、もともと私が天真爛漫に見えるから「天ちゃん」というあだ名で呼ばれていたというのが由来で。それがこうして天真爛漫なアクビちゃん役を演じることになったのは何かの縁ですし、やっぱり似ているところなのかなと思います。
──本作ではパンドラ役の小倉唯さんとのダブル主演ですよね。現場ではどんなお話をされましたか。
アフレコスタジオに入ったときに、私は“新人オブザ新人”だからと思ってブースの一番端っこの席に座っていたんです。そうしたら小倉さんが「天城さんこっちで一緒に座ろう」って、真ん中の席に誘導してくれました。もうそのときから、なんて優しい方なんだ!と。
──小倉さんの優しさ溢れるエピソードですね。
私は自分の演技がアクビちゃんに合っているのか、アフレコまでずっと悩んでいたんです。それを小倉さんに打ち明けたら「オーディションに受かったんだから、正解は天城さんのやる演技なんじゃない」というようなことを言っていただいて。その瞬間、肩の荷がスッと下りました。その後も学校のことや、プライベートの趣味のお話を聞いてくださったり、自分がリラックスできる雰囲気作りを気にかけてくださって、本当に頼れる先輩でした!
──アフレコ現場でも初めての体験が多かったのではないですか?
初めての体験ばかりでした。マイクワークも大変で、すごくおどおどしてしまって……。ディレクションをしっかり受けるのも初めてだったので、指導を受けてすぐにマイク前で実践するというのにも驚きました。最初は本当に新人感全開だったんですけど、現場でも皆さんに指導していただいて、後半のアフレコではスムーズに入れたかなと思います。それがちっちゃな成長ですね。本当に声優さんってすごい職業なんだなって、また現場でも改めて実感しました。
──アフレコに向けて何か準備はされましたか?
まず声優さんが何を食べているのかから調べました。
──……というと?
声優さんって消化音も雑音になってしまうんです。それで現場に入る前に何を食べているのか調べたら、こんにゃくゼリーとか、マシュマロとかそういう腹持ちのいいものを現場に持って行っているというのを知って。でも実際に現場に行ったら、小倉さんが普通におにぎりを食べていたんです。それで「声優さんってゼリーを食べるんじゃないんですか?」って聞いたら「普通の食べ物でいいんだよ」って言われて。またそこでひとつ学びがありました(笑)。
「三船剛はお父さんの世代からしたらヒーローだから!」
──パンドラとアクビのかわいさももちろんですが、三船剛(マッハGoGoGo)、ドロンジョ(ヤッターマン)のようにタツノコプロのアニメからおなじみのキャラクターが登場しているのも、この作品の魅力の1つですよね。世代だというご両親からは何かキャラクターのお話は聞きましたか?
お父さんは当時「マッハGoGoGo」が好きだったみたいで、「三船剛はお父さんの世代からしたらヒーローだから!」「男気溢れる、男も惚れるキャラなんだよ!」というのを延々と電話で聞かされました。「サリーの出る作品にまさか子供の頃ずっと見ていたアニメの主人公が出るなんて、もう感動だよー!」っていうのを本当にずっと(笑)。今回のアニメでは剛さんがどういうキャラクターとして登場するのかすごく気になっているみたいで、そういう普段交わることのないキャラクターたちの掛け合いも楽しみにしてもらいたいですね。
──では天城さんのお気に入りのキャラクターは誰ですか?
私はドロンジョがお気に入りです。ドロンジョって悪役のイメージが強いじゃないですか。でもこの作品の彼女は私の知っている悪役ドロンジョとは違っていて。パンドラとアクビと一緒にいるときはいつもの女王様というよりは、2人のお姉さんみたいな感じなんです。そういう違った一面が見れるのって、もとからそのキャラクターが好きだった人にとってもすごくうれしいですよね。
──それこそ天城さんのご両親のように、当時アニメを見ていた世代の人も楽しめますしね。それにキャラクターの性格だけでなくデザインも特徴を残しつつ大幅に変わっています。
とにかくキャラクターのデザインがかわいいんです。パンドラとアクビは前編と後編で衣装が変わるんですけど、何を着ても似合いますし。私は特に後編の雪山でのアクビちゃんの衣装が好きなんです。イヌイットみたいな衣装から顔だけをポンっと出していて。2人のキャラクターのかわいさが際立つ衣装のデザインだなって見るたびに思います。
──そんなかわいい2人が繰り広げる悪役とのバトルにも力が入っていますよね。
前編は西部劇がモチーフなので激しい銃撃戦もありますし、「モンスターストライク」らしい戦い方もしていて。そのコラボレーションの面白さは見てもらえばきっとわかると思います。後編だとPVにも少し映っているのですが、あの懐かしのロボットも登場していたり。私も初めて戦闘シーンを演じたんですが、楽しく収録することができました! あとは、江原正士さんの演じているナゾの怪獣がアフレコ中にも笑っちゃいそうになるくらい面白くて(笑)。そこにもぜひ注目してもらいたいです。
親友やお父さんがアメリカから来てくれるんです!
──天城さんは劇場アニメ作品への出演を目標にしていたということをTwitterで拝見しました。
2年ほど前に22/7での活動目標を書く機会があって、そこで立てた目標なんです。このオーディションを受けたときには劇場アニメだと知らなくて、思いがけず目標が叶ってしまいました……!
──しかもそれが主演ですからね。目標が1つ叶った今、新たな目標はありますか?
新しい目標ではないのですが、私が声優になりたいと思うきっかけのひとつになった、アメリカで開催されている「Anime Expo」に出演したいというのはあります。それに今は、天真爛漫なキャラクターを演じることが多いので、知的なキャラクターや、それこそドロンジョさんみたいに少し大人な女性のキャラクターを演じることにも挑戦してみたいです。
──では最後に、これから映画を観る方にメッセージをお願いします。
周りの方々がすごい人ばかりで緊張したんですが、がんばって平成最後のアクビちゃんを演じさせていただきました。パンドラとアクビの冒険物語ではあるんですけど、普段そういう映画を観ないような女性の方にも、2人のかわいさで親しみやすい作品になっていると思います。それに剛さんやドロンジョ、アクビちゃんと親世代にも馴染みのあるキャラクターもたくさんいるので、老若男女みんなに観てほしいです。
──では天城さんもやっぱりご両親と?
お父さんが映画を観にアメリカから来てくれるんです! 私が日本に行くときに背中を押してくれたアメリカに住んでいる親友と、そのお姉ちゃんも、学校や仕事を休んで行くよと言ってくれていて。今、日本にいるお母さんとおばあちゃんも一緒にみんなで観に行こうと思います!