すごく頭を使いながら向き合った「ISLAND」
──今夏はほかに、放送中のテレビアニメ「ISLAND」でもメインキャラクターの1人である三千界切那を演じていらっしゃいます。
「ISLAND」は詳しく言うとネタバレになってしまうんですけど……芝居の微妙なさじ加減がすっごく難しいんですよ! それを十何話と収録しているので。謎が明かされてない前半戦は特にキツかったですね。
──ご自身のブログでも「正直、めちゃくちゃ頭使って、原作を理解しようと調べて、スタッフの皆さんを質問責めにして、頭も気持ちもパンクするんじゃないかって思いながら演じさせていただきました。無意識と有意識の判断がとにかく難しい作品でした」と語られていましたね。
そうなんです。無意識に言わなきゃいけないセリフ、有意識に言わなきゃいけないセリフの2つがあって、自分自身でもすごく頭を使いながら、スタッフとも相談して細かく芝居を付けていきました。どうしてそこまでしっかりやらないといけないかと言うと、作品の特性上、あまりBGMを付けたくないっていう意向が監督としてもあったみたいで。
──確かにほかのアニメに比べても静かな作品だなという印象がありました。
劇伴がめちゃめちゃ少なくて、ほとんど環境音の中でやっているんですよね。1つひとつのセリフを大事に届けたいからと、ミキサーの森田(祐一)くんがものすごく細かくセリフのノイズも取ってくれて。俺もリアルな演技をするようにしていたので、音量的にあえてボソボソっとしゃべるところも多かったんですけど、そこも際立つようにちゃんと細かく調整してくれていて。そういうところも、みんなでしっかりと作っていこうとしている作品ですね。あとはもう出ている演者の皆さんがうまい方ばかりなので。そういう意味でもすごく楽しい現場です。
──ストーリーは謎解きの部分も大きいので、まだ言えない話が多いですよね。
そうなんですよね。だから終わったあとに、みんなでいろいろ話せる場があるといいねっていう話はしているんです。「ISLAND」はゲームが原作という中で、どういうふうにアニメーションとして答えを出すかっていうのもみんなで試行錯誤して作っている作品で。どうしても入れられないエピソードもたくさん出てきてしまうんですけど、俺らとしてもどう演じたら不自然にならないかというのを大事にしながら、細かく道なりを作っていった感じでした。そういうところを、改めて皆さんの前で語り合える場があったらいいなって思っているんですよね。
理解すれば理解した分だけ、キャラクターに人間らしさが出てくる
──これまでお話いただいた2作品に関わらず、鈴木さんのお芝居を聞いていて感じることなんですが、単純にお芝居が上手いということ以外に、鈴木さんの演じるキャラクターの向こう側にいい意味で鈴木さんがいないというか、キャラクターがキャラクターとして生きている感覚を受けるんです。
ああ、それはうれしいです。
──それはこうやってお話を聞いていても思うことではあるんですが、1つひとつ真摯に作品やキャラクターと向き合っているからこそキャラクターが生きているように感じるのかなと。
俺は役を演じるうえで、なるべく気付けることには全部気付いた状態でフィルムに臨みたいという思いがあって。やっぱり人を1人作るのってすごく大変なことではあるんです。鈴木達央というフィルターを通して人間の個性を出していこうとするにも限界はあるんですけど、それでも1つひとつの要素をつなげていけば、人となりがどんどん変わっていく。表現は嘘をつかないので、自分が理解すれば理解した分だけ、必ず人間らしさが出てくるんですよね。そこはどんなキャラクターを演じるうえでもすごく大事にしているポイントではあります。あとは見習いたいと感じる先輩方に恵まれていたというのもありますね。そういった周りの皆さんに感化されているところはあると思います。
──例えばどういった方々でしょう?
最近だと、それこそ「Free!」シリーズで一緒の笹部コーチ(笹部吾朗)役の家中(宏)さん。お誘いを受けて、家中さんが出演されている朗読劇に行ったんですけど、家中さんがメインで出られていたお話がすごく面白くて。雰囲気の作り方や読み込み方はもちろん素晴らしいんですが、「こういう人だからこういうことを言う」っていう役の捉え方だったり、「こういう状況だからこういう音になる」っていう、ものの捉え方をすごく細かく表現されていて。家中さんの台本って、実は、どこがセリフなのかわからないくらい細かくメモが書き込まれているんですよ。
──へええ。そうなんですか。
家中さんはそういうことをしたうえで、例えば、何気ない笹部コーチのセリフを普通の言葉のように言ってくれるので。そういう姿を目にすると、「自分はどういうふうに気付いていくことができるのかな」って考えさせられます。普通のようにしゃべることはこんなに難しいんだなって改めて思いますし、その姿勢は自分自身も見習って大事にしていきたいと感じますね。
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