電撃大王30周年!「シノブ伝」古賀亮一、「ケメコ」いわさきまさかず、「とらドラ!」絶叫、「やが君」仲谷鳰が歴史と魅力を振り返る (2/2)

仲谷鳰が1カ月かけて執筆、30周年記念イラストの裏話

──ここまで話して、電撃大王って何か見えてきましたかね?

一同 うーん……。

古賀 というか、電撃大王の話をあんまりできていないんじゃない? 大丈夫?(笑)

──もう少しお話ししたら見えてくるでしょうか。仲谷さんが描かれた、30周年記念イラストの話もお聞きしたいです。描く作品をセレクトするのも大変だったと思うんですが……。

仲谷 そこはもう、編集さんにお任せです(笑)。

編集部 候補作はこちらでリストアップさせてもらって、そのうえで描きやすい・描きにくいとか、リストにないけどこのキャラを描きたいとか、仲谷さんとはそういう相談をしました。

仲谷 ほぼ女の子でしたね(笑)。バランス的に男の子も入れたいなと思って、ヒロインじゃなくて主人公を描いた作品もあるんですけど。描く前は、全部のキャラクターを自分の絵柄で描いたら見分けがつかなくなっちゃうのかなと心配してもいたんですが、描いてみたら意外とそうでもなかったので安心しました。やっぱり愛されるキャラクターは見た目のキャラが立ってるんだなと改めて思いました。

30周年記念号の表紙。

30周年記念号の表紙。

絶叫 本当にすごくいいイラスト。めっちゃかわいいし、キレイ。自分が描いてと言われたら……知恵熱出ちゃいそう(笑)。

仲谷 編集さんに「描いてもらえないか」と声をかけてもらったときは、「私でいいんですか?」と恐縮する気持ちもあったんですが、描いてほしいと言ってもらえるならやらせてもらおうと。で1カ月くらい描いていて、終わらないかと思いました(笑)。

絶叫 ですよね! これ何人いるんですか?

仲谷 25作品で、2人描いている作品もあるので……27人ですね。あと音速丸とか、自動販売機(ハッコン)とか(笑)。

いわさき ケメコがいないことについて、後で編集部とちょっと話し合わなきゃいけないな……(笑)。

一同 (笑)。

古賀 シノブをこのラインナップに入れてもらえてるのはありがたいですね。

──ほかの作品のキャラクターを描くことって、きっと普段あんまりないですよね。

いわさき 僕は今ガンダムのキャラクターを描いてますけど(笑)、それは別としても、昔「ケメコ」のときにほかのマンガのキャラクターを描かせてもらったことがあります。大変だったな……。

「ケメコデラックス!」5巻の口絵イラスト。

「ケメコデラックス!」5巻の口絵イラスト。

──描くのが大変だった、難しかったキャラクターはいますか?

仲谷 うーん、「GUNSLINGER GIRL」(のヘンリエッタ)かな……。けっこう絵柄を寄せないと似ないタイプで。逆に「月姫(真月譚 月姫)」のアルクェイドは描きやすかったです。たまに(「月姫」のキャラクターデザインをしている)武内崇さんに絵柄が似ていると言ってもらえることがあって、自分では意識したことがなかったんですが、今回描いてみたら描きやすく感じましたね。

いわさき 仲谷さんが「あずまんが大王」の中から榊さんを選んだ理由が知りたいな。

仲谷 それは完全に趣味です(笑)。ラフを作ったときにとりあえず榊さんを描いて、それがそのまま採用になりました。

いつの時代も、オタクの好きなものが詰まってる

──気になっていたんですが、そもそも電撃大王って少年誌なんでしょうか。

仲谷 少年向けなのか、青年向けなのか。全部にフリガナ振ってあるから、少年向けなのかなって思ってた。

編集部 新規の作家さんに説明するときは、中高生が1つのヤマで、もう1つ、社会人2・3年目ぐらいの方がユーザーとしては多いですとお伝えしますね。もちろん、以前から読んでくださっていて、雑誌と一緒に年齢を重ねられた読者さんもいらっしゃるので、40代50代の方も買ってくださってますが、やっぱり若い人に通じるマンガをちゃんと作っていかないと……という意識ではいます。

──なるほど。古賀さんといわさきさんは今、電撃大王で連載されているわけではないですが、最近も電撃大王ってチェックされていますか?

いわさき というか、自分の描いている雑誌って皆さん読みます?(笑) あんまり「ちゃんと読んでる」って作家さんに会わないんですよね。知り合いの先生の作品は「ああ、元気でやってるな」と思って読むんですけど……。

古賀 自分の作品にミスがないかはすごく見るけどね。

絶叫 私は絵柄をチェックしますね、定期的に。

いわさき あっ、えらい。

仲谷 新連載とかは読んでますけど、毎号隅から隅まではなかなか……。

──今、電撃大王は50作品以上載ってますもんね。

いわさき 雑誌もすごく厚いもん。昔は4cmくらいだったんじゃないかな。だから持ち運びもしやすかったし、買って学校に持っていって、みんなで読んでというのもしやすかった。

仲谷 最近見本誌が届くとき、いつも封筒が破れてるんですよ(笑)。

絶叫 郵便局の方も「ポストに入りませんでした」って持って帰っちゃうもんね。

いわさき 最近は異世界ものも多いけど、実を言うと、転生系とかなろう系の流行に全然ついていけていないんだよね。「リゼロ(Re:ゼロから始める異世界生活)」とか「無職転生(無職転生~異世界行ったら本気だす~)」とか、アニメを観ると面白いなと思うんだけど、1年に1本も観ればお腹がいっぱいで、毎シーズンはいいかなって感じちゃう。

絶叫 異世界ものは最近、第1話でどう転生しているかを確認して楽しんでます。トラックで轢かれているか、轢かれていないか(笑)。でもトラックで転生する作品はだいぶ少なくなったような……だいたい過労死とか。過労死は死の瞬間の描写をフワッとさせるしかないから、描くの大変そう。

電撃大王の代表的な異世界ものに、「野人転生」、「自動販売機に生まれ変わった俺は迷宮を彷徨う」など。なおこの2作品は、どちらも主人公の転生にトラックが絡んでいる。

電撃大王の代表的な異世界ものに、「野人転生」、「自動販売機に生まれ変わった俺は迷宮を彷徨う」など。なおこの2作品は、どちらも主人公の転生にトラックが絡んでいる。

いわさき 僕は最初、異世界ものって転生した後、現世に戻るためにがんばる話なのかと思っていたんだけど、見ているとみんな元の世界のことはどうでもよくて、新しい世界で生きていくほうに完全にシフトしているんだよね。全部仕切り直しみたいな。古い価値観なのかもしれないけど、どうして転生してしまったのかとか、僕はそういう謎のほうに興味を引かれちゃうんだよな。「JIN-仁-」みたいなイメージで読んじゃってたというか……。

絶叫 転生か転移かでも違うかも。

仲谷 元の世界で過労死するくらい働いていたりしたら、そりゃ帰りたくないよねってなっちゃいますもんね。転生ものっぽい雰囲気だけど、実は転生ものじゃないというファンタジー作品も増えたような気がします。

──流行によって、誌面を彩る作品のジャンルも変わっていきますよね。30周年を振り返るという意味で、電撃大王で変わらない部分と言うとどんなことが思いつくでしょう?

いわさき 時代の先端というか、流行に飛びつこうという姿勢は昔からありますよね。

絶叫 オタク最前線。これいい言葉じゃないですか。

──オタクという言葉のニュアンスも、ひと昔前と今では違ってきているとも思いますが、その時代のオタクが好きなものがちゃんと詰まっている。

古賀 確かに、そういう側面はあるんじゃないかな。

──今はオタクの好みも多様化していて、それゆえ掲載されている作品のジャンルも多岐にわたるのかもしれません。電撃大王のキャッチコピーってご存知ですか? 「すべてのコンテンツファンに贈る最強コミックマガジン!!」というものなんですが、今の話に通じるところがあるように思いました。

絶叫 “コンテンツファン”って広いですね。オタクを言い換えたワードなのかな。ゲームもラノベも、アニメもオリジナルも、全部コンテンツですもんね。

雑誌の“色”が見えにくい時代、電撃大王の色とは?

仲谷 最近はマンガを読むにしてもWebで読むことが増えて、作品がどの雑誌に載っているかを意識しなくなってきちゃったところがあるんですけど。

古賀 ああ、わかるわかる。

絶叫 昔はあったもんね、雑誌の色というか、イメージみたいなものが強くて。

いわさき とくに少年ガンガン(現スクウェア・エニックス)とか、「ガンガンっぽい」と思うような作品が多かった。看板作品があって、その作品に引っ張られるようにほかの作品が集まっているような感じ。

古賀 雑誌を買う人も、看板作品目当てで買う人がやっぱり多かったもんね。お金を出して買っていると「値段分読まなきゃ」って気持ちにもなるし。

電撃大王の作品も、多くはKADOKAWAのWebマンガサイト・カドコミで、第1話などをチェックすることができる。

電撃大王の作品も、多くはKADOKAWAのWebマンガサイト・カドコミで、第1話などをチェックすることができる。

いわさき 最近だと、僕「葬送のフリーレン」がサンデーだって知らなくって。

絶叫 それ、私もびっくりした!

古賀 サンデー系にしても、月刊に載ってそうな雰囲気だから、「これを週刊少年サンデーで!?」って自分も思った。高橋留美子作品とか「名探偵コナン」とかと一緒に載っているところが、いまだに想像つかない(笑)。

仲谷 Webで読むと自分の好きなものばっかり読んじゃうんですよね。雑誌だとそうじゃない作品も目に入ってくるから、それはいいところですよね。

いわさき ついでにほかの作品も読める楽しさ。

仲谷 ついででいいから読んでくれ!って思ってます(笑)。

──雑誌の“色”という話で言うと、電撃大王はあまりそういう傾向はないんでしょうか。たとえば「よつばと!」が人気だからといって、「よつばと!」みたいなマンガがたくさん載っているわけではないのかなって。

いわさき それはあえてなのか、本当はそうあってほしいと編集部は思っているのか……。

編集部 (笑)。ただコミティアなどで持ち込みをしにきてくださる作家さんとかは、やっぱり電撃大王の人気作品を意識してくださっている方が多いですね。それこそ「やがて君になる」が連載していた頃は、「百合作品を載せてくれるんですよね」っていらっしゃる方が増えました。ベテランの作家さんでも、「『あずまんが大王』が好きだったので、縁を感じます」みたいにおっしゃってくださることも。そういう意味では、歴史に支えられていると感じることはよくありますね。

2003年に連載がスタートした「よつばと!」は、電撃大王の現行ラインナップの中では「苺ましまろ」に次いで連載期間が長い作品。

2003年に連載がスタートした「よつばと!」は、電撃大王の現行ラインナップの中では「苺ましまろ」に次いで連載期間が長い作品。

絶叫 「あずまんが大王」が終わった後、「よつばと!」の企画が通ったことがすごいと思うんですよね。電撃大王って、やっぱりかわいい女の子が中心だと思っていたというか……。かわいい女の子と言っても、よつばちゃんは「苺ましまろ」みたいな方向とは全然違うじゃないですか。「面白ければいい」となったんですかね? 当時の編集長って梅澤(淳)さんですか?

編集部 そうです。梅澤編集長は、“萌え”の幅が広かったんですよね(笑)。

かわいい女の子、カオス感、オタク最前線

──電撃大王には今後もこうあってほしい、という希望はありますか。「こういう部分は好きなので変わらないでいてほしい」と言い換えられるかもしれません。

絶叫 やっぱり萌えは残してほしいですね。そればっかりになっても、時代的に読者さんが増えないとも思うんですけど、かわいい女の子っていうのは電撃大王らしさの1つだと思うので。いろんなコンテンツの中に、今後も萌えがあるとうれしいな。

仲谷 私は次の連載のことを考えているのもあって、カオスな雑誌でいてくれると、何やっても許してもらえそうでありがたいなと(笑)。あとは、作家都合的なことですけど、紙の雑誌で続けてくれたほうが締切の危機感があるので助かる。

絶叫 (強く頷きながら)うんうん。

仲谷 (笑)。さっき言ったことと重なりますけど、いろんな作品がバランスよく載っていて、ふいに違った味の作品も楽しめると、紙のマンガ雑誌で育ってきた人間なので、うれしいなとも思います。

いわさき 内容は時代に合わせて変わっていけばいいからね。紙で生き残ってほしいから、そのための戦略とかをぜひがんばってください(笑)。

古賀 オタク最前線ってワードがありましたけど、それを今後も続けていってほしいですね。自分が描いていたときよりも、オタクコンテンツってものが細分化されてたり、一般化されてたりしますけど、そういうツボを目ざとく(笑)押さえて、歴史あるオタク雑誌という感じで、今後も続いてくれたら。

──かわいい女の子、なんでも許されそうなカオス感、オタク最前線。予期せず、今日のまとめみたいなお話になりました(笑)。異世界ものの流行についていけない、というような意見もありましたけど、そういう部分も含めて、“電撃大王を読めばオタクの最前線がわかる”とも言えるのかもしれません。

いわさき 流行についていけないときは、自分の感性のほうがズレてしまっているってことですからね。それに気づいたときの恐ろしさと言ったら……(笑)。でも、気づくのはとても大事なことですよ。

──それでは最後にひと言ずついただいて、この会を締めさせていただきたいと思います。

いわさき 他誌ですけど、「アラサーOLハマーン様」をよろしくね、って書いておいてください(笑)。「こんなのハマーン様じゃない」って言われているマンガです。

古賀 「ニニンがシノブ伝ぷらす」は完全に昔の続きなので、当時読んでいた方も入りやすいかと思います。時代に合わせた話を描いていますし、昔と見比べても面白いかなと。Webで無料で読めますので、ぜひ検索してみてください。

絶叫 「とらドラ!」は今もう、かなりクライマックスで……。終わるのがさみしくてさみしくて、毎月担当さんと打ち合わせのたびに「つらいね」と言い合ってます(笑)。連載の途中で身体を壊しちゃったこともあって、延ばし延ばしになっちゃっているんですけど、それでも雑誌で続けさせてくれたことに感謝しています。読者さんも大王さんも、ぜひ最後までよろしくお願いします。

仲谷 私は新連載を準備中です。「やがて君になる」とも「神さまがまちガえる」とも、またひと味違うものをお届けできたらとがんばっています。大王で描かせてもらえるということなので、お待ちいただけたらうれしいです。

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